ESG説明会 主な質疑応答

日時 2025年3月7日(金)
午後4時~5時30分
登壇者 ソフトバンク株式会社 執行役員 データ基盤戦略本部 本部長 兼 デジタル社会基盤整備室 室長/
SB Intuitions株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 丹波 廣寅
ソフトバンク株式会社 執行役員 人事本部 本部長 兼 総務本部 本部長 兼 Well-being 推進室 室長 源田 泰之
ソフトバンク株式会社 CSR本部 本部長 兼 ESG推進室 室長 池田 昌人
ソフトバンク株式会社 財務戦略本部 IR室 室長 藤原 万里子
  • AIデータセンターの電源の確保についての考え方は?

    当社としては、再生可能エネルギーが確保できる場所を今後のAIデータセンター構築の候補地としていく。日本国内で大量の再生可能エネルギーを確保できる場所は限られているほか、広い用地を確保することも必要となる。分散型のAIデータセンターをどのように構築していくのか、政府や関係省庁と議論しながら対応していく。

  • AIエージェントの登場により、人が担ってきた作業の多くが代替される中で、経営戦略と人事戦略がどう連動し、人事のポートフォリオをどう再構築していこうと考えているか。

    当社では、生成AIなどの新しいテクノロジーを活用し、既存事業の効率化と生産性向上を図り、その上で人材の再配置を行っている。実際に、中長期の経営戦略と連動する形で、次世代社会インフラや新規事業に人材を再配置しているため、当社単体の社員数は微減傾向にある。具体例としては、クラウド事業の強化を図るため、「育成型ジョブポスティング」を行い、140人の異動を行った。「育成型ジョブポスティング」とは、3カ月から半年かけてリスキリングを行った上で、個人の習熟度に合わせた配属を行う仕組み。今後もAIエージェントなどの活用で業務の効率化を進めるが、単に人を減らすのではなく、リスキリングを通じてデータセンター事業やグローバル事業に人材を再配置していきたい。

  • ソフトバンク(株)が考える人的資本経営は、制度面も含めて産業界にどのような影響を与えると考えているか。

    まずは「クリスタル・インテリジェンス」(個々の企業の全てのシステム、データを安全に統合し、当該企業専用にカスタマイズされた企業用最先端AI)を当社内で徹底的に活用し、業務の効率化を図る。そして、具体的にどういった業務がどれだけ効率化できるかを把握し、新たに人が担うべき業務を整理していく。この実践を通じて蓄積した知見を、大手企業向けに業務改革のノウハウとして提供し、産業界全体の効率化と生産性向上に貢献していきたい。

  • 「クリスタル・インテリジェンス」と、SB Intuitions(株)が開発する国産の大規模言語モデル(LLM)のすみ分けは。

    当社は複数のLLMを顧客のニーズに応じて提供する「マルチモデル戦略」を取っている。SB Intuitions(株)が開発する国産のLLMも、他社開発のLLMと同様に取り扱い、顧客のニーズに応じて提供していく予定。
    「クリスタル・インテリジェンス」はOpenAIのLLMを軸に構築される商品で、「SB OpenAI Japan」(OpenAIとの合弁会社)の下で販売される予定。ソフトバンク(株)グループとしてどのようなAIを目指すべきなのかなど、OpenAIから学べることは多いと考えている。引き続き「AIを最も上手に使いこなす会社」を目指して取り組んでいく。

  • 「クリスタル・インテリジェンス」を使ってみた率直な感想は。

    「クリスタル・インテリジェンス」はまだ使っていないが、OpenAIの発表した「Deep Research」と「Operator」というサービスを使ってみた限り、Reasoning(論理的推論)が今後のAIの進化の方向性の1つであると考える。例えば、一定期間、Reasoningを動かせば、「Deep Research」が行っているような深い思考・推論をAIが行えるという認識を持った。ただし、本当のAIエージェントを作るにはさらなる進化が必要だという認識である。また、「Operator」の「Browser-use」機能は非常に評価できる。多くのアプリケーションを、ブラウザベースの学習で操作できることを示しており、こちらも高く評価している。

  • 「クリスタル・インテリジェンス」の導入にあたって必要となるAI計算基盤は、北海道苫小牧や大阪府堺のデータセンターでOpenAIが整備していくのか。それとも、「Stargate Project」で調達するデータセンターを含めてAI計算基盤を確保していくのか。

    現時点では、どのように実現するかをOpenAIと協議中。「クリスタル・インテリジェンス」の当社利用や、「SB OpenAI Japan」を通じた日本企業への販売のためには、データを日本国内で安全に管理し、AI計算基盤を国内に置く必要があると認識している。

  • 「DeepSeek」のようなオープンソースのAIモデルを、ソフトバンク(株)はどのように評価しているか。

    「DeepSeek」が発表した内容はSB Intuitions(株)のLLM開発にとって有用であると考えている。従来は、AIの事後学習のために、人が作成したデータを用いてファインチューニングするやり方を取っており、時間とコストを要していた。しかし、DeepSeekが発表した論文によると、彼らはAIによって作成されたデータを使用してAIの強化学習を行っているようだ。特に、数学のように答えが1つに決まるような論理推論が強化でき、高く評価できる。SB Intuitions(株)でも、AIでAIを学習させる取り組みを進めてきたが、方向性に間違いはなかったと受け止めている。

  • オープンソースのAIについて、ビジネスモデルをどのように捉えているか。

    オープンソースのAIの活用は選択肢の1つになる。「DeepSeek」の例は、ある程度の大きさのLLMを構築すれば、強化学習やチューニングにかかる費用を抑えられそうだということを示した。AIモデルの中身が分からなくてよい場合や固定的な用途に使う場合は、コストを抑えながらチューニングして使うという選択肢も取り得る。
    ただし、基盤となるLLMの構築や新機能の追加には依然として費用がかかるため、継続して研究を進めていく必要がある。特に新しい機能を追加する場合は、AIモデルを構築し直すような作業量となってしまうため、自前でLLMの開発を行うことが選択肢に入る。

  • AIの学習と推論のために、それぞれどれくらいのGPUが必要になると考えているか。

    いずれも具体的な数は公表していない。当社が目指すLLMのパラメーター数が大きければ、AIの学習のために必要となるGPUは大規模になる。学習に使うGPUが大規模・高性能になれば、AIの学習のために必要となる時間を短くすることができる。
    推論のために必要となるGPUの量は、今後のAIのユースケース次第で大きく変わると見込んでいる。AIからのレイテンシー(反応速度)を短くしようとすると、推論に使うGPUを置くデータセンターを、ユーザーの近くに分散配置しなければならないと想定している。

  • いま調達を計画しているGPUでは足りず、追加のGPUの調達が必要になるのか。

    自社で購入したGPUは、国の補助金を活用しているので、日本の研究所や大学を含めた国内でのAI関連の研究開発に利用するAI計算基盤として構築している。「SB OpenAI Japan」もしくはOpenAIのGPU利用は商業目的であるため、日本国内で必要となるAI計算基盤は、ソフトバンク(株)が確保したものの外数として議論すべきだと考えている。

  • 北海道苫小牧や大阪府堺のAIデータセンターに置かれるGPUはソフトバンク(株)グループのAIの学習に使うのか。

    当社グループだけでなく、日本の企業が必要とするGPUを設置する見込み。AIの学習だけでなく、推論にも使えるような環境を構築したいと考えている。OpenAIが日本でAI計算基盤を必要とするなら、ソフトバンク(株)がAIデータセンター事業者として、必要なインフラを提供することもあり得る。

  • NTTがオールフォトニクス・ネットワークとして「IOWN」の構想を打ち出しているが、今後ソフトバンク(株)の「All optical network」と連携するのか。

    互換性の細かな議論はしていないと認識しているが、どちらの構想も「光電融合」の技術をベースにしており、大きな意味では共通の方向性で進んでいるという理解である。

  • 「ガバメントクラウド」などの政府のクラウド戦略について、ソフトバンク(株)としてどう考えているか。

    「ガバメントクラウド」は、政府や自治体がアプリケーションサービスをどのように提供するのかという点に主眼を置いたものだと理解している。今後、機微な情報をクラウド・AIでどう取り扱うべきなのか、社会の中で生まれてくるIoTなどのデータをどう管理するべきなのかを考えたときに、それらは「ガバメントクラウド」の範疇ではなくなると捉えている。「ソブリンクラウド」という考え方が必要になるという認識であり、国とも議論している。「ソブリンクラウド」を支える「ソブリンデータセンター」と、「ソブリンAI」の在り方は個別に議論されているが、一体として捉えることが大事ではないかと考えている。

  • スマートビルについて、ビルOSの標準化によってデータの品質を確保し、サービスを連携させることはできるのか。

    データ連携は依然として難しいテーマである。今後、複数の企業や団体が協力してデータ連携基盤を構築することが必要であると認識している。異なるデータのフォーマットを正確に変換できるような「コネクタ」が必要であり、データの正確性を保証する認証方式も必要になるだろう。国とも協議しながら進めていくことが重要だと考えている。