プレスリリース 2023年
HL7 FHIR規格による健康・医療データの標準化と
データ流通を促進する新会社「HEMILLIONS」を設立
~安全・安心に健康・医療データを活用できる社会を構築し、
次世代の医療やヘルスケアの実現を目指す~
2023年4月20日
国立大学法人東京大学
ソフトバンク株式会社
株式会社ケーアイエス
国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:藤井 輝夫、以下「東京大学」)、ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下「ソフトバンク」)および株式会社ケーアイエス(本社:東京都中央区、代表取締役:小西 由貴範)などは、HL7®FHIR®※1規格(以下「FHIR」)を活用して健康・医療データを標準化し、データ流通を促進する新会社「株式会社HEMILLIONS」(へミリオンズ、以下「HEMILLIONS」)を2023年4月7日に設立しましたので、お知らせします。HEMILLIONSは、FHIRサーバーのソフトウエアである「FRUCtoS(フルクトース)」などのソリューションを開発・提供し、安全・安心に健康・医療データを活用できる社会の構築を目指します。
HEMILLIONSは、東京大学とソフトバンクとの産学協創事業であるBeyond AI 研究推進機構※2における取り組みからスタートし、技術研究組合(CIP)※3を経て株式会社化※4されました。Beyond AI 研究推進機構は、最先端研究とAI(人工知能)との融合によって新たな学術分野の創出を目指すとともに、研究成果の実社会における活用を加速し、教育研究の充実に必要な資源を大学に還元するエコシステムの構築を進めています。HEMILLIONSはBeyond AI 研究推進機構から事業化および株式会社化した第1号であり、また東京大学にとっては知の対価として、事業会社の普通株式を直接保有する初のケースとなります。Beyond AI 研究推進機構では、今後もエコシステムの構築を進めるべく、CIPの制度などを活用した事業化を進めて参ります。
1. 背景
日本の医療やヘルスケア分野でのデータ活用は、さまざまな要因により活用基盤の整備が遅れている状況です。医療データは法令に基づき厳格な管理下での取り扱いを必要とする個人情報である点に加えて、医療機関や電子カルテのベンダーごとにデータの形式や内容のコード化の記述方式が異なり、活用には個別にプログラムの開発が必要とされています。そのため技術障壁が高く、開発コストの高止まりや外部とのデータ連携の仕組みの煩雑さがあり、データ活用が十分に進んでいません。
一方、米国をはじめとする海外では、医療情報を交換するための新しい標準規格であるFHIRの普及が進み、各国が主体となってAPI※5や実装ガイドなどの整備・提供に取り組み、健康・医療分野でのデータの活用が進んでいます。
日本においても、FHIRを活用できる環境の整備と、データの標準コード化の普及を進めることで、電子カルテシステムとその他の情報システムとの間での相互運用性を高め、医療機関同士が患者データを共有しやすくすることにより、医療やヘルスケア分野におけるデータ活用が進むことが期待できます。
2. 事業概要
HEMILLIONSは、健康・医療データを安全で効率的に活用できるよう、FHIRに代表される標準的な情報基盤を社会に提供することを目指します。この情報基盤は、新しい技術を柔軟かつ低コストで実装することを可能とし、幅広い利用者の利便性を向上させます。今後、FHIRサーバー向けの国産ソフトウエア「FRUCtoS」を医療機関向けに提供し、FHIRに準拠した健康・医療データの安全・安心な流通に貢献します。「FRUCtoS」は、すでに大規模なテストにおいて、データを用いた性能検証や既存の医療情報システムとの接続検証を行い、その実用性が確認されています。
HEMILLIONSは「ITとAIを駆使した次世代の医療ヘルスケアを実現し、安全・安心に健康医療データの活用できる社会を構築することで、あらゆる人々の健やかな人生を支える」をビジョンに、患者や医療従事者が健康医療データを安全かつ効率的に利用でき、研究開発などの利活用にも対応できる情報基盤を開発し、医療の場や社会全体に導入していくことで、日本における医療費の削減と、医療・ヘルスケア産業全体のイノベーションを促進していきます。また、さまざまなサービスやソリューションを提供し、社会における医療ビッグデータの活用推進に貢献することを目指していきます。
イメージ図
新会社の概要
会社名 | 株式会社HEMILLIONS |
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所在地 | 東京都港区海岸1-7-1 |
設立日 | 2023年4月7日 |
事業内容 |
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資本金 | 1億円 |
代表者 | 代表取締役 井上 伸一 |
株主 | 国立大学法人東京大学、ソフトバンク株式会社、株式会社ケーアイエス ほか |
- [注]
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コンピューター間での医療情報のデータ連携を標準化するための国際規格「FHIR: Fast Healthcare Interoperability Resources」。FHIRは実装に重点を置いており、最新のウェブテクノロジーを使用して迅速な導入を支援する技術仕様です。
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※2
Beyond AI 研究推進機構の詳細についてはこちらをご覧ください。
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※3
CIP(Collaborative Innovation Partnership)。経済産業省が大学や企業などによる技術の研究成果を迅速に事業化するために策定した制度。産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)で、各組合員は研究者、研究費、設備などを出し合って共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用します。HEMILLIONSはCIPの制度を活用し、東京大学やソフトバンクなどが2021年10月に設立した共同研究組織である健康医療情報標準流通基盤技術研究組合から、厚生労働大臣および経済産業大臣の認可を得て、新設分割によって設立されました。
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※4
研究資金の規模、知財創成への貢献度などを勘案し、組合員が株式を保有します。
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※5
Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の略で、ソフトウエア同士をつないで情報をやりとりするための仕組みのこと。
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※1
- HL7®およびFHIR®は、Health Level Seven Internationalの米国およびその他の国における登録商標です。
- SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
- その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。