プレスリリース 2025年
ITU-RでHAPSの電波伝搬に関する2件の国際標準化を達成
〜建物の材質ごとの電波透過特性や、高仰角のマルチパス環境における
移動局側の電波伝搬特性などを解明〜
2025年11月18日
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川潤一、以下「ソフトバンク」)は、2025年5〜6月に開催された国際電気通信連合の無線通信部門(以下「ITU-R」)※1の会議を経て、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)の電波伝搬に関する2件の国際標準化を達成しましたのでお知らせします。
ソフトバンクなどがITU-Rに提供した電波透過特性の測定手法と測定データにより、窓ガラスをはじめとする建物の材質が電波に与える影響をまとめた新たな報告書として、ITU-R報告P.2554-0が2025年6月に発行されました。また、HAPSによる通信ネットワークの設計に必要な「システムデザイン用電波伝搬推定法」※2について、HAPSなどで想定される高仰角のマルチパス環境における移動局側の電波伝搬特性を新たに解明し、既存の勧告の追加・改訂版として、ITU-R勧告P.1409-4が2025年9月に発行されました。
建物の材質ごとの電波透過特性を解明(ITU-R報告P.2554-0)
5G(第5世代移動通信システム)などのネットワーク設計を効率化するためには、高精度な「電波伝搬推定法」が必要です。これまでソフトバンクは、地上の基地局やHAPSなどの屋外から放射された電波が屋内の移動局(スマートフォンなど)に到達するまでの電波伝搬特性に着目した研究を行ってきました。この研究により、近代的な建物に使用される高性能な断熱効果を持つ複層ガラスなどの窓ガラスによる電波の透過損失の影響が大きいことを解明しました。
今回ソフトバンクは、さまざまな種類の窓ガラスにおける電波透過特性の測定手法と、その測定データをITU-Rに提供して、屋内侵入による電波伝搬損失を高精度に推定するための報告書を発行することを提案しました。この提案とその他複数の国による測定結果を基に、建物の材質が電波に与える影響を示す測定データをまとめたITU-R報告P.2554-0が新たに発行されました。この報告書では、窓ガラスをはじめ、木材や石こうボードなどの材質におけるさまざまな測定データが収録されています。これにより、屋外と屋内間の電波伝搬損失の推定精度が向上し、都市環境におけるネットワーク設計の効率化や、屋内外をまたぐ通信サービスの品質向上に大きく貢献します。
高仰角のマルチパス環境における移動局側の電波伝搬特性を解明(ITU-R勧告P.1409-4)
HAPSを活用した通信サービスを提供するには、さまざまな環境を想定して、成層圏から地上に放射する電波が届く範囲などを正確に推定する必要があります。その推定に必要な手法として、HAPS向けの「電波伝搬推定法」があり、この推定法は主に「干渉検討用電波伝搬推定法」※3と「システムデザイン用電波伝搬推定法」で構成されています。これまでにソフトバンクは「干渉検討用電波伝搬推定法」の国際標準化を達成※4した他、「システムデザイン用電波伝搬推定法」として、HAPSから移動局に届く電波の方向と強度などを推定するモデルの国際標準化を達成※5しています。
HAPSと移動局間の通信において、都市や郊外の環境ではHAPSから放射された電波は建物によって反射・回折・散乱するため、経路長の異なるさまざまなルートを通って移動局へ到達します(マルチパス環境)。今回ソフトバンクは新たに電波伝搬測定を実施し、HAPSなどで想定される高仰角のマルチパス環境において移動局に到達する電波の経路長の差による強度の特性を解明して、ITU-Rへ提案を行いました。この提案が既存の「システムデザイン用電波伝搬推定法」に追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-4として発行されました。これにより、HAPSから移動局へ届く電波の電波伝搬特性を全て解明し、標準化を達成したことになります。このモデルは、今後HAPSで5Gなどの通信を行う際に、効率的なネットワーク設計とアンテナ設計に活用されます。また、「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部である「人体遮へい損失モデル」で考慮される、都市・郊外におけるマルチパス環境の推定も可能になります。
ソフトバンクは、今回の成果を活用して5Gなどのネットワーク設計の最適化や通信品質の向上を図るとともに、HAPSや衛星通信などの非地上系ネットワーク(NTN:Non-terrestrial Network)の実用化を推進し、世界の人々に安定した通信環境を提供できるよう取り組んでいきます。
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- ※1国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は、情報通信技術のための専門機関です。その部門の一つである無線通信部門(Radiocommunications Sector)は、無線通信に関する標準化や勧告を行う機関です。傘下に数々のStudy Group(SG)を持ち、Recommendation(勧告)などを策定しています。
- ※2「システムデザイン用電波伝搬推定法」とは、HAPSによる通信ネットワークの設計において、HAPSの機体数や配置、アンテナ設計などを詳細に検討するために必要な推定法。
- ※3「干渉検討用電波伝搬推定法」とは、隣国同士や異なる無線通信システム間の電波干渉を調整するために必要な推定法。
- ※4詳細は2021年10月27日付のプレスリリース「ITU-RでHAPSの『電波伝搬推定法』の国際標準化を達成」をご覧ください。
- ※5詳細は2023年10月26日付のプレスリリース「ITU-RでHAPSの『システムデザイン用電波伝搬推定法』のモデルが国際標準化を達成」をご覧ください。
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