2020年3月期 第1四半期 投資家向け説明会
主な質疑応答

日時 2019年8月5日(月)午後6時~午後7時
登壇者 取締役専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦、執行役員財務経理本部本部長 内藤 隆志、財務戦略本部本部長 廣野 公一
  • 来年にかけてはまだ割引ARPUの縮小による増益効果があると思うが、来年度以降に見込まれる増益要因について教えてほしい。

    まずコンシューマ事業のモバイルサービスについては、総合ARPUの上昇や契約件数の増加トレンドがしばらく続くとみており、またコスト面でもオペレーションの効率化も進めているため、今後も底堅く増益を支えてくれると期待している。ブロードバンドサービスについては、もう一段伸ばせると考えている。法人事業は、まさに伸び盛りであると実感いただけるよう、引き続き注力していく。加えて、ヤフー株式会社(以下「ヤフー」)の連結子会社に伴うシナジー効果も、あらゆる面で出てこなければいけない。例えば、ヤフー事業のメディア領域は大企業の顧客を多く抱えているので、ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)の法人事業とさまざまなコラボレーションが考えられる。既存事業の伸びに加えて、ヤフーとのシナジーによりさらなる上乗せも期待できると考えている。数年以内に営業利益1兆円という目標を掲げているので、それに向けて取り組んでいく。

  • スマホ決済サービス「PayPay」について、登録者数や決済回数の面では好調であるとの話だが、業績面では先行投資費用がかさみ、今期のその他セグメントの利益の減少要因となった。また今後も、持分法損益でマイナスの影響が出てくると予想される。「PayPay」が業績にプラスに効いてくるのはいつごろか。

    「PayPay」は現在、No.1の決済プラットフォームを目指して、顧客基盤の拡大に注力している段階。現在980万人の累計登録者数を、今後2,000万人、3,000万人と伸ばし、存在感のあるビジネスにするために注力している。加えて、O2O(Online to Offline)や広告ビジネスを展開するヤフーと、スマートフォンに強みがあるソフトバンクで、「PayPay」を中心に、さまざまなビジネスを積み上げていきたい。このような決済を中心にしたビジネスモデルは、「Alipay」を運営するアリババグループやインドの「Paytm」など、海外に先行事例があるので、日本でもそれを追う形で展開できればと考えている。

  • 法人事業のソリューション等が前年同期比24%の増収と伸びているが、具体的にどのようなビジネスがけん引しているのか教えてほしい。

    ソリューション等にはクラウド、IoT、デジタル広告、ロボティクス等といった、さまざまなビジネスが芽吹いて、業績に貢献しはじめてきたところだ。今後も種まきをしながら拡大していく。今はひとつずつがまだ小さいが、拡大に伴って、今後個別ビジネスの紹介もしていけたらと考えている。

  • コスト効率化が進んでいるということだが、通信事業の人員シフトの進捗について教えてほしい。

    人員シフトは、全社の人員数を増やさずに、既存事業から新領域へ人員を移動させていくというもの。現時点で既に3,000人以上の人が、業務面で新領域へシフトしている。これにより、人員コストを増やすことなく新しいビジネスを立ち上げられると同時に、既存事業の運営は効率化が進んでいるとご理解いただきたい。

  • 3,000人は関係会社等へ異動し、営業費用から除外されているということか。

    ソフトバンクに残り、新領域を担当している者が多い。財務的な見方では、全体的にコストをキープしながら新しいことに人員をシフトしている。

  • 端末販売について、物販等は前年同期比で減収だが、販売台数自体は増加しているのはなぜか。

    販売台数の中にはSIMカード単体の販売数も含まれており、特に「ワイモバイル」や「LINEモバイル」においてSIMカードの販売が好調。一方端末販売では、特に機種変更が前年同期に比べ減少しており、その影響で物販等が前年同期比で減収となっている。ただ減収額は73億円のため、全体への影響は限定的と考える。

  • 法人事業のソリューション等は、売上高を伸ばすフェーズと理解しているが、現在どれほど利益に貢献しているのか。

    ソリューション等は、もちろん前年同期比で増益ではあるものの、先行投資費用もあるため、売上高の伸びに比べると利益面での貢献は大きくはない。

  • 「PayPay」の損益見通しについて教えてほしい。また、「PayPayモール」が発表されたが、これはPayPay株式会社の事業ということになるのか。

    「PayPay」は昨年秋から事業を本格化しているため、事業を開始していなかった昨年度上期と比較した場合、今年度上期では業績のマイナス要因となっている。一方、下期に関しては、今後のコストのかけ方にもよるが、「100億円キャンペーン」を実施した昨年度下期と比べると、前年同期比での業績インパクトは限定的とみている。さらに昨年度は100%子会社だったPayPay株式会社が、今年度はヤフーと合わせても50%であることも、インパクトの軽減に寄与する。なお、「PayPayモール」は基本的にヤフーの事業であり、「PayPay」を中心に直売モールをつくるビジネスである。もちろん「PayPay」の名を冠しているので、「PayPay」とキャンペーン等を協業する可能性もある。

  • ヤフーはメディア事業が厳しい状況となり、それが2020年3月期第1四半期決算のネガティブサプライズとなった。今年度の残り9カ月、どのような分野でソフトバンクとのシナジーが出ると考えればよいか。

    まず、早い効果が期待できるのはソフトバンクの法人事業とのシナジーだろう。ソフトバンクがヤフーの販売代理店に近い役割を担うことになる。ソフトバンクの側も相応のリターンを得られような、win-winのビジネスモデルを追求している。また、多くの企業はデジタライゼーションを課題と認識しており、その分野でヤフーと共に良いソリューションを提案できれば、お客さまとの関係でもwin-winになれると考える。

  • 物販等売上が前年同期比73億円減の一方で、商品原価等が138億円の増加ということは、端末収支が悪化したということか。

    商品原価の増加は、流通事業が大きく影響している。流通事業は利益率が低いため、売上が伸びていることで原価も増加している。純粋に物販をみると、特筆すべき変化は起きていない。

  • 販売関連費用の増加要因は、直近数カ月間の販促費用の増加という理解でよいか。また、代理店手数料は一括費用計上ではなく繰延べているとのことなので、実際はもっと使っているということか。

    ご認識の通り。契約コストの増加は、償却費という形で表れてくるので、実際にかけた金額とは異なる。

  • 「ソフトバンク」ブランドにおける端末分離プランの選択率を教えてほしい。

    新規の契約の方は、ほぼ分離プランを選択しているという状況は変わっていない。機種変更は、一部の方がそのままの契約を望むケースがあるが、当社としては分離プランを推奨している。

  • 以前は、一時的かもしれないが「ワイモバイル」から「ソフトバンク」へのアップグレードが増えているということだったが、現状について教えてほしい。

    昨年度の第4四半期に比べ、今第1四半期では「ソフトバンク」から「ワイモバイル」への移行が強かった。

  • 他社の新料金プラン発表後、「ソフトバンク」や「ワイモバイル」の内訳に変化はあったか。

    特に大きな変化は感じていない。「ソフトバンク」はハイエンドで依然競争力があり、「ワイモバイル」の需要は引き続き強い状況である。特に「ソフトバンク」ブランドの「スマホデビュープラン」が好調であり、解約率の改善および獲得の増加につながっている。

  • コスト効率化が順調であり、すでに新しいコストを増やさずに新領域を展開しているとのことだが、今後のコスト改善の余地はどれほどあるのか。

    これまでのコスト効率化は、各部門の努力の積み上げによって達成されてきたが、今後はテクノロジーを活用した効率化を図っていきたいと考えている。RPAなどによりさらなる業務効率化に取り組んでいくが、コスト削減の方向というよりは、オペレーション効率を上げて新領域へシフトしていきたい。

  • ARPUの見通しについて、総合ARPUは増加しているが、割引前ARPUは減少している。月月割の減少に伴う割引ARPUの減少も、ある程度までいけば落ち着いてくると思われるので、ユーザー当たりの支払料金を増やしていく必要があるが、現在はスマホデビューの促進ということで、どちらかというと単価の低いローエンドユーザーの取り込みに注力しているようにみえる。総合ARPUが上がるイメージを持てないのだが、月月割減少影響の一巡後も、総合ARPUが上がっていく見通しはあるのか。

    私たちはスマートフォン契約数を増やしていくことが将来のビジネスの基盤になると考えている。日本でまだ3,000万近くあるフィーチャーフォン(従来型携帯電話)をスマホ化していくことが将来につながっていく。将来5Gサービスが本格化した時に、どのようなビジネスを描くことができるかが重要であり、例えばアメリカや韓国では5Gサービス本格化によりARPUに変化が起きている。さらにヤフーと一緒に行っていくOTTレイヤーのインターネットビジネスにとっても、また「PayPay」が育ってきた時にも、やはりスマートフォンは不可欠な要素になってくる。

  • ヤフーは、外部環境の変化になかなか対応できないような利益構造になっているように思う。連結子会社化を機に、今後どのようにソフトバンクがリーダーシップを持って、ヤフーの企業体質を変えていこうとしているのか。

    私たちはヤフーには成長のポテンシャルがあると信じている。親会社として責任を持ってヤフーの活性化に取り組み、皆さまにご安心いただけるような状況にヤフーを導きたいと思っている。昨年度ヤフーの利益は落ち込んだが、今年度は底を打って反転する年となる。短期的な業績に一喜一憂しすぎることなく、成長につながる手を確実に打っていく一方で、ヤフーが掲げている2023年に営業利益2,250億円という目標にむけ、増益は確実に達成していきたい。そのためにソフトバンクも全面的に協力していく。