プレスリリース 2025年

5Gでのミリ波スタンドアローンによるFWA通信の実証に成功

~商用ネットワークで下り最大2.38Gbps/上り最大541Mbpsの安定した通信を実現~

2025年10月28日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、5G(第5世代移動通信システム)向けの電波として割り当てられている28GHz帯のミリ波(29.1〜29.5GHz帯)を単独で運用するミリ波スタンドアローンのFWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)通信の実証実験を実施しました。今回実施した実証実験では、商用の5Gネットワークを利用し、横浜市内の施設の屋外に設置したFWA用CPE(Customer Premises Equipment、構内設置機器)を用いて、ミリ波スタンドアローンによる高速通信の実用性を検証しました。その結果、下り最大2.38Gbps/上り最大541Mbpsという高速で、かつ安定した通信の実現に成功しました。

実証実験の背景

現在提供しているミリ波による通信は、EN-DC方式※1(E-UTRA–NR Dual Connectivity)やNR-DC方式※2(NR–NR Dual Connectivity)など、4G(第4世代移動通信システム)やSub6の他の周波数帯を2波以上同時に利用する方式でしたが、今回の実証実験では、下り/上り信号共にミリ波を単独で利用するミリ波スタンドアローンで行いました。

ミリ波は、広帯域大容量通信が可能である一方、直進性が高く電波が届きにくいとされる特性などからエリアを展開しづらいとされ、商用サービスでの利用は限られていました。しかしながらミリ波をさらに利用することで、災害時の対応や、光回線の整備が難しい地域・教育現場・公共施設における高速で、かつ安定した通信環境の実現、社会インフラの課題解決に向けた貢献などが期待されます。

ソフトバンクは、ミリ波の超大容量・超低遅延という特長を最大限に生かすための技術開発と、5Gネットワークによる高速大容量通信の有効活用に向けた取り組みを推進しています。今回の実証実験は、この取り組みの重要な第一歩となります。

実証実験の概要

横浜市内の施設屋上に複数のFWA用CPE(固定無線アクセス向け通信装置)を設置し、実証実験を実施しました。ソフトバンクが商用展開している近くのミリ波(28GHz帯)の基地局に接続し、複数の端末が同時に通信する環境で通信速度と安定性を検証した結果、下り最大2.38Gbps/上り最大541Mbpsという理論値に近い通信速度を確認しました。また、複数の端末による同時通信においても、合計スループットの低下はなく、ミリ波スタンドアローンの構成でも安定した双方向通信を実現できることを実証しました。

特に上り通信では、CPEのビームフォーミング機能と基地局側のマルチアンテナ合成受信機能を組み合わせることで、高次変調※3(64QAM)に加えて2×2 MIMOを安定的に維持することに成功しました。この結果、従来のEN-DC方式やNR-DC方式で見られる4GやSub6側の上り通信品質の影響による変動を抑え、より安定した高速通信が実現することを確認することができました。

なお、今回の実証実験では、既存の商用基地局と通信ネットワークを利用し、特別な中継装置やCPE以外の追加設備はありませんでした。このことから、ミリ波の基地局が整備されているサービスエリアであれば、CPEを設置するだけで、短期間で高速かつ高品質な通信ネットワークを構築できることが確認できました。

また、屋外に設置したFWA用CPEと既存の屋内通信環境を組み合わせることで、屋内で使用するタブレット向けに安定した通信が提供できることも確認しました。さらに、比較対象とした光回線と接続した屋内ネットワークと同等の通信品質が得られ、ミリ波スタンドアローンによるFWAが、光回線に匹敵する高速通信を提供できる有効な手段であることが確認できました。

ミリ波スタンドアローン
ミリ波スタンドアローン

想定されるミリ波のユースケース

  • 自治体・公共施設での即時対応型の通信インフラ
    防災拠点や庁舎間通信網を迅速に構築し、短期間で通信エリアを展開
  • 教育現場での高速通信
    校舎などにミリ波FWAで光回線と同等の通信を提供し、災害時には避難所の大容量通信手段として活用
  • イベント会場やスタジアムでの快適な通信環境
    Wi-Fiとの連携により、混雑時でも快適な大容量オフロード環境を実現
  • 産業インフラの高度化
    工場や港湾などで映像監視や遠隔制御、IoT(Internet of Things)通信を低遅延・高信頼で実現

ソフトバンクは、今後もミリ波の有効利用に向けた取り組みを加速させるとともに、次世代通信技術の発展と持続的な社会価値の創出に取り組んでいきます。

今回の実証実験の協力会社

エリクソン・ジャパン株式会社:ミリ波基地局
京セラ株式会社:ミリ波CPEの提供、実施協力

[注]
  1. ※1
    EN-DC方式(E-UTRA–NR Dual Connectivity)
    LTEを基盤に、5Gミリ波を追加で利用する5G-NSA(ノンスタンドアローン)構成。下り・上りともLTEとミリ波を同時に利用する。
  2. ※2
    NR-DC方式(NR–NR Dual Connectivity)
    5GのSub6帯を基盤に、ミリ波を追加で利用する5G SA(スタンドアローン)構成。下り・上りともSub6とミリ波を同時に利用する。
  3. ※3
    高次変調
    通信速度を高める変調方式の一つで、一度に多くのデータを送信できる。
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
ソフトバンクの通信ネットワークに関する取り組み

ー日常から未来へ、“つながる安心”を全国にー

ソフトバンクは、誰もがいつでもどこでも快適につながる社会の実現に向けて、下記の三つの視点から通信ネットワークの高度化と信頼性向上に取り組んでいます。

  1. 日常がつながる:暮らしの足元を支えるネットワーク
    1. 都市部をはじめ全国各地における5G/4G基地局の整備やAI(人工知能)による電波干渉の最適制御、ビッグデータを活用した通信トラフィック分析を通して、日常の通信品質の向上を継続的に進めています。通信速度の速さだけでなく、快適さを体感できる通信品質を大切にした“つながる安心”をお客さまに提供し、その価値を体感していただくことを何よりも重視して、日々の暮らしを支える安定した通信ネットワークの構築に取り組んでいます。
  2. 非日常もつながる:イベントや災害でも“つながる安心”を
    1. 大規模イベント開催時や災害発生時など、通信需要が一時的に急増する場面でも、移動基地局車・ドローン基地局・可搬型設備の配備や無料Wi-Fiの提供など、全国で臨時の通信対策を実施しています。
      電波が届きにくい環境においても、お客さまが安心してサービスを利用できるよう、安定した通信環境の確保に取り組んでいきます。
  3. 未来のネットワークへ:空・海・山、あらゆる場所で“つながる”
    1. 人工衛星や成層圏通信プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)を活用した非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)により、災害時の通信の迅速な復旧や、山間部や離島などのこれまで電波が届きにくかったエリアへのカバレッジ拡大に取り組んでいます。ソフトバンクが掲げる「ユビキタストランスフォーメーション(UTX:Ubiquitous Transformation)」というビジョンの下、地上のモバイルネットワークとNTNを融合させることで、あらゆる場所・場面でつながり続ける通信インフラの構築を目指します。
      また、AIと人間が共存する社会の実現に向けて、分散型AIデータセンターを中心とした次世代社会インフラの構築を進めていきます。