2025年3月期
決算説明会 主な質疑応答
日時 | 2025年5月8日(木) 午後4時~5時25分 |
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登壇者 | ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一 ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉 淳 ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦 |
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(株)NTTドコモ(以下、ドコモ)とKDDI(株)(以下、KDDI)が値上げとなる新料金プランを発表したが、受け止めは。また、今後どのような付加価値をつけるかなど、対応策や戦略について教えてほしい。
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両社が先行して値上げを発表したのは当社にとって好機だと捉えている。通信業界の健全な成長のためにも価格の見直しが必要なタイミングであり、われわれも同じ方向に進みたいと考えているが、時期については最適なものを検討していく。インフレが社会問題となっている中で、通信業界は値下げが続いている状態であり、構造的な課題であった。これまでコスト削減などの企業努力を続けてきたが、そろそろ限界に達しつつある。他社と同様のサービスは作れるが、まずはお客さまに満足いただけるサービスをしっかりと考え、戦略を練った上で行動に移したい。現時点でどのような付加価値をつけようとしているのかは回答を差し控える。
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他社では、メインブランドに付加価値サービスを付けて値上げする一方、サブブランドや低価格帯のプランは縮小していく方向である。この方向性について、どのように考えているか。
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今後もさまざまなユーザーのニーズに対応できるサービスを提供し続けていきたい。“ワイモバイル”を通じて多くのユーザーを獲得し、“ソフトバンク”ブランドへの移行(アップセル)を促している。実際に、“ワイモバイル”などから“ソフトバンク”ブランドへの移行収支はプラスになっている。
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例年、第4四半期は春商戦で解約率が高まる傾向にあるが、2024年度は通年でみても高止まりしている。何か特別な要因があるのか。
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“ワイモバイル”と“LINEMO”で、SIMのみを契約し、短期で解約するユーザーが一定数いるのが要因。
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英Opensignalの「モバイル・ネットワーク・ユーザー体験レポート」でKDDIが最も高い評価を獲得したが、受け止めは。
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残念ながらKDDIには及ばなかったが、競争は業界の発展に繋がることであり、良いことだと捉えている。次回は必ず巻き返し、KDDIの松田社長の脅威となる存在になりたい。
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株主還元の強化は、具体的にどのような条件が整ったら検討するのか。
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インフレ環境下で配当を維持するということは、実質的な減配に近いのではないかと考えたが、現在はAIへの先行投資を優先した方が、中長期的には企業価値の向上に繋がると見込んでいる。先行投資を実行しつつも、想定を上回る利益が出た場合には株主還元も選択肢に入れて検討したい。次期中期経営計画では、増配や自己株式の取得を含めた株主還元の実現についても考えていきたい。
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株主還元の強化のためには、ソフトバンク(株)単体の利益が上振れる必要がある。2025年度の単体純利益が上振れた場合は2025年度も還元を強化する方針なのか。
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2025年度も含め、単体の純利益が予想以上に上振れた場合は、わずかでも株主還元を強化できないかも考えたい。
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PayPay(株)上場の目的は。また、何を持って「上場準備開始」と言っているのか。
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個人的には少し早いと思ったが、同社の今後の優秀な人材の獲得などのために上場準備を開始したいというPayPay(株)側の意向を聞き、最終的には賛同した。当社も上場を機に成長することができたので、PayPay(株)も成長できるチャンスにしてもらいたい。また、上場は同社の企業価値の顕在化に繋がると考えている。上場準備の開始に際して、今後は海外展開を期待していると同社に伝えた。
これまで上場に向けて、コーポレート・ガバナンスの強化などに取り組んできた。現時点ではコメントを控えるが、上場に向けて具体的な議論が始まったと捉えていただきたい。
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上場市場は米国を含めて検討しているのか。
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現時点でコメントを控えるが、米国での上場を選択肢に入れることは合理的な判断であると考えている。
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PayPay(株)が上場すると、ソフトバンク(株)の重要なセグメントの1つがコントロールできなくなり、もったいないように思う。今後の戦略をどのように考えているのか。
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先述の通り、個人的には上場は少し早い、まだ手の内に置いておきたいという思いもあった。一方、同社はソフトバンクグループ(株)、ソフトバンク(株)、LINEヤフー(株)が共同で出資してきた経緯を持つ会社なので、いつかは上場すると覚悟していた。戦略面で言えば、やりたいデジタルサービスやAIサービスなどを常々語り合っている仲間であり、今後も同じグループとして連携していきたいと考えている。
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先行投資の1,000億円の内訳を教えてほしい。GPUサーバーの減価償却の他に、開発コストがかかるのか。
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1,000億円の内訳が全額細かく決まっているわけではない。社長就任時から、いつかは1,000億円規模の研究開発費を持つ「テックカンパニー」になりたいと取締役会で話してきたが、ようやくその時期が来たと捉えている。余剰が発生した場合は、利益の上振れにできれば良いと考えている。今後も同水準の研究開発費を持つ構造で経営していきたい。
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次期中期経営計画の考え方を教えてほしい。
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現時点では具体的な数字をお伝えできないが、投資しているAIデータセンターや生成AIなどを具体的な数字に反映させ、より成長する姿をお見せしたいと考えている。
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自社開発の日本語国産大規模言語モデル「Sarashina mini」の商用利用については、「ChatGPT」などのような対話型サービスの提供を想定しているのか。また、コンシューマ向けへの提供が中心になっていくのか。
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コンシューマ・法人に関わらず提供する予定。まずはチャット型のサービスとして提供する。将来的には、動画生成なども利用できるように準備を進めているが、全てを一度に公開する予定はない。
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AIエージェントはどのように収益化していく予定なのか?
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今年中に収益化に関する具体的な計画を発表する予定はない。生成AIの商用利用はまだ初期段階であり、これから世の中の中心的な技術として発展していくと見込んでいる。
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日本電信電話(株)(以下、NTT)による(株)NTTデータグループ(以下、NTTデータ)の完全子会社化についての感想は。
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過去の経緯を振り返ると、ドコモもNTTデータも公正競争を保つためにNTTから分離されたと認識している。それにも関わらず、再び一つになろうとする動きがあり、よほど「大NTT」に回帰したい人たちがいるのだろうと思う。NTTが今後海外展開を進めるにあたり、NTTデータのプラットフォームを活用したい気持ちは理解できる。ただ、完全子会社化が最適なのかは疑問だ。NTTデータの佐々木社長は評価している社長の一人だが、その良さが半減するのではないかと心配している。また、NTT法については廃止にならなくて本当に良かったと改めて思っている。NTT東西の局舎や伝送路などをNTTグループのためだけに使われると他の事業者は競争にならない。NTT法の中でしっかり競争できる環境を残してもらいたい。
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NTTデータが、米OpenAIの提供する「ChatGPT Enterprise」の販売代理店となったが影響は。
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NTTデータが米OpenAIと締結した契約は、標準版の「ChatGPT Enterprise」をそのまま販売するリセラー契約だと認識している。「クリスタル・インテリジェンス」とは全くの別物で、影響は一切ない。我々は、より高度なAIエージェントプロダクトの開発を行っている。
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スマートフォンと衛星との直接通信サービス(モバイルダイレクト)について、現状の考えは。
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来年、自社サービスとしてモバイルダイレクトの提供を開始する予定。サービスの有償・無償は検討中。連携する具体的な衛星事業者名は控えるが、準備は整っている。
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NTTが来年HAPSの提供を開始するが、ソフトバンク(株)の状況は。
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現在、国土交通省と協議を行っている。協議が完了次第、早期にサービスを開始したいと考えている。
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米OpenAIが営利企業化を断念したと発表したが、「クリスタル・インテリジェンス」の進捗に影響はないか。
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「クリスタル・インテリジェンス」を進めていく上で問題はない。急速に進化するAIに対して安全性の取り組みを強化するという考え方は非常に理解できるため、彼らの今後の動きを見守っていく。
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ワット・ビット連携官民懇談会の議論をどのように考えているか。また、ソフトバンク(株)が進めている分散型AIデータセンター構想にもたらす影響は。
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私自身も議論に参画している。ワット・ビット連携とは、電力線と通信ケーブルを一緒に敷設し、未来社会に向けて電力インフラと情報通信インフラの連携を進める取り組み。これを通じて、家庭や企業の使用電力の把握と情報通信の効果的な連携が実現できる。この取り組みは、当社が目指すAIとの共存社会を推進する上で非常に重要だと考えている。
当社がAIデータセンターを建設する場所を探す際に、適した場所があっても電力が不足している、あるいは電力が供給されていても適した場所がない、といった課題があった。ワット・ビット連携により、これらの課題が解消されれば、非常に効率が上がるのではないかと考えている。
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データセンターに関する法整備や規制についてどう考えているか。
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千葉県印西市や三重県志摩市など、海外から海底ケーブルが陸揚げされる場所にデータセンターが集中している。特に印西市のデータセンターについては、電力使用量の増加に伴い、東京全体の停電を引き起こすリスクが指摘されている。地方でも、数十メガワット単位のデータセンターを建設するだけで、その地域が停電する可能性があると言われており、電力の需要と供給をしっかりと管理する必要がある。このような問題を早期に解決するために、法整備や省令などを国側で整えていってほしい。
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次世代メモリーの開発について、ソフトバンク(株)はどのような役割を担うのか。
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当社は、次世代メモリーのメーカーになりたいわけではなく、IP(知的財産)事業として展開することを想定している。これが実現すると今のGPUのパフォーマンスを最大化できる性能を持ったメモリーになる。まずはコア部分のサンプルを開発するスポンサーとなり、2年間で30億円程度を投資する想定である。「Deep Research」のような、ウェブサイトを巡回し情報を収集しながら回答を生成するサービスの普及を見据えると、既存のHBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリー)の性能が今後ボトルネックになるとわかったため、新しいメモリー技術の開発を考え始めた。
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