プレスリリース 2022年

スマホとAIの活用による高齢者のフレイル予防に向けた
実証実験を開始

~日常データを基にフレイルリスクを自動で判定するアルゴリズムの開発を推進~

2022年3月9日
ソフトバンク株式会社
北里大学

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)と北里大学は、慶應義塾大学殿町先端研究教育連携スクエア(以下「慶應大学」)の協力の下、高齢者のフレイル※1予防に向けた取り組みとして、スマートフォン(スマホ)で取得したデータからフレイルリスクを判定できるアルゴリズムの開発に向けた実証実験を開始しました※2。なお、ソフトバンクと慶應大学は、2019年12月に「理想的なライフデザインの実現をサポートするAIサービスの社会実装に向けた包括連携協定」を締結しており、このたびの実証実験はその一環として、北里大学を交えた3者の共同研究として取り組んでいます。また、この研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)に採択されたプロジェクト「人々を軸にあらゆる情報をオープンに活用する基盤“PeOPLe”によるライフイノベーションの創出」(幹事機関:慶應大学)の枠組みで実施されます。

フレイルは、加齢により心身が老い衰えた状態ですが、日々の活動や定期的な運動による身体機能の維持などを行うことで予防できるとされています。一方で、高齢者がフレイルを認知する機会が少ないことや、フレイルを判定するデータが測定時点の限られた情報であること、予防や改善のための機会が限られていることなどから、フレイルが進行していても認知できず、改善に向けた対応が遅れたり、不可逆的な状況に陥ってしまったりしていることが危惧されています。また、医療分野でも患者層の高齢化により、さまざまな病気とフレイルを合併して発症する患者が極めて多く、フレイルが治療や回復に大きな影響を与えていることが研究で明らかになっていますが、フレイルの評価が日常臨床には十分浸透していないことや、フレイルの評価に十分な時間を割くことができないのが現状です。

そこで、ソフトバンク、北里大学および慶應大学は、フレイルに関連する因子を連続的にセンシングできる身近な手段として、スマホを活用したフレイルリスクの自動判定および改善傾向の可視化を実現することを目指して、実証実験を開始しました。実証実験は、入院患者や通院患者、地域住民を対象に、2021年12月に開始して約1年間実施する予定です。入院患者や通院患者、地域住民においてはフレイルの自覚に基づいた行動変容や、自治体や企業、専門家による効果的な早期介入、医療分野においては全身状態の改善や悪化のモニタリング、さまざまな治療を行う上でのリスクの層別化などにつなげるべく、研究を進めていきます。

実証実験では、歩行速度や歩行の安定性、身体活動量に加え、社会的なフレイルに関する情報などをスマホから自動的かつ連続的に取得し、AI(人工知能)を活用して、フレイルの有無やフレイルリスクのレベルを自動で判定できるアルゴリズムの開発を行います。アルゴリズムの開発では、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科の神谷 健太郎教授の研究チームが、医療分野における教師データとして、多くの医療情報や高精度の動作解析装置を併用し、わずかな状態の変化も検知できる仕組みを研究しています。このアルゴリズムについては、2022年度中の完成を目標に早期実用化を目指します。また、フレイル状態を可視化できるアプリの開発も行い、高齢者が自身の健康状態を認知できる取り組みも行います。

北里大学の神谷 健太郎教授の研究チームで培われたフレイル研究の医学的知見と、ソフトバンクのAI技術を活用することで、医学的エビデンスに裏付けられたアルゴリズムを開発するとともに、研究の対象を入院患者から通院患者、健常者まで順次拡大していくことで、さまざまなデータを取得して、アルゴリズムの精緻化を進めていきます。なお、アルゴリズムの社会実装に関する統括は、慶應大学の宮田 裕章教授の研究チームが行い、早期実用化を進めていきます。

ソフトバンク、北里大学および慶應大学は、フレイル予防によって健康寿命を延伸し、人々が心身ともに健康に生活できる社会を目指して、共同研究を推進していきます。

[注]
  1. ※1
    要介護状態と健康の間に位置して、身体や認知機能が低下した虚弱状態。
  2. ※2
    この研究で取り扱う個人情報や医療情報は北里大学が取り扱います。ソフトバンクは、個人情報を含まないデータからアルゴリズムを構築します。
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。