2025年3月期 第3四半期
決算説明会 主な質疑応答

日時 2025年2月10日(月)
午後4時~5時30分
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • ソフトバンク(株)がOpenAIと提携する意義や、既に提供しているサービスとの棲み分けについて教えてほしい。

    当社は、さまざまな生成AIを取り扱い、最も適した方法で各企業の変革を実現する事業会社だと捉えている。そのため、OpenAIと合弁会社(SB OpenAI Japan)を設立することは必然だったと思う。「クリスタル・インテリジェンス」は、これまでの生成AIとは次元が異なる自律型のAIとなる予定であり、こうした先進的なAIを日本の企業にいち早く導入できれば、日本の未来をより明るくできると考えている。
    これまでも、マイクロソフトが提供する「Microsoft Azure」や Google が開発した「Gemini」などを取り扱い、顧客の意向を踏まえた最善な提案を行うことで、日本企業の成長を促してきたが、それは継続していく。今は可能性を絞らず、積極的にAIに取り組んでいく段階。

  • 2025年2月3日に発表したプレスリリースの中で、「ソフトバンクグループ(株)は、OpenAIのソリューションを全ソフトバンクグループ各社に展開するために年間30億米ドル(約4,500億円相当)を支払い」との記載があるが、ソフトバンク(株)はどのくらいの費用を負担するのか。また、その支払い先はどこで、業績への影響をどのように見込んでいるのか。

    当社は、OpenAIのソリューションをPay for Use(従量課金)で利用する予定。その場合、その費用に紐づくリターンが得られる構造になる見込み。当社にとって、「得るものはあっても失うものはない」と言える取引になったと捉えている。
    支払い先については、「SB OpenAI Japan」に支払うことで話し合いが進んでいるが、まだ議論すべき点が残っている。
    2025年度の業績に与える影響については、プラス影響はあってもマイナス影響はないと考えており、引き続き連結営業利益1兆円の大台を意識して取り組んでいきたい。
    OpenAIは千数百人の会社だと聞いており、その人的リソースは世界中で取り合いとなっている。今回のパートナーシップは、そのリソースを優先的に使わせてもらえる大きなチャンスだと捉えており、今後に期待していただきたい。

  • ソフトバンク(株)が「クリスタル・インテリジェンス」を展開するにあたっての強みは。

    まず、OpenAIの「クリスタル・インテリジェンス」の優秀さが強みであると考えている。現在、OpenAIを超えるAIエージェントは見当たらず、その強みに期待している。
    加えて、自社で「クリスタル・インテリジェンス」を導入し、徹底的に使っていくことで得られる知見が強みになる見込み。導入効果を実証した上で、顧客企業に提案していくアプローチを取る予定。このアプローチは、iPhone/iPadが出たばかりの頃に取ったものであり、全社員にそれらを持たせることで企業がどのように変革されるのかを自ら試し、効果を実証したことが法人ビジネスの飛躍に繋がった。

  • 「クリスタル・インテリジェンス」を顧客企業に導入する場合の費用や導入時期は。

    費用の金額は決まっていない。まずは当社で導入し、企業変革の効果を測定し、得られるリターンに応じて費用を検討していきたい。OpenAIの人的リソースに限りがあるため、まずは収益の中心となる大企業から、2025年度中に始めることを想定している。しかし、中堅・中小企業や自治体からも引き合いがあるため、将来的には導入いただけるように取り組みたいと考えている。

  • 「SB OpenAI Japan」の設立時期や、1,000名規模の出向について、詳細を教えてほしい。

    設立時期については最終的な議論中だが、半年以内には設立できるのではないかと考えている。設立までの間に、「クリスタル・インテリジェンス」の導入方法をエンジニア同士で話し合い、導入に向けたデータ整理を行っている。
    1,000名規模の出向に関しては、当社からだけではなく、グループ会社からも人を出すことを予定している。エンジニアと営業を中心に集めることを検討している。

  • 「クリスタル・インテリジェンス」は日本に限定したサービスか。海外展開や「SB OpenAI Japan」の位置付けについても教えてほしい。

    「SB OpenAI Japan」は、国内の企業に対して「クリスタル・インテリジェンス」を独占的に販売する会社。販売代理店のような位置付けではあるが、独占権を持つことにこだわって交渉した。現時点での独占範囲は日本のみだが、将来的な海外展開についても議論している。当社の次なる目標は「Beyond Japan」であり、ぜひ日本で成功したモデルを海外に展開したいと考えている。

  • ソフトバンク(株)が独自で国産の大規模言語モデル(LLM)を作っていくと期待をしていたが、OpenAIとの取り組みが中心になっていくのか。

    当社は複数のLLMを顧客のニーズに応じて提供する「マルチモデル戦略」を徹底的に追求していく方針であり、国産のLLMの開発は継続する考え。「クリスタル・インテリジェンス」の開発で、OpenAIから学べる点は非常に多くなると期待している。また、OpenAIのサム・アルトマンCEOも素晴らしい経営者であり、彼らとの連携はメリットが大きい。今後も独自のLLM開発とOpenAIとのパートナーシップを両立させ、さらなる成長を目指していく。

  • ソフトバンク(株)のAIデータセンターの取り組みと「Stargate Project」との連携について教えてほしい。

    当社が進めている分散型AIデータセンター構想は、日本の企業がAIを導入しやすい環境を整えることを目的に、10年計画で進めているもの。当初の計画に、「Stargate Project」は含まれていなかったが、堺AIデータセンターの構築に際して、さまざまな議論を行っている。
    OpenAIが日本国内でAIデータセンターを必要とする場合、土地や建物、電力などのインフラを当社が提供し、「Stargate Project」がGPUなどを持ち込むことが想定される。実現すれば、当社のAIデータセンターの稼働率が高まることになると見込んでいる。

  • 「DeepSeek」についてどのように評価しているか。また、ソフトバンク(株)の事業戦略に影響が及ぶことはあるか。

    従来は、AIの事後学習のために人が作成したデータを用いてファインチューニングするやり方を取っていた。しかし、DeepSeekが発表した論文によると、彼らはAIによって作成されたデータを使用して強化学習を行っている模様。特に、数学のように答えが1つに決まるような論理推論に強いという特長があり、高く評価できると考えている。生成AIをさらに低コストで開発できる可能性が出てきたと考えているので、良いところはすべて取り入れたい。事業に与える影響についてはポジティブだと捉えている。長期ビジョンの実現に向けた取り組みに影響はない。

  • 資金需要として、1兆パラメーターを構築するためのGPU投資とAIデータセンター投資のどちらが大きいか。

    当社は現在6,000基のGPUを保有しており、中期経営計画期間中に、1万基まで増加させる計画としている。現時点で、それ以外のGPUの追加購入は当面計画していないが、今後の「Stargate Project」との議論の中で需要が出てきた場合には、費用対効果を見ながら意思決定していく。
    AIデータセンターの投資については、堺は既存の建物を転用してデータセンター化する計画であり、通常より低コストで構築できる可能性がある。また、苫小牧については現在造成工事が進んでいる。ここでは広大な土地にAIデータセンターの建物を建設するのではなく、ニーズに合わせ、コンテナベースで増設していく考え。そのため、大きな資金需要が発生するとは想定していない。

  • 現状の北海道苫小牧と堺に構築するAIデータセンターで賄えそうということか。

    1兆パラメーターの国産LLM構築のためには十分だと考えている。ただし、今後日本企業が一斉に推論系サービスを使い始めるのであれば、インフラを追加で整備する必要がある。以前はデータセンターを一つ構築するのに4~5年かかっていたが、現在はコンテナ型のデータセンターの技術が飛躍的に向上している。この技術を上手く活用できれば、ニーズに応じて段階的に投資できるのではと考えている。

  • (株)NTTドコモが提供する「ahamo」の料金プランに対抗したが、その勝敗についてどのように評価しているか。また「ソフトバンク」ブランドへの移行が進む中で、「ワイモバイル」の30GBの価格帯の競争と「ソフトバンク」ブランドの「ペイトク」への移行はどのように進んでいるのか。

    勝敗を説明する指標は色々とあるが、当社のコンシューマ事業が増収増益できていることが答えだと思う。10月の「ahamo」の料金プラン変更を受けて、11月に「ワイモバイル」と「LINEMO」の料金プランを変更した結果、MNPの勝敗の状況は9月以前に戻っている。
    あらゆる物価が上がっている中で通信業界だけが値下げの議論を続けている状況。コスト削減の努力は続けているが、無い袖は振れないので、コスト増を理由とした値上げは許容しづらい状況。取引先の中堅・中小企業の社員の皆さまのベースアップがなされているのか心配しており、業界の正常化を進めていきたい。
    「ワイモバイル」から「ソフトバンク」へのブランド移行については、「ペイトク」が貢献していると感じている。まずは「ワイモバイル」で顧客基盤を拡大し、時間の経過とともに「ソフトバンク」に移行してもらえるよう促していきたい。

  • 通信料金の値上げについては検討しているか。

    携帯事業のコストとして、電気代は大きな要因であり、最近は右肩上がりで増加している。加えて、従業員や取引先もいるのでインフレ対応も考えていかなければならない。これまでさまざまな方法でコストを吸収してきたが、限界が近づいている。日本の通信業界は、これまで世界をリードしてきたポジションだが、このままでは「ただ料金が安いだけ」となってしまうので、本当に危惧している。値下げ一辺倒では持続可能な事業構造にならないので、物価の上昇に応じた値上げはどこかでしなければならないと感じている。

  • 今回のPayPay銀行(株)・PayPay証券(株)の取引で、ファイナンス事業の大まかな再編は終えたという理解でいいか。

    大枠の再編は終わったと考えている。PayPay(株)は決済領域で良いポジションにあるが、加盟店向けサービスや金融サービスの領域において、まだ成長の余地があると考えている。現時点では目指す山の一合目や二合目にいるあたりだと感じているので、目先の勝敗にとらわれず、PayPay(株)自身が目指す姿を実現してほしい。

  • AIデータセンターのための電力確保の取り組みはどのように進めていくのか。

    GPUを稼働させるために必要な電力として、苫小牧で300メガワットを確保している。また、堺でも最大250メガワットを確保する予定。以前に比べて、データセンターの電力需要が大幅に増加しており、電力不足に対する危機感を常に持っている。特定の地域では電力不足による停電などの懸念があり、大規模なデータセンターの展開が難しい状況。当社としても、将来的には再生可能エネルギーの発電事業にも取り組みたいと考えている。

  • 米トランプ政権の関税政策の影響をどう見ているか。

    政治に関するコメントは控えるが、当社の事業が直接的に影響を受けることはないと想定している。
    2018年の上場時は米中関係で逆風の環境であったが、今は孫(ソフトバンクグループ(株) 代表取締役 会長兼社長執行役員)とトランプ大統領の関係が良好であり、追い風の時期だと捉えている。当社としては、この環境を生かしてさらなる成長に繋げていきたい。

  • フジテレビを巡る一連の問題について、今後の方針やCMの再開時期は。

    CMの差し止めは、一連の報道を踏まえて総合的に判断した。第三者委員会が立ち上がったので、その状況を注視しながら、今後の対応を検討していきたい。