プレスリリース 2023年

次世代リチウム金属電池セルの電池パックを
ソフトバンクが開発、成層圏で動作実証に成功

~既製品の1.5倍以上の重量エネルギー密度439Wh/kgの電池セルでの電池パックを開発、
電池パックの重量エネルギー密度300Wh/kgの実現へ~

2023年3月16日
ソフトバンク株式会社
HAPSモバイル株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、重量エネルギー密度439Wh/kgの次世代リチウム金属電池セル(Enpower Japan製)を使用した成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)向けの電池パックを開発し、HAPSモバイル株式会社(以下「HAPSモバイル」)と2023年1月30日~2月2日に米国において、成層圏での電池パックの充放電サイクル試験を実施しました。HAPSによる通信サービスの実現には、成層圏で動作する高重量エネルギー密度の次世代電池の開発が必要不可欠です。これまで成層圏環境の温度・気圧を模擬した試験環境槽での動作実証を行ってきましたが、今回初めて成層圏での正常な動作実証に成功しました。なお、今回使用したHAPS向けの電池パックは、エナックス株式会社(以下「エナックス」)の協力の下、開発したものです。

リチウム金属電池は、現行のリチウムイオン電池と比べて重量エネルギー密度が高く、充放電時に高い拘束圧をかけることでサイクル寿命が向上することが知られています。そのため、長寿命なリチウム金属電池セルを電池パックに組み上げる際は、拘束機構の導入による部品重量の増加が課題として挙げられています。また、HAPS向けの電池パックは、マイナス約60度前後の極低温の成層圏でも電池セルを正常に動作させるため、温度を一定に保つヒーターや断熱材を組み合わせた温度制御システムを開発する必要があります。

ソフトバンクは、Enpower Japanと共同開発した世界トップクラスの重量エネルギー密度439Wh/kgを誇る次世代リチウム金属電池セルおよび気圧の低い成層圏向けのガスが発生しにくい電解液の開発を行いました。また、エナックスの協力の下で拘束機構やヒーター、断熱材などの電池パックの部材を開発し、各部材の軽量化に成功しました。これにより、現在の市場に出回っている高性能リチウムイオン電池を用いたHAPS向けの電池パックの重量エネルギー密度約190Wh/kgを上回る、重量エネルギー密度300Wh/kgの電池パックの実現に大きく近づきました。

今回開発したHAPS向けの電池パックの充放電サイクル試験を成層圏で実施した結果、マイナス約60度前後の極低温の成層圏でも地上の試験と同レベルの正常な動作実証に成功しました。また、事前に行った成層圏環境シミュレーションの結果との比較を行い、電池パックの保温機能やヒーターの消費電力に大きな差がない点についても確認できました。一方、成層圏で試験をしたことで、成層圏と地上間の制御・通信方法の確立、電池パックを加温した際の熱伝導の地上との差異など、成層圏ならではの現象や課題についても確認できました。今後、実際のHAPSの動力源として、大型電池パックの開発を目指します。さらに、HAPSに加えて、産業用ドローンなどへの搭載も検討していきます。

ソフトバンクは、重量エネルギー密度が高く軽量で安全な次世代電池について、既存のデバイスやHAPSをはじめとする次世代通信システムなどへの導入を見据え、研究開発を推進しています。また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、高性能な電池の実現を目指し、今後も研究開発を促進していきます。

今回の実証内容を含めて、ソフトバンクのR&D部門である「先端技術研究所」のさまざまな取り組みを紹介する技術展「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」を、2023年3月22~23日に開催します。詳細はギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023 公式サイトをご覧ください。また、先端技術研究所が取り組むさまざまな技術領域の解説や、取り組み内容の説明などについては、リニューアルした先端技術研究所の公式ウェブサイトをご覧ください。

エナックスと開発したHAPS向けの電池パック

エナックスと開発したHAPS向けの電池パック
電池パックのサイズ:90.7×144×149.5mm

電池パックに使用したEnpower Japan製のリチウム金属電池セル

電池パックに使用したEnpower Japan製のリチウム金属電池セル

成層圏での動作実証

成層圏での動作実証

協力会社の役割

Enpower Japan:電池セルの供給
エナックス:電池パックの開発

  • HAPSモバイルの名称は、HAPSモバイル株式会社の登録商標または商標です。
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
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