TCFD提言に基づく
情報開示
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、2015年に金融安定理事会(FSB)により設立された、気候変動が事業に与えるリスクと機会の財務的影響に関する情報開示を企業に推奨する国際的イニシアチブです。
当社は、TCFDが企業に推奨する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」のフレームワークに沿って、事業活動における気候関連のリスクと機会を評価し、積極的な情報開示とその充実に努めることが、企業の持続的な成長のために重要であり、脱炭素社会の実現に向けた企業の責務と考えております。
当社は2020年4月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。TCFDの提言に基づき積極的な情報開示とその充実に努めていきます。
ガバナンス
a. 取締役会による監督体制
当社は、持続可能な社会づくりに貢献することを重要な経営課題と捉え、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定し、マテリアリティの一つとして「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」を設定いたしました。このマテリアリティに関する対応の推進のために取締役会の諮問機関としてESG推進委員会を2020年3月に設置しました。代表取締役社長を委員長ならびにESG最高推進責任者とし、取締役会の監督のもと、気候変動関連のリスク・機会に関わる戦略などサステナビリティ活動全体の最終責任を負います。
b. 経営層の役割
ESG推進委員会は委員長である代表取締役のもと取締役および委員長が指定したメンバーにて年4回開催し、事業で使用する電力などによる温室効果ガス排出を2030年度までに実質ゼロにする、カーボンニュートラル2030宣言など重要事項を議論します。なお、カーボンニュートラル達成のための再生可能エネルギー導入率などは一部役員報酬と連動しています。
また、取り組みの社内推進、業務遂行する機関として、ESG推進担当役員のもと環境委員会を設置しています。環境委員会はCSR本部長を委員長とし当社各事業部および主要な当社グループの環境担当者で構成し、カーボンニュートラル2030達成に向けた具体的な施策を推進します。同委員会で審議・検討された事項のうち、重要なものについてはESG推進委員会へ報告します。
サステナビリティ推進体制
戦略
a. 気候変動に関わる
リスクと機会
気候変動により将来予測される事象に適応する戦略を勘案するために、全社で自然環境に関わる事業リスクを選定し、急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオと気候変動対策が進まず温暖化が進行する3-4℃シナリオの2つのシナリオ分析を実施し、バリューチェーン上流下流を含む事業に与える財務影響が特に大きい今後30年間に発生が予見されるリスクの洗い出しを実施しました。一部のリスクについて外部シナリオなどを参考にシナリオ分析を実施した結果、通信設備の被災による物理的リスクが財務計画に大きな影響をおよぼす可能性があることを認識しております。以下に結果を記載します。
財務影響度
| リスクタイプ | 検討した 財務影響 |
シナリオ※1 | 財務影響度※2 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 短期 | 中期 | 長期 | |||||
| 物理 リスク |
急性 | 自然災害激化による、被害拡大 | 基地局設備等の被害増加による復旧コスト、資産への影響 | 1.5℃ | 大 | 大 | 大 |
| 3-4℃ | 大 | 大 | |||||
| 災害対策コストの増加 | 1.5℃ | 中 | 中 | 中 | |||
| 3-4℃ | 中 | 中 | |||||
| 慢性 | 気温上昇、水ストレス地域の拡大 | 空調コスト増 | 1.5℃ | 中 | 中 | 中 | |
| 3-4℃ | 中 | 中 | |||||
| 移行 リスク |
市場 | 低炭素・脱炭素市場の拡大、顧客の行動変化、嗜好変化 | 再生可能エネルギーの電力提供への投資コスト増加 | 1.5℃ | 小 | 中 | 中 |
| 評判 | ステークホルダーにおける低炭素・脱炭素嗜好の高まり | 脱炭素の取り組み不足と判断された場合のブランドイメージの低下による売上の減少、株価の低下 | 小 | 中 | 中 | ||
| 政策と法 | 規制強化 | 新税制の導入によるコスト増 | 小 | 中 | 中 | ||
| 技術 | 脱炭素新技術への移行 | 新技術の導入遅延、移行による事業影響 | 中 | 算定検討中 | |||
- [注]
-
- ※1
外部シナリオ
1.5℃シナリオ
IEA WEO 2024(Net Zero Emission by 2050:NZE/Stated Policies Scenario:STEPS)
IPCC(SSP1-1.9)
脱炭素の取り組みが加速し、ネットゼロの実現に向けて各国で炭素税の導入が進んでいる。日本では、2020年度と比較して気温が0.5℃上昇し、猛暑日も増加傾向にある。これに伴い、オフィスや店舗、データセンターなどの空調関連の電気使用量が増加している。3-4℃シナリオ
IEA WEO 2024(Stated Policies Scenario:STEP)
IPCC(SSP5-8.5)
炭素税の導入が進まず、低価格で推移している。日本では、2020年度と比較して気温が1.6℃上昇し、猛暑日は約6.9日増加している。空調需要の増加が加速し、オフィスや店舗、データセンターなどの空調関連の電気使用量が一層増加している。 - ※2時間軸:短期(数年以内)、中期(3~5年程度、中期経営計画と同等)、長期(10年~30年程度)
- ※1
b. 戦略および財務計画への影響
当社は国内通信事業を主力サービスとし、2024年度は連結で2,286,427MWh(カバレッジ100%)の電力を全国約30万局以上の基地局をはじめとするネットワーク設備の運用で使用しています。生成AI(人工知能)の普及が進むことによりデータセンターなどの電力需要の急増が見込まれる背景を踏まえ電力量は増加する見込みです。また、日本の国土面積の68%は森林で、南北に長い国土の中央を急峻な山脈が貫く山岳地形のため、河川は短く急流で、また脆弱な地質地盤が多く、梅雨後期や台風シーズンには局所的豪雨による土砂災害や洪水被害、それに起因する停電のリスクがあります。
3-4℃シナリオ
気候変動対策の強化をはじめとする政策・法規制の強化や、技術、市場、評判などの移行リスクは限定的である一方、異常気象の激甚化による急性のリスクや気温上昇、水ストレス地域の拡大による慢性のリスクが生じると仮定し、過去10年で発生した大雨特別警報の豪雨による当社被害がもっとも大きかった2019年度の復旧コスト7.7億円などを参考に、将来発生が予見される財務への潜在的影響を試算しました。
-
物理リスク(急性)
生物多様性の損失による森林の防災機能低下により、地球温暖化の進行による自然災害の頻発・激甚化に伴う基地局など通信設備の災害対策や復旧によるコスト増、バリューチェーンの断絶による調達への影響、ビジネス機会損失、被災設備による近隣被害の誘発などを潜在的リスクと認識し、過去の当社コストを指標とし、将来発生が予見される財務への潜在的影響を検討しました。
その結果、人件費をはじめとする復旧にかかるコストは限定的なものの、通信設備、特に基地局は全国に多数設置されており、その資産規模を踏まえると、災害による財務的なインパクトは大きいと想定しています。また、高リスク設備を中心に通信設備の強化対策を行った場合も、頻発化、激甚化する気候災害のリスクを完全に排除することは困難であり長期リスクとして発生可能性が高く、大規模に発生した場合には通信サービスが途絶し社会的責任が生じると考えております。
対策として、国土交通省の洪水浸水想定区域データを使用し、屋外に設置したすべての基地局(屋上等を除く)を対象に物理リスクの評価を実施した結果、関東地方および中四国地方の沿岸部および河川部のリスクが特に高いことを確認しております。一例として令和元年10月の台風19号発生の際には、関東地方を含む広範囲に記録的豪雨による河川の氾濫や土砂災害をもたらし、死者・行方不明者は100名を超え、当社の多数の基地局も水没や停電など甚大な被害をうけ通信できないエリアが発生しました。台風や線状降水帯の発生回数の増加に伴い、発生確率が上昇傾向にある洪水被害への適応策として、設備破損リスク低減、広域停電時におけるサービスの安定的に継続するために、2024年度は約19億円を投資し主に以下の計画を策定・実施しました。その結果2024年度に発生した災害に対する復旧コストは3億円となり、重大なエリア支障につながる事案は発生しませんでした。基幹ネットワークの冗長化をすすめ、災害時の通信サービス環境の確保に努めています。- 移動型基地局の配備
- 可搬型基地局の配備
- バッテリーのリプレイスおよび保守対応
- 可搬型発電機の配備
-
物理リスク(慢性)
空調使用の増加によるコスト増、海面上昇や気象災害による低地などの増水リスクへの対応のためショップを閉鎖することによる売上の減少、地球温暖化と生物多様性の劣化の影響による洪水、渇水など水ストレスに伴う、半導体供給遅延などによる調達への影響、データセンターのサーバー冷却水等の事業用水確保に伴う影響を検討しました。当社は生成AI(人工知能)の普及が進むことによるデータセンターの電力需要増を見込んでおり、当社設備の電力使用実績と気温データの相関関係からコスト算出した結果、一定のインパクトがあると想定しています。対応策として省エネ設備への転換、AI・IoT活用による電力使用の効率化、オンラインショップの拡大を進めてまいります。
1.5℃シナリオ
事業に影響を与えるレベルの気候変動による急性あるいは慢性の物理リスクは生じない一方、気候変動対策の強化をはじめとする政策・法規制の強化や、技術、市場、評判などの移行リスクが影響をおよぼす可能性を検討しました。
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移行リスク(市場/評判)
パリ協定の目標達成に向けて企業に対する野心的な目標の要求は年々高まっており、当社の取り組みが対応不足と判断された場合の売上や株価、ブランドイメージなどへの影響、また自然資本の枯渇や社会不安による経済影響に伴う事業影響について検討しました。
その結果、TCFD開示提言に基づく積極的な情報開示や、カーボンニュートラル実現につながる活動推進、対外開示を通じた低炭素経営へのコミットメントの明確化、社会全体のCO2削減への貢献、ネット募金などによる人々の行動変容の促しなどの取り組みにより企業価値の向上に努めることは優先的に取り組む事項であることを認識し、2020年4月にTCFDに賛同し、マテリアリティの一つとして「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」を設定しました。
長期的には、資源枯渇と市場需要増による原材料のコスト増が考えられます。当社は、資源の有効活用のために、使用済み携帯電話リユース/リサイクル回収台数、撤去基地局通信設備リサイクル率、産業廃棄物リサイクル率をマテリアリティのKPIに設定しモニタリングしています。
また、低炭素・脱炭素市場の拡大、顧客の行動変化、嗜好変化により、再生可能エネルギーの調達など、脱炭素サービス提供のための投資コストが増加すると考えられますが、一方で当社にとっては機会となりえます。 -
移行リスク(政策と法)
気候変動対策の政策・法規制(地球温暖化対策のための税、地球温暖化対策の推進に関する法律など)が強化されると仮定し、2030年度にCO2換算1t当たり20,000円程度の炭素税が課された場合の影響額を試算しました。国内において現時点での発生可能性は低いと考えていますが、発生した場合には一定の財務影響が生じます。今後の国内の法規制として炭素賦課金の動向に注視いたします。なお、対策として当社は、2030年度までに事業活動で使用する電力※1を100%再生可能エネルギー化※2することを目指し取り組みを進めています。あわせて、再生可能エネルギー由来の電力※3を使用する電力※1の50%以上調達することを目指し温室効果ガスの排出の削減を推進します。2023年6月には、2050年度までにグループ連結でスコープ1、2、3を含む事業活動に関連する全ての温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成を宣言しました。
- [注]
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- ※1ソフトバンク(株)およびWireless City Planning(株)
- ※2再生可能エネルギー指定の非化石証書の使用を含む
- ※3風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電された電力
- ※1
-
移行リスク(技術)
規制に対応するための技術不足による事業推進への影響について財務影響算出の検討をすすめています。他社とのサービスレベルに差が発生した場合には競争力低下をまねく恐れがあります。対応策として戦略的アライアンスや共同開発パートナーの構築が必要となります。
リスク対応策、機会
事業リスクを低減するための対応は、同時に大きな事業機会ともなりえます。AIやIoT、ビッグデータなどの最先端テクノロジーを活用し、膨大な環境データをAIの学習機能によって分析することで、地球環境に与える影響が予測できるといわれています。その予測からさまざまな対策を打てるようになるため、環境問題における最先端テクノロジーの活用は世界で注目されています。当社が強みとするAIやIoTなどの最先端テクノロジーやグループ企業とのシナジーを最大限に活用し環境負荷軽減に取り組みます。なお、当社が展開する気候変動対策関連の事業の一部(携帯電話端末のリユース品、防災向け水循環システムの販売等)は、EUタクソノミーに適合する持続可能な経済活動として位置づけられています。このような事業は社会ニーズの高まりを背景に2024年度は約700億円の売上を創出し、中長期的な企業価値の向上に資する成長機会と捉え、今後も戦略的に事業を推進してまいります。
下記に取り組み例を記載します。
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CO2排出量実質ゼロ「自然でんき」
当社は、再生可能エネルギー指定の非化石証書を組み合わせることで、実質的に再生可能エネルギー比率100%・CO2排出量ゼロを実現する家庭向け料金メニュー「自然でんき」を提供しています。2023年度は「自然でんき」の提供を通じて、年間でCO2排出量約3.1万t-CO2の削減効果を生み出しました。
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日本最大の家庭向け節電サービス「エコ電気アプリ」
当社は電力サービスをご契約のお客さまに対して「エコ電気アプリ」を無償で提供しています。「エコ電気アプリ」は、エンコアードジャパン(株)の独自AIを含む特許技術を活用し、スマートフォンアプリを通してお客さまに節電を呼びかけるサービスです。アプリからでんき代の確認や予測を行える他、節電状況やCO2の削減状況を確認できます。節電に成功すると翌日にはPayPayポイントが付与されるため、電気料金の削減とともにおトクに節電に取り組んでいただけるだけでなく、お客さまの行動変容によって脱炭素に貢献できるサービスとなっています。
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脱炭素経営を支援する「クラウド炭素管理」
GHG排出量を算定・可視化するクラウドサービスで、(株)ゼロボードが開発・提供するGHG(温室効果ガス)の排出量を算定・可視化するクラウドサービス「Zeroboard(ゼロボード)」をもとに、当社が提供する法人向けのソリューションなどとの連携を見据えて最適化されたクラウドサービスになります。ゼロボードが持つ脱炭素化に向けた知見やノウハウを最大限に活用して、法人のお客さまの脱炭素経営や持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自社においても「クラウド炭素管理」をより積極的に活用して、GHG排出量算定の精度向上や工数削減につなげ、カーボンニュートラルに向けたグループ全体での取り組みを強化していきます。
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IoTを活用した自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」
当社のグループ会社であるOpenStreet(株)は、モビリティを所有せずに移動手段として利用できる環境に優しいシェアモビリティサービスを提供しています。シェアサイクリングプラットフォーム「HELLO CYCLING」とマルチモビリティシェアサービス「HELLO MOBILITY」により、自転車・スクーター・超小型EVを一つの拠点から貸出できる「マルチモビリティステーション」を各自治体やパートナー企業と連携し展開しています。これにより、まちの交通利便性の向上を実現する他、各車両に利用する電力の一部を再生可能エネルギー由来の電力で供給し、低炭素社会の実現に貢献します。今後も再生可能エネルギーを利用した電動モビリティの普及を目指し、地球環境と共存する社会の実現に取り組んでいきます。
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自然災害の影響を受けない成層圏通信システム「HAPS」
地上約20キロメートルの成層圏から通信ネットワークを提供する、成層圏通信システム「HAPS(High Altitude Platform Station)」サービスの商用化に向けた取り組みを推進しています。山岳部や離島、発展途上国など、通信ネットワークが整っていない場所や地域に安定したインターネット接続環境の構築が可能となるとともに、地上の影響を受けることなく安定した通信ネットワークを提供できるため、大規模な自然災害発生時における救助や復旧活動への貢献も期待できます。2022年1月にはHAPS事業に資金使途を限定したESG債(HAPSボンド)を発行し300億円を調達しました。
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分散型AIデータセンターの構築
当社は、AIと共存しAIが自律的に協調する次世代社会への発展には、膨大なデータの生成・処理を可能にする次世代社会インフラの構築が必要と考えています。現在のデータセンターは都市部に集中しており、このままデータ処理が増え続けると都市部の停電のリスクが高まります。そこで、大規模な計算能力を持つデータセンター(Brain Data Center)を全国に分散配置することを計画しています。2024年には北海道苫小牧市に大規模な計算基盤などを整備した苫小牧AIデータセンターの建設を開始しました(2026年度開業予定)。
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光電子結合ネットワークの全国展開
当社は、Beyond 5G/6Gを見据えて、増加するデータ通信の需要を満たしつつ、カーボンニュートラルを達成するネットワーク建設を目指し、富士通の次世代光伝送装置を用いた全光通信ネットワークの全国展開を2023年10月に完了しました。当社が全国展開を完了したAll optical networkは、通信ネットワークの全ての領域に光の技術を用いていおり、All optical技術対応機器との接続および水冷トランスポンダー技術の適用により、消費電力を従来比※最大90%削減しました。また、従来型設備との接続時も、最新の光電変換技術により従来比※約50%の低消費電力化を実現し、あらゆる接続環境で高い電力効率を発揮できる環境配慮型ネットワークです。また、通信性能の向上も図り、1対の光ファイバーを用いて、従来※の約2倍となる最大48.8Tbpsの大容量・高速伝送も実現しています。
- [注]
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- ※従来比:ソフトバンクが従来使用している機器との比較
- ※
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インターナルカーボンプライシング(ICP)制度導入
気候変動への対応を強力に推し進めるために、2024年度にインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を拡充しています。対象範囲をスコープ1、2とし、CO2排出量削減効果を得られる一部の設備投資においてインプリシットカーボンプライス(18,000円/t-CO2)を設定し、より脱炭素化を推進する設備導入を促進しています。
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カーボンクレジット活用におけるスタンスの表明
当社グループは「パリ協定」に賛同し、2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指しています。SBTiガイダンスを参考にスコープ1~3の排出量削減を最大化することを最優先に取り組んでいます。残余排出量については、インセット活動やカーボンクレジット活用によってオフセットする手段の検討も進めています。
カーボンクレジットに関しては、調達および創出する際の質の高さを重視し、生物多様性や地域社会、人権などへの影響およびコベネフィット(共通便益)への配慮も考慮した活用スタンスをまとめています。
c. 戦略のレジリエンス
当社は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃以下に抑えるための科学的根拠に基づくGHG排出量削減目標・ネットゼロ目標の達成に向けた移行計画として、サプライチェーン全体の排出量削減ロードマップを作成しました。
ロードマップ策定のため、環境省の「令和4年度大企業のサプライチェーン全体の脱炭素化推進モデル事業」に参画し、取引先に対して排出量削減に関するガイドラインを展開し、パリ協定に沿った排出削減目標の設定と進捗状況の公表などについて要請しました。今後、ネットゼロへの移行に向けて、自社の活動を短期(2022年~2025年)・中期(2026年~2030年)・長期(2031年~2050年)の3段階に応じて以下の施策を実施します。
スコープ1、2の排出量削減
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最新テクノロジーを活用した省エネ対策
- 通信設備の省エネ化の推進
- AIやIoTを活用したオフィスのスマートビル化
- 次世代光伝送装置を用いた光電子結合ネットワークの全国展開
- 超分散コンピューティング基盤の構築(xIPF)によるエネルギー消費効率の改善
- 環境配慮自動車の導入
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再生可能エネルギーへの切り替え
- 事業に使用する電力※1の再生可能エネルギー化※2(順次)
- 再生可能エネルギー由来の電力※3の調達※1(順次)
- 分散型AIデータセンターの推進
- エネルギーの地産地消の実現
スコープ3の排出量削減
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ステークホルダーとの協働
- 取引先に対する排出量削減ガイドラインの展開
- 取引先と協働した排出量の削減(カテゴリー1、2)
- 省エネルギー商品・サービスの提供
- 商品の再配達削減の実施
その他
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最新技術等の活用やオフセット
- 環境負荷の少ない通信インフラ「HAPS」の実現
- 残余排出対策として中和クレジットやCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)等の活用検討
- [注]
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- ※SBTネットゼロ目標およびSBT短期目標はSBTi認定済みとなっており、基準年排出量および削減目標についてはSBT認定内容をもとに記載しています。
- ※移行計画は2025年6月時点の計画であり、今後の事業戦略に応じて修正する可能性があります。
- ※1ソフトバンク(株)およびWireless City Planning(株)
- ※2再生可能エネルギー指定の非化石証書の使用を含む
- ※3風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電された電力
- ※
リスク管理
a. 気候変動リスクの特定および
評価プロセス
当社のコンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの各事業について、生物多様性や気候変動など地球環境に関わる自社および自社事業の隣接地域、サプライチェーン上下流を含めた事業リスクを特定しています。特定された事業リスクは、財務部門・CSR部門を中心に関連各部と検討を行いシナリオ分析を実施し、財務影響度を検討、ESG推進担当役員による評価を行います。
b. 管理プロセス
全社的なリスクの特定と顕在化を防止するため、社内でさまざまな角度から分析をする管理体制を整えています。各部門が現場で各種施策を立案する際にリスクを含めた検討を実施するとともに、リスク管理室が、全社的・網羅的リスクの把握と対策状況のチェックを定期的に実施し、リスク管理委員会(社長、副社長、CFO等を委員とし監査役や関係部門長などが参加)に報告しています。リスク管理委員会では、リスクの重要度や対応する責任者(リスクオーナー)を定め、対策指示等を行い、状況を取締役会に報告します。内部監査室はこれら全体のリスク管理体制・状況を独立した立場から確認します。
c. 全社管理プロセスへの統合
特定・評価した気候変動などのリスクについては、各事業のリスクと紐づけることで全社的な総合リスク管理との統合を図り、重要リスクとして定期的なリスクマネジメントサイクルを回すことにより、これらのリスク低減と未然防止に取り組んでいます。
指標と目標
a. リスクと機会の評価に用いる
指標
温室効果ガス排出量スコープ1(自らによる温室効果ガスの直接排出)、スコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)およびスコープ3(当社の事業活動に関連する他社の排出)をはじめとする環境負荷データの管理を行っています。
b. 温室効果ガス排出量
2024年度の温室効果ガス排出量はスコープ1:9,485t-CO2、スコープ2:383,765t-CO2、スコープ3:11,546,072t-CO2になります。詳細数値は巻末のデータブックをご参照ください。2024年度のカバレッジは基本的に100%になります。異なる場合は表中に記載いたします。
c. 目標および実績
スコープ1、2の目標として、2030年までに事業活動で使用する電力などによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル目標を設定しました。2024年度までに基地局電力の92.6%の再生可能エネルギー化を完了し、さらに、基地局以外の全ての自社の施設・設備での使用電力についても温室効果ガス削減を推進します。
当社は、2030年度までに事業活動で使用する電力※1を100%再生可能エネルギー化※2することを目指し取り組みを進めています。あわせて、再生可能エネルギー由来の電力※3を使用する電力※1の50%以上調達することを目指し温室効果ガスの排出の削減を推進します。
2023年6月には、2050年度までにグループ連結でスコープ1、2、3を含む事業活動に関連する全ての温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成を宣言しました。
- [注]
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- ※1ソフトバンク(株)およびWireless City Planning(株)
- ※2再生可能エネルギー指定の非化石証書の使用を含む
- ※3風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電された電力
- ※1
SBTネットゼロ認定を取得
スコープ3を含む当社の温室効果ガス排出削減目標は、国際的気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets initiative)によって科学的根拠に基づいた「SBT(Science Based Targets)」に認定されています。SBTの目標はこちらをご参照ください。
- 免責事項
将来の見通しに関する注意事項
当報告に記載する計画、予測、戦略などには、作成時点で入手可能な情報に基づき当社が判断した将来見通しが含まれています。このような事項は見通しと大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。業績に影響を及ぼすリスクや不確定要素の中には、当社の事業環境を取り巻く自然環境、経済情勢、市場競争、為替レート、税、またはそのほかの制度などが含まれます。