お知らせ 2023年

米テキサス大学オースティン校
ジョン・グッドイナフ教授の逝去に当たって

2023年6月30日
ソフトバンク株式会社

米テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授が、2023年6月25日に逝去されました。

ソフトバンクは、HAPS事業やドローンなどに向けた軽く容量の大きい次世代電池の開発を進めてきました。その成果として、2020年12月に重量エネルギー密度450Wh/kg、続いて2021年には重量エネルギー密度520Wh/kgを誇る世界トップクラスの次世代リチウム金属電池セルの開発に成功しています。

開発パートナーであるEnpower社が、グッドイナフ教授の研究グループとリチウム金属負極を用いた全固体電池用材料技術の共同研究を行っていたこともあり、グッドイナフ教授自らソフトバンクの次世代電池開発に多くの助言を頂きました。グッドイナフ教授の豊富な経験と専門知識は、ソフトバンクのプロジェクトに新たな可能性をもたらし、リチウム金属電池セルをはじめとする次世代電池研究を大きく前進させるものでした。

コロナ禍の2020年12月には、ソフトバンクとのオンライン会議にご参加いただいた他、2021年のソフトバンクの「質量エネルギー密度450Wh/kg級電池の実証および電池長寿命化の要素技術開発に成功」に関するプレスリリースには、グッドイナフ教授から次のようなコメントを寄せていただきました。

「Enpower GreentechとソフトバンクによるSDGs(持続可能な開発目標)に向けたバッテリーの先端技術、アプリケーション開発に関する素晴らしい成果をうれしく思います。私の研究チームが、基礎材料科学の観点からこの意義のある取り組みに貢献できることを光栄に思います。Enpower Greentechとソフトバンクの皆さまの成功を願っています」

グッドイナフ教授は、1980年に現在でもリチウムイオン二次電地の正極材料として用いられているコバルト酸リチウム(LiCoO₂)を発見しました。この材料は、ソニーが1991年に世界で初めてリチウムイオン二次電池を商品化した時から使われ続けている、非常に特性の優れた材料です。この素晴らしい発見によって、リチウムイオン二次電池が誕生し、スマートフォンやEVの普及に大きな貢献をもたらし、私たちの日常生活が変革され、未来への可能性が広がりました。その功績により、グッドイナフ教授は2019年にスタンリー・ウィッティンガム氏および吉野 彰氏とともにノーベル化学賞を受賞しています。

また、リチウムイオン二次電池の低コスト版として、EVやESS(Energy Storage System)などの用途で注目されているリン酸鉄リチウム(LiFePO₄)の材料の発見など、二次電池業界に多大なる貢献をされました。

従業員一同、グッドイナフ教授の功績に深く感謝し、謹んでご冥福をお祈りします。

グッドイナフ教授とのオンライン会議の模様(2020年12月実施)

左上:グッドイナフ教授、右上:ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一、左下:Enpower Greentech CEO サム・ダイ氏
左上:グッドイナフ教授、右上:ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一、左下:Enpower Greentech CEO サム・ダイ氏