プレスリリース 2025年

電源不要で透明な「メタサーフェス反射フィルム」で
5Gミリ波の通信エリア拡大を実証

~エリアカバレッジの向上と景観への配慮を両立~

2025年11月12日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、5G(第5世代移動通信システム)のミリ波の効率的な通信エリア拡大・補完を目的に、積水化学工業株式会社(以下「積水化学」)と共同で、電源が不要な透明フィルムで、電波を任意の方向に誘導できる「メタサーフェス反射フィルム」を活用した電波環境改善の効果検証を、ソフトバンクの本社(東京都港区)で実施しました。検証の結果、オフィス内の圏外・弱電エリアにおける電波環境の改善を確認し、エリアカバレッジの向上と景観への配慮を両立できる新たな電波制御技術としての有効性を確認しました。今後は「メタサーフェス反射フィルム」を駅構内や工場、イベント会場などで活用することも視野に入れて、快適な通信品質と景観への配慮を両立する通信ネットワークの実現を目指します。

メタサーフェス反射フィルム(提供:積水化学)
メタサーフェス反射フィルム(提供:積水化学)

背景および効果検証の概要

5Gおよび将来のBeyond 5G/6G(第6世代移動通信システム)に向けた高速・大容量通信のニーズが高まる一方で、ミリ波は遮蔽物の影響を受けやすく、都市部や屋内では圏外や弱電エリアが発生しやすいという課題があります。また、オフィスビルなどでは、景観への配慮や設備スペースの制約から、追加の分配アンテナや中継器の設置が難しいことがあります。

ソフトバンクはこれらの課題に対し、積水化学が開発した「メタサーフェス反射フィルム」を活用して、5Gミリ波の電波改善の効果検証を行いました。

「メタサーフェス反射フィルム」の概要と特長

今回使用した積水化学製の「メタサーフェス反射フィルム」は、電源を必要としないパッシブ構造で、特殊な人工周期構造(メタマテリアル)によって電波の反射位相を制御し、反射方向を自在に変えることができる技術を採用しています。

従来の金属板などの反射体が「入射角=反射角」という正反射の法則に従うのに対して、「メタサーフェス反射フィルム」は微細なパターン設計により、電波を任意の方向へ曲げることが可能です。これにより、電波の死角となるエリアにも効率的に電波を届けることができます。

また、透明で軽量・薄型かつ折り曲げることができる構造のため、壁面やガラス、柱などにも容易に設置することが可能で、通信品質の向上と景観への配慮を両立できます。

主な特長

  • 電源不要なパッシブ構造

    設置が容易で定期的な保守も不要。持続可能な運用を実現

  • 反射方向を自由に制御

    電波を特定の方向へ曲げることができて、死角エリアへの電波到達を実現

  • 透明・軽量・薄型設計

    透明で、かつ曲面やガラスなどへの設置が容易で、景観と調和

  • 通信品質の向上

    高速・大容量通信エリアを拡大

図1. 金属板による正反射とメタマテリアル技術による反射のイメージ
図1. 金属板による正反射とメタマテリアル技術による反射のイメージ

効果検証の概要

今回の検証では、「メタサーフェス反射フィルム」を活用し、正反射するフィルムと偏反射するフィルムをオフィス内の壁面にあるポスターフレームに張り付けて設置することで、フィルムの有無による5Gミリ波の受信電力および通信速度の変化を検証しました。その結果、圏外や弱電となっていたエリアにおいて電波強度が向上し、通信品質が向上することを確認しました。さらに、図2に示すように、基地局からの電波を効率的に反射させるため、正反射フィルムと偏反射フィルムを組み合わせて廊下の壁面に設置したところ、多段反射によって電波を効率的に誘導できることを確認しました。加えて、従来ミリ波の電波が届きにくかった、廊下の奥にあるリフレッシュルーム内に同様の構成を適用した結果、空間全体をエリア化できることも明らかになりました。これらの結果から、正反射フィルムと偏反射フィルムを適切に組み合わせることで、景観を損なうことなく柔軟な電波反射経路の設計が可能であり、オフィスなどの屋内環境におけるミリ波の通信エリアの拡大に有効であることを実証しました。

図2. 効果検証環境のイメージ
図2. 効果検証環境のイメージ
実施場所 ソフトバンク 本社内
周波数帯 28GHz帯(5Gミリ波)
実施内容
  • 「メタサーフェス反射フィルム」をポスターフレームに張り付けて設置
  • 反射フィルムの有無による受信電力・通信速度の変化を検証
  • 正反射フィルムと偏反射フィルムを組み合わせた多段反射の有効性を確認
主な結果 圏外・弱電エリアでの受信電力が向上し、電波環境の改善に成功

今後の展開

ソフトバンクは、今回の検証結果を踏まえ、オフィス環境に加えて、駅構内やイベント会場、スマートファクトリー、物流倉庫など、多様な環境での活用を検討しています。

ソフトバンクは今後も、最先端の通信技術を活用し、「誰もが安心してつながる社会」の実現に向けて取り組んでいきます。

今後の展開
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
ソフトバンクの通信ネットワークに関する取り組み

ー日常から未来へ、“つながる安心”を全国にー

ソフトバンクは、誰もがいつでもどこでも快適につながる社会の実現に向けて、下記の三つの視点から通信ネットワークの高度化と信頼性向上に取り組んでいます。

  1. 日常がつながる:暮らしの足元を支えるネットワーク
    1. 都市部をはじめ全国各地における5G/4G基地局の整備やAI(人工知能)による電波干渉の最適制御、ビッグデータを活用した通信トラフィック分析を通して、日常の通信品質の向上を継続的に進めています。通信速度の速さだけでなく、快適さを体感できる通信品質を大切にした“つながる安心”をお客さまに提供し、その価値を体感していただくことを何よりも重視して、日々の暮らしを支える安定した通信ネットワークの構築に取り組んでいます。
  2. 非日常もつながる:イベントや災害でも“つながる安心”を
    1. 大規模イベント開催時や災害発生時など、通信需要が一時的に急増する場面でも、移動基地局車・ドローン基地局・可搬型設備の配備や無料Wi-Fiの提供など、全国で臨時の通信対策を実施しています。
      電波が届きにくい環境においても、お客さまが安心してサービスを利用できるよう、安定した通信環境の確保に取り組んでいきます。
  3. 未来のネットワークへ:空・海・山、あらゆる場所で“つながる”
    1. 人工衛星や成層圏通信プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)を活用した非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)により、災害時の通信の迅速な復旧や、山間部や離島などのこれまで電波が届きにくかったエリアへのカバレッジ拡大に取り組んでいます。ソフトバンクが掲げる「ユビキタストランスフォーメーション(UTX:Ubiquitous Transformation)」というビジョンの下、地上のモバイルネットワークとNTNを融合させることで、あらゆる場所・場面でつながり続ける通信インフラの構築を目指します。
      また、AIと人間が共存する社会の実現に向けて、分散型AIデータセンターを中心とした次世代社会インフラの構築を進めていきます。