プレスリリース 2022年

知的・発達障がいのある児童がICTを活用して、
1人で通学経路を路線バスで移動する実証実験を実施

2022年7月5日
国立大学法人 香川大学
ソフトバンク株式会社

国立大学法人 香川大学(以下「香川大学」)とソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、ことでんバス株式会社の協力と四国運輸局の賛同を得て、知的・発達障がいのある児童が安心して公共交通機関を利用できる環境を、ICT(情報通信技術)を活用することで実現する実証実験を、2022年7月4日に実施しました。この実証実験では、ソフトバンクが提供する、困り事を抱える子どもの日常生活や社会活動を支援するアプリ「アシストガイド」を活用し、どのような手順でガイドをすれば、知的・発達障がいのある児童が1人で路線バスを利用して通学経路を移動できるかを確認することができました。なお、この実証実験は、国土交通省が設置した「移動等円滑化評価会議」が目指している、高齢者や障がいのある人などの円滑な移動などに配慮するバリアフリー化促進の趣旨に賛同して実施したものです。

概要

1. 背景

知的・発達障がいのある人の中には、いつもと違う環境になると外出時に全体の見通しが持てず、不安を感じたりパニックになってしまったりするため、1人で公共交通機関を利用して外出することをためらう人がいます。また、多くの公共交通機関では、身体障がいのある人へのサポートについて、ある程度のノウハウの蓄積がありますが、知的・発達障がいのある人は外見からは困難さが分かりにくく、公共交通機関でのサポートが不十分な場合が多くあります。このため、知的・発達障がいのある人が、安心して公共交通機関を利用できる環境の構築が求められています。

このたびの実証実験は、自閉症や知的障がいのある子どもがICTを活用することで本来の能力を発揮できるようにする支援技術や、特別支援教育の分野で先進的な研究に取り組む香川大学と、「アシストガイド」を提供するソフトバンクが、知的・発達障がいのある人が安心して公共交通機関を利用できる環境の構築のため、共同で実施しました。なお、ソフトバンクは、これまでも香川大学教育学部 特別支援教育領域 坂井聡研究室・技術領域 宮崎英一研究室のアドバイスの下、知的・発達障がいのある方に「アシストガイド」を活用していただく可能性を検討し、共同で機能の向上や活用方法の調査、実証実験、普及活動などを実施してきました。

2. 目的

1人では電車やバスに乗れなかった知的・発達障がいのある児童が、「アシストガイド」を活用することによって、見通しを持って1人で公共交通機関を利用して移動が可能になるかどうか、また可能な場合には、どのような手順で実現すればよいのかを確かめることを目的として実施しました。

3. 結果

知的・発達障がいのある児童が「アシストガイド」を活用することで、通常運行している高松市内の路線バスを利用して、高松駅と養護学校を往復する実際の通学経路を1人で移動することができました。香川大学とソフトバンクは、知的・発達障がいのある児童が1人で公共交通機関を利用することに対する不安を払拭することで、知的・発達障がいのある人の就学や就職、余暇における生活の質の向上につなげるため、今回の実験で得られた成果を踏まえ、「アシストガイド」の機能拡充を推進していきます。

「アシストガイド」の実際の画面

「アシストガイド」の実際の画面

実証実験の様子

実証実験の様子

参加者の声

保護者
  • 「アシストガイド」を使うことでいろいろなことができるようになり、子供の世界が広がったと思う。
  • バス以外にも臨機応変に使えるように、継続的に練習をしていきたい。
支援者
(学校の教員など)
  • 「アシストガイド」に登録する情報を、簡潔な文章と分かりやすい写真を用いて整理したことで、児童にとって分かりやすい手順書を作成できた。
  • 児童が、文字と写真を実物と比べながら、手順を確認することができていた。
  • 視覚的な情報の重要さを実感した。

「アシストガイド」について

「アシストガイド」は、ソフトバンクが提供するアプリで、困り事を抱える子どもの日常生活や社会活動を支援します。保護者や支援者は、子どもの「やること」「やりかた」を「アシストガイド」に簡単に登録することができ、子どもは「アシストガイド」で、その日に「やること」を一つずつ順番に確認することができます。実行方法が分からない場合には、その「やりかた」「行きかた」「持ちもの」を「アシストガイド」で視覚的に確認することができます。詳細はこちらをご確認ください。

SDGsの取り組みについて

この実証実験は、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうち、主に目標11に関連するターゲット11.2「公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」への取り組みです。ソフトバンクは、SDGsの課題解決を重要な経営課題と捉え、国際社会が追求する社会課題の解決に貢献することにより、企業価値の向上と持続的な社会の実現に取り組んでいます。今回の実証実験は、ソフトバンクがSDGsで特定する六つのマテリアリティ(重要課題)のうち、「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」というテーマで取り組む活動であり、この活動を通して障がいの有無にかかわらず「誰もが情報へアクセスできる環境の提供」の実現を目指します。ソフトバンクのSDGsの取り組みに関する詳細は、こちらをご覧ください。

[注]
  1. Sustainable Development Goalsの略称で、2015年に国連で採択された、豊かで活力ある未来をつくるため17の目標と169のターゲットを定め、2030年までの達成を目指す世界規模の取り組み。
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