プレスリリース 2023年

北海道大学水産科学研究院と美深町、ソフトバンクが
次世代のチョウザメ養殖のための産学官連携協定を締結

~IoTやAI、バイオロジーを活用した実践的な養殖チョウザメの優良系統の確立へ~

2023年3月29日
国立大学法人北海道大学大学院水産科学研究院
北海道美深町
ソフトバンク株式会社

国立大学法人北海道大学大学院水産科学研究院(研究院長:都木 靖彰、以下「北海道大学」)と北海道美深町(町長:山口 信夫、以下「美深町」)、ソフトバンク株式会社(代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下「ソフトバンク」)は、IoTやAI(人工知能)、バイオロジーを活用した実践的な養殖チョウザメの優良系統の確立を目的とした産学官連携協定を2023年3月28日に締結しました。

概要

養殖業にとって「良いチョウザメ」の定義は確立されておらず、キャビアの品質だけではなく、身のおいしさ、成長スピードなど、養殖されるチョウザメの種類や養殖環境などによっても「良いチョウザメ」の定義は異なります。チョウザメは、飼育開始からキャビアの出荷まで6年以上の飼育期間が必要で、未熟な卵が成長を始めてから一瞬でも環境汚染が発生すると、キャビアの品質に多大な影響を及ぼすとされており、品質を担保することがとても難しい魚種です。育成期間を可能な限り短くすることで、品質低下のリスクを減らすことが可能になります。この連携協定を通して、北海道大学のバイオロジー、ソフトバンクのIoTやAI技術を活用して、美深町が養殖の実践を行うことで、養殖チョウザメの優良な系統の確立を目指します。

プロジェクト開始に至った経緯

2014年12月に、北海道大学大学院水産科学研究院および水産学部と美深町が包括連携協定を締結し、町を挙げてチョウザメの養殖を行い、2020年にキャビアの販売が開始されました。また、2020年2月に北海道大学水産科学研究院とソフトバンクがチョウザメのスマート養殖共同研究プロジェクトを開始し、IoTやAIを用いたチョウザメの尾数カウントとトラッキングに成功しました。
今後、IoTやAIの技術をより広範囲で実用化するためには、キャビアの品質および生産量の向上が重要となります。そのため、キャビアを生産している美深町、チョウザメのバイオロジー研究を推進する北海道大学と最新技術を保有するソフトバンクの3者によるイノベーティブな取り組みが可能となりました。

内容・対象・意義

養殖で求められる優秀な個体と天然環境の優秀な個体は、必ずしも同じではないと仮定しています。その理由は、養殖ではたくさん食べて早く成長し、ほどよく脂がのった個体が優秀ですが、天然環境ではたくさん食べなくてはならない個体は餌の確保が難しい可能性があります。また、餌を食べるために長時間行動する個体は外敵から捕食される可能性が高くなり、生き残れないこともあります。トラウトサーモンのように、すでに養殖における優良系統が確立されている魚種もありますが、チョウザメは確立されていません。チョウザメ養殖の難しさとして、飼育期間が長いだけではなく、親魚となる大型個体の保有数が少ないことが挙げられます。そのため、同一種同士の交配が難しく、他種と交配をせざるを得ない状況です。逆に他種との交配がしやすく、交雑種を得やすいという利点もあります。
この連携協定によって、北海道大学のチョウザメの生物学的知見、美深町の高い飼育技術、ソフトバンクのIoTやAIが密接に連携することで、プロジェクトの推進を図ることが可能になります。今後、チョウザメの養殖における優良系統をつくることで、低価格で高品質なキャビアの生産を行うだけでなく、水産分野における新たなテクノロジーの確立を目指します。

役割

  • 北海道大学:筋骨格モデルの解剖学の見地からの調査、チョウザメの生物学の見地からの調査
  • 美深町:チョウザメの飼育
  • ソフトバンク:画像解析や機械学習による個体識別および行動分析、神経科学(Neuro Science)の見地から動きの生成、チョウザメのCGシミュレーションの作成

役割イメージ

役割イメージ

連携協定書調印式の写真

連携協定書調印式の写真
北海道美深町 町長 山口 信夫(左)、北海道大学大学院水産科学研究院 研究院長 都木 靖彰(中央)、ソフトバンク テクノロジーユニット コーポレートIT本部 本部長 北澤 勝也(右)
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。