プレスリリース 2023年

耐量子計算機暗号アルゴリズムの実用性を確認

~ソフトバンクとSandboxAQとのパートナーシップを通して実証~

2023年2月28日
ソフトバンク株式会社
SandboxAQ

ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下「ソフトバンク」)は、米国SandboxAQ(所在地:米国カリフォルニア州パロアルト、CEO:Jack Hidary)とのパートナーシップを通して、PQC(Post Quantum Cryptography、耐量子計算機暗号)を早期に利用可能にする、古典暗号(楕円曲線暗号)とPQCとのハイブリッド方式の実証を完了し、既存のネットワークにも問題なく適用できることを確認しましたので、お知らせします。

量子コンピューターが登場し、公開鍵暗号アルゴリズムの脅威となることで、セキュリティー意識が高い組織は、PQCの導入を余儀なくされます。また、米国国立標準技術研究所(NIST)によってPQCは標準化される予定で、今後多くの行政などでも使用が義務付けられると想定されます。古典暗号ベースの暗号体系が、今後数年で量子コンピューターによって破綻に追い込まれる可能性はなく、当面は、安心して通信サービスを利用することができますが、インターネット上のデータから不正にパケットを盗み出して保管しておき、量子コンピューターの実用後に解読するSNDL(Store Now、Decrypt Later)という攻撃の脅威にさらされる可能性があり、PQCの早期導入が必要と考えられています。また、さらなる高度情報化社会の発展により、ネットワークにPQCを適用することが重要となります。

PQCは、量子コンピューターで解読することが困難で強固なアルゴリズムですが、実績がある古典暗号とのハイブリッド方式を採用することで、お客さまが安心かつ容易に導入していただけるようになります。このハイブリッド方式によって、これまで古典暗号によって担保されてきた安全性を失うことなく、量子コンピューターの攻撃に対しても安全性を確保することが可能になります。一方で、暗号化処理の複雑化によって、暗号・復号に要する時間、装置に対する処理負荷、通信に対するオーバーヘッド率を悪化させてしまう懸念がありました。

今回、汎用のスマートフォンとサーバーを利用してモデル化した実トラフィックを、古典暗号とPQCとのハイブリッド方式に適用し、暗号・復号の処理遅延、プロセッサーやメモリーの負荷や負荷率、接続率、通信に必要なデータ量などを評価した結果、ハイブリッド方式の性能が実用的であることが確認できました。

また、標準化候補のPQCアルゴリズム間で比較した結果、構造付き格子暗号と古典暗号との組み合わせが最少のオーバーヘッド率であり、最も優れた性能を発揮することが、ソフトバンクのネットワークを利用した実証で確認ができました。

ハイブリッド方式のイメージ

ハイブリッド方式のイメージ

両社のコメント

ソフトバンクの先端技術研究所 所長である湧川 隆次は、次のように述べています。

「ソフトバンクは、快適かつ安心安全なインフラサービスを提供し続けるために、ネットワーク技術のみならずセキュリティー技術の研究開発にも今後も注力していきます。そのため、量子ならびに耐量子技術の高い専門性を持つSandboxAQとのパートナーシップも最大限活用し、耐量子ネットワークを早期に提供できるよう推進を続けてまいります。特に、医療データや知的財産などの重要かつ保護期間が長い情報資産を扱うお客さまにおいては、耐量子ネットワークへのニーズが今後ますます高まっていくものと想定しています」

SandboxAQのCEOであるJack・D・Hidary(ジャック・ヒダリー)は、次のように述べています。

「世界で最も機密性が高い個人・法人・政府のデータを、量子コンピューターによる脅威から守るには、データへのアクセス・共有を可能にする国際通信ネットワークを最初に保護する必要があります。さもなければ、世界のサイバーセキュリティーにおける重要な部分を無防備で脆弱なままにしておくことになってしまいます。ソフトバンクと緊密に協力して、量子コンピューターの攻撃に対する耐性と暗号の俊敏性(システムに大きな変更を加えることなく、代替可能な暗号方式に切り替えができるような設計概念)を備えたネットワークを実現し、新たな利益源開拓の手助けができることを光栄に思います。ソフトバンクが、これらの重要なサイバーセキュリティー技術を実装して、革新的なソリューションを作り顧客を保護していくことをサポートできるのを楽しみにしています」

詳細については、各社のサイト、SandboxAQ()・ソフトバンク()からご覧ください。

今回の検証結果を含めて、ソフトバンクの先端技術研究所のさまざまな取り組みを紹介するイベント「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」を、2023年3月22~23日の2日間にわたって開催します。イベントの詳細は「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」のウェブサイトをご覧ください。また、先端技術研究所が取り組むさまざまな技術領域の解説や、取り組み内容の説明などについては、リニューアルした先端技術研究所のウェブサイトをご覧ください。

SandboxAQについて

SandboxAQは、エンタープライズSaaS企業であり、世界で最も困難な問題に対処するために、AI(人工知能)と量子テクノロジーを組み合わせたソリューションを提供しています。同社のコアチームとインスピレーションは、Alphabet Inc.で形作られ、2022年に成長資本に支えられた独立企業として誕生しました。詳細はこちらをご覧ください。

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