プレスリリース 2024年

牛の給餌量と出荷時期の最適化を目指す
畜産DXの技術検証実施について

~画像解析AIとセンシング技術を活用して牛の成長の“見える化”を実現~

2024年1月31日
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
ソフトバンク株式会社

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長執行役員:香川 佳之、以下「トヨタテクニカルディベロップメント」)とソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下「ソフトバンク」)は、畜産DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する共同開発契約を締結し、牛の給餌量と出荷時期の最適化を図る技術検証(以下「本技術検証」)をしています。なお、本技術検証は、愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」および農林水産省令和5年度「フードテックビジネス実証事業」の採択案件です。

背景

世界の人口急増により、畜産物や穀物の需要増加が予測される中、日本のカロリーベースの食料自給率は38%※1と先進国の中でも最低水準であり、食料安全保障の懸念が高まっています。中でも畜産農家は、経営コストの半数以上を占める飼料の多くを輸入に依存しているため、長引く価格高騰で経営状況が厳しくなっています。さらに、環境に配慮した持続可能な食料システム確立のため、畜産業においても温室効果ガスの低減の取り組みが求められています。また、畜産肥育現場の生産者への調査により、下記の現状が明らかになりました。

  • 給餌は人手作業であり、摂食量を定量的に把握できていない
  • 成長に合わせた餌の与え方は給餌者の経験による部分が多く、標準化できていない
  • 牛の成育状態をメジャーや体重計で測ることは困難で、頻繁に計測できていない

これらの点から、現状の給餌方法では無駄が発生している可能性があり、出荷タイミングの判断が定量的ではないという課題が判明しました。牛の給餌量と出荷時期の最適化を図る本技術検証を実施し、生産者の課題解決を目指します。これらの課題を解決することで、畜産の生産性の向上に加え、肥育期間の短縮による温室効果ガスの低減にもつながると考えています。

プロジェクトの概要

本技術検証は、カメラや環境センサ(温度、湿度、照度)により、肥育牛の摂食の様子や牛の全体像などのデータを取得し、AI(人工知能)の活用による牛の個体識別、摂食状況把握、体重推定を行うことで、牛の成長の“見える化”を図り、牛の畜産農家の生産性向上につながる給餌量と出荷時期の最適化を目指します。現在、畜産業を展開する愛媛県西予市の株式会社ゆうぼく(代表取締役:岡崎 晋也、以下「ゆうぼく」)と宮崎県高原町の江田畜産株式会社(代表取締役:江田 友輝、以下「江田畜産」)の2拠点で技術検証を実施しています。

技術検証の概要

役割

  • ゆうぼく

    実験環境の提供、データ解析結果に基づく肥育改善およびシステム改善の助言
    (愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の実装)

  • 江田畜産

    実験環境の提供、データ解析結果に基づく肥育改善およびシステム改善の助言
    (農林水産省「令和5年度新事業創出・食品産業課題解決調査・実証等事業のうちフードテックビジネス実証事業」の実装)

  • ソフトバンク

    CG教師データを活用したAI/機械学習による画像解析から個体識別と体重および摂食量の推定ロジックを作成

  • トヨタテクニカルディベロップメント

    計測環境構築(カメラ、環境センサ、クラウド)およびフィールドデータ取集とスクレイピング(抽出、加工)、検証結果に基づいた畜産DXサービスの開発

プロジェクトの全体像

今後の展望

これまで測定や把握が困難であった牛の成長に関するデータの取集・分析をAIやセンシングなどの技術で可能にし、より多くの畜産現場で簡単かつ手軽に利用できるソリューションを提供することで、今後、食料安全保障と環境負荷問題解決への貢献を目指します。

愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」(2023年9月採択)について

「トライアングルエヒメ」は、2022年度にスタートした、愛媛県によるデジタルソリューションと関連技術を愛媛県内事業者・自治体などに実装し、地域課題の解決にチャレンジするデジタル実装加速化プロジェクトです。詳細はウェブサイトをご覧ください。

TRY ANGLE EHIME

農林水産省「令和5年度新事業創出・食品産業課題解決調査・実証等事業のうちフードテックビジネス実証事業」(2023年10月採択)について

フードテックなどを活用した技術について、ビジネスのフェーズに乗せるための実証を支援し、実証した成果の横展開などを行うことで、多様な食の需要への対応や食に関する社会課題の解決に資する新たなフードテックビジネスの創出を図ることを目的にしています。詳細はウェブサイトをご覧ください。

関連するSDGs目標

関連するSDGs目標
[注]
  1. ※1
    令和4年度の食料自給率 出展:農林水産省ウェブサイト
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