2024年度
個人投資家向け説明会
主な質疑応答

日時 2024年12月12日(木)
午後6時30分~7時15分
登壇者 ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • (株)NTTドコモが10月から“ahamo”の利用可能データ量を30GBに引き上げたが、今後の影響をどのように捉えているか。

    (株)NTTドコモの動きを冷静に見ており、11月からは当社も“ワイモバイル”と“LINEMO”のプランを刷新した。足元の実績は大変良好であり、競争力を維持できていると考えている。刷新したプランに対するお客さまの反応も良く、春の需要期に向けてしっかり取り組んでいきたい。

  • (株)NTTドコモやKDDI(株)との差別化戦略を教えてほしい。

    当社は「LINE」、「Yahoo! JAPAN」、「PayPay」といった競争力のある国内ナンバーワンのサービスをグループ内に有しており、これらとの連携が大きな差別化要素となっている。「PayPay」と連携した料金プランの「ペイトク」がその一例であり、今後もこの強みを磨いていきたい。また、当社は過去にも端末の割賦販売や「ホワイトプラン」といった新しいサービスや料金プランで市場をリードしてきた経緯がある。引き続き他社に先駆けて新しい時代を切り開いていくマインドを持ち、差別化を図っていく。

  • PayPay(株)は上場するのか。

    上場は将来の選択肢として念頭に置いており、いつでも上場できるようにガバナンス構築などの準備を進めている。しかし、今は上場を急ぐよりも上場後も成長していける構造をしっかりと作ることが重要と考えている。PayPay(株)の事業は非常に順調に進んでいるが、現在提供しているサービスがゴールではなく、金融領域を中心にさらに大きなポテンシャルを持っていると考えている。

  • 2025年度の株主還元はどのように考えているのか。増配などは予定していないのか。

    2025年度の配当については、期初の取締役会で方針を確認する予定であり、まだ正式に決まったものはない。一方、当社としては、株主・投資家の皆さまから高水準の株主還元に対する強い期待があることはよく理解している。社長の宮川もそれを踏まえ、決算発表などでも期待に応えられるような答えを出していきたいとコメントしている。当社には非常に大きな成長の機会があるため、成長と還元のバランスをしっかり取りつつ、皆さまからの期待に応えられるよう取り組んでいきたい。

  • 10月1日に実施した株式分割は他の通信キャリアを意識したのか。

    日本電信電話(株)の株主数の増加に向けた取り組みやNISAへの対応は参考にさせていただいた。引き続き、当社らしさを出しながら株主数をさらに増やすとともに、NISAにおいても選んでいただけるポジションを築いていきたい。

  • 現在ソフトバンク(株)が最も注力している事業を教えてほしい。

    AI領域に注力している。全社を挙げてAIを活用し、将来のAIビジネスを築いていくことを大きなテーマとして掲げ、経営陣はかなりの時間を割いて取り組んでいる。既存事業ではファイナンス領域にポテンシャルがあり、大きく伸ばせると考えている。また、AIの導入による法人領域の拡大にも注力している。

  • ソフトバンク(株)が開発している生成AIと他社開発の生成AIの違いは。

    海外の企業が開発している生成AIと比較し、当社の生成AIは日本語に特化している。そのため、日本の商習慣や文化、言葉のニュアンス、ビジネスマナーなどを正確に踏まえ、応答できる点が優位性になると考えている。国内企業と比較すると、当社は圧倒的な規模の計算基盤を構築しており、計算能力とサービス力で国内トップに立てるようなポジションである。

  • ソフトバンク(株)が自社開発している生成AIはいつ頃どのように収益貢献していくのか。

    4,600億パラメーター規模の大規模言語モデルは既に完成し、研究開発用に公開している。追加学習を加速させ、2025年度には商用化できるように準備を進めているが、本格的な展開は2026年度以降になる見込み。2026年度以降の次期中期経営計画で生成AI関連の影響を織り込む予定であり、時期がきたら説明していきたい。今期の業績予想を上方修正し来期も順調という説明をした一方で、生成AI関連の取り組みに係る先行投資の費用は増加している。これを吸収しつつ、業績予想も達成させていくことが当面の課題と認識している。

  • AIデータセンターへの電力供給が将来的な課題と言われているが、その対策は。

    当社はデータセンターの候補地を国内に複数持っているが、それぞれにおいて電力の確保や、その電力をどのように再生可能エネルギーで調達するかなどが常に俎上にのぼる。当社としては、AIデータセンターの構築と並行して電力の確保にも取り組んでいく必要があると考えている。最近ではAIデータセンターで使用する電力に関する政府との議論に参加する機会も増えており、当事者として積極的に課題解決を進めていきたいと考えている。

  • AIのマーケットリーダーを目指す上で投資資金はどのように確保しているか。キャッシュフローは問題ないか。

    財務としては特に重要なテーマと捉えている。まずは既存事業のキャッシュフローであるプライマリー・フリー・キャッシュ・フローをしっかり創出し、配当に充てていきたい。一方で、将来の成長に向けた先行投資は回収に時間がかかるため、社債型種類株式などの長期性の資金を調達し、充当していく。当社では、財務規律として純有利子負債を調整後EBITDA(償却費考慮前の営業利益)で割ったネットレバレッジ・レシオを重視し、これを2倍台半ばで維持することを目指している。現在は2.4倍だが、この水準を超えないように全体をコントロールしていく。現在意思決定済みの投資については、全て資金調達を完了している。

  • 社債型種類株式は投資家にとってどのようなメリットがあるのか。

    社債型種類株式は普通株式と社債の中間にあるような商品。発行から5年後以降に発行価額相当の現金で当社が買い戻す条項があり、社債のような特長を有する一方、株式として固定配当も享受できる。投資家にとっては両方の良いとこ取りのような商品となっているので、ぜひ投資の選択肢に加えていただきたい。

  • ソフトバンク(株)の事業上の課題と、その対応策は。

    既存事業が大変順調な一方、新しい領域へのチャレンジを続けている。この取り組みは収益化まで時間がかかるものもあれば、市場環境を含めて不確実性が高いものが多くある。このような未知の領域へのチャレンジが非常に大きな経営課題であると捉えている。本業にしっかり取り組むとともに、シナジーを創出し、リスクを吸収していきたい。具体的な取り組みについては、2026年5月発表予定の次期中期経営計画でお話しできるようにしていきたい。

  • LINEヤフー(株)において情報漏えいなどのセキュリティインシデントの発生が続いているが、親会社としてどのように対応するのか。

    LINEヤフー(株)は皆さまの日常生活をサポートする重要なサービスを提供しており、社会に対して非常に影響力があると考えている。そのため、セキュリティインシデントが生じてしまったのは大変残念に思っており、真剣に修復に努めたい。セキュリティガバナンスをしっかり構築する目的でLINEヤフー(株)内に設置した「グループCISO Board」に、当社のCISO(最高情報セキュリティ責任者)も参加し、問題解決や将来リスクの低減に共同で取り組んでいる。このような取り組みをさらに強化し、より実効性のあるセキュリティガバナンスを一緒に築いていきたい。

  • 海外での事業展開に関する考え方を教えてほしい。

    当社は「Beyond Carrier」という成長戦略を掲げているが、社内では「Beyond Japan」が常にテーマとして挙げられており、非常に重要だと考えている。日本は人口減少問題など多くの社会課題を抱える「課題先進国」であり、ここで培った知見や取り組みは海外でも役立つ場面があると考える。2024年3月にはアイルランドに本社を構えるCubic Telecom Ltd.の株式の51%を取得し、子会社化した。同社はコネクテッドカーなど向けにIoTプラットフォームをグローバル展開しており、今後は日本の自動車メーカーとの連携も活用しながら事業の拡大を目指す。引き続き、海外での事業機会を積極的に追求していく方針。