AI倫理・ガバナンス

AI倫理・ガバナンス

AI倫理委員長メッセージ

ソフトバンク株式会社 常務執行役員 CISO※ AI/サイバーセキュリティ担当 兼 AI倫理委員長 飯田 唯史 ソフトバンク株式会社 常務執行役員 CISO※ AI/サイバーセキュリティ担当 兼 AI倫理委員長 飯田 唯史

私たちの生活や社会は、さまざまな技術革新によりかつてないスピードで変化を遂げています。特に生成AIをはじめとする最先端のAI関連技術は情報の生成・分析・活用の在り方を一変させ、従来の常識やビジネスモデルを根底から塗り替えようとしています。また、文章だけでなく画像や映像の生成・アイデアの提案・意思決定の支援など、創造性や知的労働の領域にまで大きな影響を及ぼし、企業の業務プロセスから社会の構造に至るまで、私たちの暮らしの在り方を根本から変えつつあります。

当社は、「情報革命で人々を幸せに」という理念のもと、通信事業を基盤にAI領域での事業を展開する企業として、AI技術の可能性を最大限に生かしながら、責任あるAIの実現に取り組んでいます。その核にあるのは、AIが常に人間の尊厳を尊重し、すべての人にとって公平で信頼される存在であるべきという信念です。

AI技術の発展に伴い、その利活用における倫理的・社会的課題への対応はますます重要性を増しています。例えば、偏ったデータによる判断・アルゴリズムの透明性の欠如・プライバシーへの懸念・人間による意思決定の喪失など、AIにまつわるリスクは多様で複雑です。当社は、こうした課題に真摯に向き合いながら、AIの開発・運用において倫理とガバナンスの強化を継続的に推進しています。

具体的には、AI倫理指針の策定やAI倫理委員会の設置等を通じて社内ガバナンス体制を構築し、開発段階では公平性・説明可能性・透明性に配慮した技術設計を行っています。また、運用段階では、AIの利用場面や影響範囲を明確にし、適切なリスクアセスメントを実施しています。さらに、社員教育を通じてAI倫理やAIリテラシーに関する意識と知見の向上にも注力し、制度面では国際的なガイドラインや規制を踏まえた社内規程や体制の整備と見直しを実施しています。

私たちは、AI技術の恩恵を社会全体が公平に享受できるよう、倫理と信頼を基盤としたAIの利活用を通じて、持続可能で安心なデジタル社会の実現を目指してまいります。

ソフトバンク株式会社
常務執行役員 CISO
AI/サイバーセキュリティ担当 兼 AI倫理委員長
飯田 唯史

[注]
  • CISO(Chief Information Security Officer)は、最高情報セキュリティ責任者

方針

AIの利活用に伴う倫理的リスクや社会的影響に配慮しながら、AIが人々の幸せのために正しく活用される世界を目指すため、当社は基本的な指針として「AI倫理ポリシー」を策定しています。さらに、実践的な取り組みとして、規程・ガイドライン・チェックシートなどの関連ドキュメントを整備し、会社全体での運用を通じて、人間中心・公平性・透明性および説明責任などに留意し、技術の適正な活用と社会との調和を図り、信頼されるAIの実現に取り組んでいます。

1.AI倫理ポリシー 2.規程 3.ガイドライン 4.チェックシート

体制

当社は、AIの開発・活用に関する法令やガイドライン・社会的規範を順守し、AIが人々の幸せのために正しく活用される世界を目指していくため、独立した専門部門としてAIガバナンス推進室を設け、社内のAI利活用部門のガバナンスを推進しています。ステアリングコミッティには、CIO(Chief Information Officer)・CDO(Chief Data Officer)・CISO(Chief Information Security Officer)・CCO(Chief Compliance Officer)が管理監督としてサポートしています。アドバイザリーボードとして、社内外の有識者で構成されたAI倫理委員会が助言を行い、ガバナンスの推進に生かしています。

また、AIの不適切な利用や社会的影響が懸念される事案が発生した場合には、AI倫理委員長と関連部門責任者が連携し、迅速な状況把握・リスク評価・対応方針の策定や実施を行います。さらに、重大な倫理的・社会的インシデントが発生した場合には、社長を本部長とする緊急対応本部を設置し、社内外の関係者と連携して対応にあたるとともに、必要に応じて所管省庁や関係機関への報告も適切に行います。

体制

AI倫理委員会

AIはあらゆる産業での活用が広がり、今後も活用方法の多様化や技術の高度化が進むことが予想されている一方で、活用の仕方によっては差別的な評価や選別を導く可能性があるなど、倫理面での配慮や注意が必要な技術であることが挙げられます。そこで、AI/サイバーセキュリティを担当する常務執行役員 兼 CISOの飯田を委員長として、社外有識者などが参画してAIの倫理に係る各種課題の議論や提言を行う「AI倫理委員会」を設立し、ユーザー視点を踏まえた客観的で実効性が高いAIガバナンスの実現を目指しています。

AI倫理委員会は、以下の役割を担っています。

  • AI倫理に関わる方針・施策・計画の共有や提言
  • AI倫理活動に有益な情報の共有
  • 社内におけるAI活用・相談状況の共有および倫理的課題の共有や助言

など

関連会社のAI倫理・
ガバナンス支援

当社は、関係会社(子会社および関連会社)へAI倫理・ガバナンスの支援を実施し、AI技術の活用に伴うリスクの低減および未然防止を図るとともに、その対応策についての情報共有などを進めています。
また、多くの関係会社が「ソフトバンクAI倫理ポリシー」を適用し、適正かつ一貫したAI活用や研究開発を行う際の指針としています。

取り組み

AI倫理・ガバナンス体制の整備を進めるとともに、社内でのAI技術の導入・開発に際しては、倫理的観点からのチェックや助言、リスクベースアプローチを採用したリスク評価を実施しています。また、AIの利用状況や影響を継続的に監視・評価する体制として、AIガバナンス・モニタリング機能を設け、社内外の関係者との連携を強化、国内外のガイドラインを参照しながら、対策の見直しや新たな取り組みの検討にも取り組んでいます。

一方、ルールを整備するだけでは、組織全体に望ましい行動を定着させることはできないため、関係者全員にその内容がしっかりと認知され、日々の業務の中で自然に実践されていなければ意味がありません。そのため、当社はルールの整備に加えて、その内容を分かりやすく伝えるための教育や研修を重視しています。社員一人一人がルールの背景や意図を理解し、自らの行動に落とし込めるようになることで、初めてルールが真に機能すると考えています。

リスクベースアプローチ

当社は、AI倫理・ガバナンスに係るリスクチェックにおいて、リスクベースアプローチを採用しています。リスクレベルは禁止・高・中・低の4段階で定義しています。
リスク定義については、リスクが顕在化した時の社会的、事業的なインパクトを考慮し、かつ社員が簡便かつ明確に分類できる点にも配慮し制定しています。

リスクベースアプローチ
[注]
  • AIガバナンス推進室

教育

当社は、AI倫理・ガバナンスにまつわる社内ルール・知識の認知・実践・定着するため、"AI倫理・ガバナンス教育の推進"を重要視し、役員を含む全社員に対して年1回のe-learning・年2回の勉強会・毎月のメールマガジン配信など教育を推進しています。
国内外で発生しているAIインシデントの事例紹介・生成AIを含むAIを利活用する際の注意点(バイアス・情報漏えい・著作権侵害・ハルシネーション等)・AI倫理に関する社会動向などを中心にコンテンツを作成し、全社員のリテラシー向上に向けて注力しています。

e-learning・勉強会・メルマガ配信
[注]
  • 2024年度実績

ステークホルダーとの連携

当社は、これまでの取り組みを定期的に関連省庁や関連組織へアウトプットしています。当社の取り組みを高く評価いただき、AI事業者ガイドラインにも掲載されています。
今後も国内外の法規制・ガイドライン等の動きを注視しつつ、実行的・先進的な取り組みを実施・公開していきます。