2020年3月期 第3四半期 投資家向け説明会
主な質疑応答

日時 2020年2月7日(金)午後6時~午後7時
登壇者 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
執行役員 財務経理本部 本部長 内藤 隆志
財務戦略本部 本部長 廣野 公一
  • 今後はZホールディングス株式会社(以下「Zホールディングス」)とLINE株式会社(以下「LINE」)の経営統合やその他持分法投資など、純利益が大きく変動する要因があると見込んでいる。現在は配当性向85%程度を株主還元方針として掲げているが、方針を見直す考えは。

    配当性向85%程度をベースに算出した配当予想を毎年5月に発表し、実績に関わらず支払う方針。期中にはキャッシュの支払いを伴う案件、伴わない案件など、一時的な要因を含めさまざまなことが発生する可能性はあるが、安定配当をしたいという方針に変更はない。

  • 来期以降の5Gに関する設備投資計画について教えてほしい。4Gに割り当てられた周波数帯を5Gに転用することが可能になるようだが、その影響は。

    総務省に提出している5G基地局の開設計画に比べ、5割方前倒しをするように進めている。今年3月末に5Gサービスを開始するが、2020年中のネットワーク展開は限定的になる。来年2021年は重要な年になるので、4G周波数帯の5G転用を含め、今年の準備を怠たらないようにする。

  • 短期間でLINEとシナジーが得られない場合、経営統合により純利益にマイナスの影響が出てしまうが、考え方は。

    改めて5月に考えを発表したい。LINEは2019年度赤字であり、2020年度について厳しい見方をしているアナリストもいると聞いている。また、LINEは業績予想を出していない。LINEとLINE事業を直接所有することになるZホールディングスの考え方を考慮しながら、当社の考え方を示していきたい。いずれにしても、当社は継続的な増益と安定的な配当にこだわりをもっている。

  • 持分法投資損益のうち、PayPay株式会社(以下「PayPay」)の影響は大きいが、例えばWeWork Japan合同会社やOYO Hotels Japan合同会社など、その他のジョイントベンチャーや新規ビジネスの今期第3四半期および今後の貢献度合いについて教えてほしい。

    PayPayは百億円の単位で影響があるが、その他は十億円の単位、うち多くはその下の方の規模感。持分法投資損益全体に対し、PayPay以外の新規ビジネスの影響は限定的である。一方、各ビジネスがいつ黒字化を図れるかが重要なテーマになる。
    WeWork Japan合同会社はどこまで拡大をするかで、黒字化の時期が変わってくる。物件ごとの稼働率は悪くなく、ある程度の拡大を進めているため、黒字化はもう少し先になる。OYO Hotels Japan合同会社はまだこれからだが、契約関係やビジネスモデルの見直しが進んできている。一方、連結業績に対して、驚くような規模ではない。

  • PayPay以外のジョイントベンチャーや新規ビジネスにより、来期の税引前利益はどれほど押し上げられるのか。

    来期はまだマイナスの影響であり、順調にいけば今期並みか多少増益要因になる。全体の利益計画は5月に発表する予定である。

  • 来期の業績について、各要素の方向性について教えてほしい。通信収入については、割引前ARPUが低下するとともに割引ARPUも縮小し、費用は減少する、という考え方か。

    全体の計画は5月に発表するが、来期についても、成長と株主還元の両立を目指していく。成長は利益を増やすことと考えており、増益にこだわっている。コンシューマ事業については、契約件数が順調に推移する一方、ARPUは今期に比べるとプレッシャーが強くなる。獲得費用はIFRS第15号による償却のメリットが出てくるため、プラスの影響を見込み、コンシューマ事業全体で増益、法人事業は利益倍増を目指しており特殊要因なしに利益貢献することを期待している。ヤフー事業はさまざまな準備が進んでおり、伸びを期待したい。

  • 負債調達に占める、社債の位置づけは。また、社債市場との関わり方への考えは。

    社債発行の機会をいただき、条件も良いと期待しているため、今後もできるだけ増やしたいと考えている。
    当社は負債の額が大きいため、流通市場を含め、社債市場とは長期的に、安定的にコミュニケーションを図り、残高を確保していきたい。現在は間接金融が大半であり、短期的な資金調達が多いため、長期の社債は魅力的、かつ補完的であり、重要な調達手段になる。

  • 財務に関する重要指標(KPI)は。

    ネットレバレッジ・レシオ(純有利子負債÷調整後EBITDA)は、現状の2.5倍前後は適正水準であるが、改善を図っていきたい。そのほか、フリー・キャッシュ・フローを創出することが重要であり、配当支払いを除いて千数百億円残るような水準を目指す。Zホールディングスの子会社化やZホールディングスとLINEの経営統合の件で投資があったが、財務の改善を図っていくことが基本的な考え方である。

  • ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)とZホールディングスの協業について、特にメディア事業での今期第3四半期の成果および今後の見込みについて教えてほしい。

    兄弟会社と親会社は違うと感じている。兄弟会社の場合、利益やコストの割合をどのようにするかという議論になるが、親会社と子会社の場合、ともに伸びるという論点になる。当社としても営業リソースをつぎ込んでおり、当社の人員が入ることで、Zホールディングスの力をさらに引き出したいと考える。また、今期第3四半期について、Zホールディングスは主にコスト削減により増益となっており、親会社として今後も利益を出してほしいと期待している。

  • PayPayに対し、ソフトバンクとZホールディングスがそれぞれ追加出資をし、所有割合が51%になったとのことだが、積極的にプロモーション活動をするなかで、今後も資金が必要になると考える。

    PayPayに対し、2019年12月に少額の増資を行った。PayPayは金融事業を営んでいるため、資本を維持する必要があり、短期的な対応を行った。一方、キャンペーンも拡大しているため、次の資金調達についてもさまざまな議論を行っている。

  • 端末関連費用に関して、端末販売の粗利の減少や繰り延べられている費用のキャッシュメリットなどについて教えてほしい。

    端末販売の補助が減少し、キャッシュの面では百億円の単位で効果が出ている。償却によって会計上の効果が発生する時期はずれるが、今後メリットが生じる。また、端末分離プランを提供しているなか、端末価格を2019年9月に下げたが、端末販売の補助の減少による効果と相殺できると考える。

  • 端末分離プラン導入による、純増数、獲得数、解約率などへの影響は。

    2019年10-11月は、9月の消費増税前の駆け込みなどの影響があり、新規獲得が厳しかった。一方、解約率が大きく改善し、純増数は一定数伸びた。当社の強みとして、MNOから流出するユーザーを“ワイモバイル”が獲得できている。“ソフトバンク”ブランドから流出するユーザーについても同様に“ワイモバイル”でプロテクトできているため、契約数全体の増加が図れている。一方、“ソフトバンク”ブランドは「スマホデビュープラン」や家族割引、大容量プランなど、ブランドの特長を生かしてユーザーを獲得できているため、「LINEモバイル」を含め、3本柱でスマートフォン契約数は伸びている。

  • 以前はソフトバンクが強みとしていた端末販売の補助が限定されているなかでも、ネガティブな影響はなく、引き続き競争力は維持しているということか。

    大きなところでネガティブな影響はない。
    今後も、政府の「キャッシュレス・消費者還元事業」などに後押しされ、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行は進むとみており、ユーザーの相談に乗る「スマホアドバイザー」の配置を強化するなど、体制づくりに注力していく。

  • 足元では企業統合や再編などで、事前に想定していなかったキャッシュアウトが発生している。そのため、前述のフリー・キャッシュ・フローから配当を差し引いた千数百億円の水準で企業統合によって増える前の負債の水準を取り戻すには4年程度かかることが見込まれる。ネットレバレッジ・レシオについても、調整後EBITDAの伸びが想定以上となれば、前倒しでレシオを落とすことが可能になる。これら財務のターゲットの達成時期は、いつ頃を見込んでいるのか。

    ネットレバレッジ・レシオは2.5倍前後であり、早急に対策が必要な状況ではないと考える。一方、毎年一定の返済が進められる体制を構築する必要はある。財務改善と成長の機会とのトレードオフは常に慎重に考えなければいけない。
    現状、自己資本が若干弱くなっており、反面ROEが50%近くと高い水準のため、バランスシートをみながら財務戦略を検討していきたい。経営として、常に選択肢を持てる状態を維持したいと考えている。

  • EBITDAと比較すると純有利子負債の水準が高すぎるため、バリュエーションの面でプレッシャーが強いのではないかと考える。今後は株式会社ZOZOなどの案件が収穫フェーズに入るため、純有利子負債を減らし、財務改善を図るという考え方か。

    大きな方向感はそのとおり。