プレスリリース 2025年
NVIDIAアクセラレーテッド コンピューティングを用いた
AIサーバーに対応するZutaCoreの二相式DLC技術を
最適化したラック統合型ソリューションを設計・開発
~実用化に向けてソフトバンクのデータセンターで動作実証および性能評価を実施し、
ラック単位での冷却効率としてpPUE1.03(実測値)を実現~
2025年2月28日
ソフトバンク株式会社
ZutaCore®
Foxconn
ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)、ZutaCore®(ズータコア、以下「ZutaCore」)およびFoxconn(フォックスコン、以下「Foxconn」)は、AIデータセンターの低消費電力化を目指して、NVIDIA H200 GPU を搭載したNVIDIAアクセラレーテッド コンピューティングを活用するAIサーバーに、ZutaCoreの二相式DLC(Direct Liquid Cooling、直接液冷)技術※1を世界に先駆けて※2実装しました。また、ソフトバンクは、二相式DLC技術を搭載した冷却機器をはじめとするサーバーの各構成要素を、ラックスケールで統合したラック統合型ソリューションを設計・開発し、2025年2月にソフトバンクのデータセンターで動作実証および性能評価を行いました。実証の結果、NVIDIAの温度試験(NVQual)に合格し、このラック統合型ソリューションの互換性、安定性および信頼性を確認した他、ラック単位での冷却効率としてpPUE1.03(実測値)を実現しました※3。
AI(人工知能)の普及および利用の拡大に伴い、AIサーバーをはじめとするコンピューティングリソースの需要が大幅に拡大し、データセンターにおける電力消費量がさらに増大することが見込まれています。一方で、二酸化炭素(CO2)の排出量削減の観点から電力消費量を抑えることが世界的に喫緊の課題となっており、データセンターの高効率化や低消費電力化、革新的な排熱ソリューションの導入が求められています。ソフトバンクは、AIデータセンターの低消費電力化に向けて、二相式DLC技術の開発と事業を行うグローバルリーダーであるZutaCoreと2024年5月から協業し、同技術を最適化したソリューションの開発を進めてきました。
3社は今後、NVIDIAアクセラレーテッド コンピューティングを用いたAIデータセンターの高効率化かつ低消費電力化の実現を目指し、二相式DLC技術を最適化したラック統合型ソリューションの実用化およびグローバル市場への展開に向けて、取り組みを進めていきます。
- [注]
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- ※1サーバー内部の半導体チップ(プロセッサー)上のコールドプレートに、水を使用しない絶縁性冷媒を二相式(液体、気体)で循環させて冷却する技術。
- ※22025年1月時点、ZutaCore調べ。
- ※3ZutaCore調べ。pPUE(partial Power Usage Effectiveness)とは、データセンターの冷却効率を示す指標の一つであるPUE(Power Usage Effectiveness)に対して、サーバールームやモジュールなど特定の範囲や設備の効率を示す指標。数値が1.0に近いほど、エネルギー効率が良いことを示します。
- ※1

二相式DLC技術を最適化したラック統合型ソリューションの特長
1. つなぐだけですぐに使える“Plug&Play”※4のソリューション
従来は個別で最適化することが必要な二相式DLC技術を搭載した冷却機器をはじめとするサーバーの各構成要素を、ラックスケールで統合することで、つなぐだけですぐに使える“Plug&Play”のソリューションとして提供することが可能となり、AIデータセンターなどでの導入が容易かつシンプルになります。

2. ZutaCoreの革新的な二相式DLC技術
サーバー内の熱源となるチップセット(CPU、GPU、メモリーなど)にコールドプレートを接触させて冷却するZutaCoreの二相式DLC技術によって、コールドプレートの中で沸点が低い絶縁性の特殊な熱伝導(誘電性)流体を循環させ、熱源により液体から気体へ相変化する際の熱吸収を利用し、蒸発と凝縮を繰り返すことで効率的な冷却が可能となります。また、従来の水冷設備に比べて高い水温を維持することができるため、冷却用の水の熱運搬能力が向上し、必要な冷却効果を得るための水の流量が減少します。これにより、冷却用の水を送り出すポンプの圧力の低減が可能となり、低消費電力化に貢献します。さらに、絶縁性の熱伝導流体を採用しているため、流体が流出した場合でもサーバーの重大な被害を防ぐことができます。

3. 互換性、安定性および信頼性が保証されたAIサーバー
ソフトバンクとFoxconnは、NVIDIA H200 GPUを搭載し、ZutaCoreの二相式DLC技術を最適化したAIサーバーを開発しました。このAIサーバーは、サーバーシステムの互換性、安定性および信頼性を判定するNVIDIAの温度試験(NVQual)において、目標とするパフォーマンスの数値を上回ることができました。
4. AIサーバーを高密度に配置できる汎用性と拡張性を兼ね備えたラック
ソフトバンクは、二相式DLC技術による冷却効率の最大化と運用効率の向上に向けて、ラックを開発しました。このラックは、最新のAIサーバーを高密度に配置できる汎用性と拡張性を兼ね備えた設計になっていることに加え、冷却効率を向上させるためのエアフローが設けられている他、運用における安全面やロボットフレンドリーな運用を考慮してラックの後方に電源や配線を集約するなど、さまざまな工夫が施されています。また、このラックは、ハードウエアの仕様や設計のオープンソース化を進める非営利組織「Open Compute Project(OCP)」がデータセンター向けの製品の設計について定めた仕様であるORV3規格に準拠した21インチサーバーや従来型の19インチサーバーに対応し、グローバルスタンダードで導入できる仕様となっています。

各社のコメント
ソフトバンクの執行役員 データ基盤戦略本部 本部長である丹波廣寅は、次のように述べています。
「国内最大級のAI基盤の整備と国産大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組む中、データセンターのエネルギー効率向上は、AI開発の加速と持続可能な社会の実現に不可欠です。この『二相式DLC技術を最適化したラック統合型ソリューション』の動作実証で、液冷による高密度GPUサーバーの安定稼働とエネルギー効率の向上を確認できました。今後、このソリューションをAIデータセンターやAIファクトリーで活用できるよう実用化を進め、持続可能なAIインフラの構築と計算効率の最大化に取り組んでいきます」
ZutaCoreのCo-founder and CEOであるErez Freibachは、次のように述べています。
「ZutaCoreは、業界のグローバルリーダーであるソフトバンクおよびFoxconnと提携し、NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティングを用いたAIサーバー向けとして世界初となる二相式DLCラック統合ソリューションを発表できることをうれしく思います。この画期的なソリューションは、持続可能な排熱ソリューションへのニーズの高まりに対応しながら、比類のない効率を実現する当社のウォーターレス・DLC技術による変革の可能性を示唆するものです。われわれは、次世代のAIデータセンターとAIファクトリー向けにエネルギー効率が高い革新的なソリューションの展開を進めていきます」
Foxconnからのコメントは、以下の通りです。
「世界最大のAIサーバーのサプライヤーである当社は、このたびの取り組みに参加し、AIサーバーの開発における豊富な専門知識を共有できることを喜ばしく思います。世界のAI業界により大きな価値をもたらすことを楽しみにしています」
今後の展開
ソフトバンク、ZutaCoreおよびFoxconnは、今後NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティングを用いたAIデータセンターの高効率化や低消費電力化を目指して、AIサーバーメーカーやラック設計企業などとの連携を強化し、このソリューションの実用化およびグローバル市場での展開を見据えて取り組んでいきます。
- [注]
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- ※4機器の本体に周辺機器を接続した際に、自動的に周辺機器を認識し、必要な設定を行う仕組み。
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- その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。