プレスリリース 2024年
スマホで魚の尾数カウントをリアルタイムに実現する
機械学習アプリケーションが
CES® 2025でイノベーションアワードを受賞
2024年12月5日
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)とAizip, Inc.(エーアイジップ、米国カリフォルニア州、以下「Aizip」)は、スマートフォン(スマホ)などのエッジデバイスで魚の尾数カウントを実現するオンデバイス機械学習アプリケーションの共同研究開発を行い、「CES® 2025」の「Food & AgTech」部門において「イノベーションアワード」を受賞しましたのでお知らせします。
これまでソフトバンクは、養殖事業者の業務効率化を目指し、リアルタイムでの魚の尾数カウントの実現に向けて研究を行ってきました。今回ソフトバンクとAizipは、ソフトバンクのコンピューターグラフィックス(CG)シミュレーション技術とAizipの小型AI(人工知能)技術を活用したAIモデルを用いて、スマホで尾数カウントを実現する機械学習アプリケーションの共同研究開発を行いました。このAIモデルは、タイニー・マシン・ラーニング(以下「TinyML」)技術を用いており、省電力・小型でありながら高精度を実現し、水中でスマホを使って95%の認識率で尾数をカウントすることに成功しました。また、このTinyML技術を活用して、スマホ上で動作するRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を用いたSLM(Small Language Model:小規模な言語モデル)を組み込んだQAアプリケーションについても共同研究開発を行いました。
ソフトバンクとAizipは、2025年1月7日から米国ラスベガスで開催される「CES® 2025」において、これらのアプリケーションを展示する予定です。
今後1次産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)や業務効率化のために、スマホなどのエッジデバイス上におけるリアルタイムでのデータ入手と分析が、ますます重要になっていきます。今回の共同研究開発により、海洋環境での機械学習アプリケーション活用の可能性や養殖事業者の業務効率化などが期待できます。また、TinyMLの活用により、電源や通信ネットワークがない洋上や、山頂などの電波が届きにくい環境、機内などにおいて、スマホの活用範囲が広がることが期待されています。
ソフトバンクとAizipは、エッジデバイス上での機械学習の実行を可能にすることで、産業の変革を目指していきます。
今回の共同研究に関する詳細は、下記の通りです。
魚の尾数カウントを実現するオンデバイス機械学習アプリケーションについて
これまでソフトバンクは、養殖事業者の業務効率化を目指した魚の尾数カウントの実現に向けて、クラウド上のサーバーで計算処理を行うAIシステムを開発し、研究してきました。このシステムは、サーバーを基本としたアーキテクチャーに依存していました。また、水中でのリアルタイムの分析に適応させるためには電源や通信の確保という課題があり、スマホなどのエッジデバイス上で動作する省電力、小メモリーの機械学習モデルが求められていました。
これらの課題解決のため、ソフトバンクのCGを用いた魚の群行動のシミュレーションおよびCGを基に自動生成した訓練データセットと、Aizipの小型AI技術を合わせたTinyML技術を活用し、エッジデバイスでリアルタイム分析を実現するAIモデルを開発しました。TinyMLは、省電力・小型でありながら、大容量のニューラルネットワークと同じ精度で小さなニューラルネットワークを運用できることが評価されており、サーバーレベルの計算精度をエッジデバイス上で実現することができます。今回、高精度なTinyMLモデルとエッジAIを魚の尾数カウント用に最適化し、水中で標準的なスマホを使い、リアルタイムかつ認識率95%という高精度での尾数カウントに成功しました。この技術を活用して、今後は海洋環境でのオンデバイス機械学習アプリケーション活用の可能性や、養殖事業者の業務効率化などが期待できます。
SLMを組み込んだQAアプリケーションについて
TinyMLの可能性を検証するため、ソフトバンクはAizipと共同で社員向けQAシステムの開発を行いました。大規模言語モデル(LLM)は、汎用性のある回答が可能になる一方、動作するためにリッチな環境が必要です。社内システムは特定の用途専用であり、消費電力の観点や社内情報を取り扱うというセキュリティーの面からも、スマホなどのエッジデバイスでの動作が求められています。しかし、クラウド上で動作するモデルと同等の精度を維持しながら、制約が大きいエッジデバイスに合わせて言語モデルを小型化するには課題がありました。今回、スマホ上での効率的な動作に加え、タスクに特化したデータセットを用いてファインチューニング(微調整)をすることで、クラウドベースのモデルに匹敵する精度を実現する小型言語モデル(SLM)を開発することに成功しました。さらに、社員向けQAのデータベースを含むRAGに統合することで、SLMを再学習することなく、日々変化するデータに迅速に適用することができるようになります。今回開発したQAアプリケーションは、あいまいな問い合わせに対して学習モデルが対話を行うことで、ユーザーの質問を明確にすることができ、社内QAシステムにおいて96%の正答率を出すことに成功しました。今後の研究により、さらなる精度の向上が期待されています。
これら二つのアプリケーションは、一つのプラットフォームに統合されており、省電力での実行を実現しています。
TinyMLの概要図
精度を変えることなく、省電力かつAIモデルのサイズを減らし、スマホ上でリアルタイムに動作することに成功

- [注]
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- ※Aiziplineツールボックス:Aizipが開発した自動AI設計ツール
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実証実験結果
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- 水中での魚の尾数カウント
魚の陰にいる魚の尾数の推定が可能に

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- RAGを用いたSLM
スマホで動作するQAシステム

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- ※回答内容はセキュリティー上一部加工
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Aizipについて
2020年に設立された、シリコンバレーを拠点とするAizipは、IoT向けAI(AIoT)モデル設計のリーダー企業です。画期的なニューラル・ネットワーク・アーキテクチャーと独自の自動設計ツールにより、優れた性能を持つ幅広いディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)を実証しています。
https://aizip.ai/
用語説明
ディープラーニングは、コンピューターパワーを必要とするという問題があり、電力、プライバシー、リアルタイム応答などの課題が近年浮き彫りとなってきた。TinyMLは、AIモデルを極小にすることで、これらの課題解決を目指す手法。省電力、低コスト、プライバシー保護、リアルタイム応答といった利点があり、AI実装において注目されている。
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