プレスリリース 2025年

6Gに向けてセンチメートル波の都市部での有効性を実証

~都市部で7GHz帯による良好なエリアカバレッジと通信品質を確認~

2025年11月19日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、Nokia(以下「ノキア」)の協力の下、6G(第6世代移動通信システム)向けの周波数として検討されている7GHz帯の電波(センチメートル波※1)を利用した屋外実証実験を、2025年6月から実施しています※2。Massive MIMOに対応した7GHz帯の実験用基地局を東京都中央区の銀座エリアに3局設置し、その有効性を評価したところ、都市部において良好なエリアカバレッジと通信品質の両方を確保できることを確認しました。

今後、AI(人工知能)を活用したさまざまなサービスの普及に伴い、モバイル通信のトラフィックは急速に増加していくと予測されています。AIネイティブな社会を支える6Gには、大容量通信と広域な通信エリアの構築が不可欠です。ソフトバンクは、今回の実証実験により、7GHz帯の電波がこれらの要件を満たし、都市部での展開において有効であることを確認しました。

実証実験の概要と結果

ソフトバンクは、7GHz帯の実験試験局免許を取得し、ノキアの基地局と専用端末を用いて銀座エリアで実証実験を行いました。Massive MIMOに対応した7GHz帯の実験用基地局3局を、ビルの屋上に設置されている3.9GHz帯の商用5G(第5世代移動通信システム)基地局と並べて設置することで、通信エリアの連続性(エリアカバレッジ)や通信品質、電波伝搬特性を3.9GHz帯と比較して評価しました。

実施場所 東京都中央区銀座4丁目から8丁目までの一部
利用する電波の周波数帯 7,180~7,280MHz(FR3/センチメートル波)
実験用基地局数 3局(いずれもMassive MIMO)
評価項目 屋外でのエリアカバレッジと通信品質、電波伝搬特性など
(左)7GHz帯実験用基地局の設置イメージ/(右)測定車の概要
(左)7GHz帯実験用基地局の設置イメージ/(右)測定車の概要

エリアカバレッジと通信品質の評価

測定車を使用して、対象エリアとその周辺における電波の受信電力(RSRP※3)と通信品質の測定を行いました(図1~2)。大通りなどの見通しの良いエリアで強い受信電力が確認できた他、細い路地などの見通し外のエリアでも信号の受信に成功しており、7GHz帯による広域な通信エリア化が可能なことを確認しました。また、通信品質を示す指標の一つであるSINR(信号対干渉雑音比)※4の実測値を統計的に分析したところ、全てのエリアで0dB以上となり、安定した通信が可能なことを確認しました。SINRの中央値は5.9dBとなり、良好な通信品質でエリア全体をカバーできていることを示しています。これは、7GHz帯の電波は見通し外への回り込みが少ない反面、隣り合う基地局同士の干渉が発生しづらいため、品質が劣化しにくいという特性によるものと考えられます。

図1:7GHz帯の受信電力の測定結果(緑色に近いほど受信電力が高い)
図1:7GHz帯の受信電力の測定結果(緑色に近いほど受信電力が高い)
図2:7GHz帯のSINRの測定結果(緑色に近いほど通信品質が良い)
図2:7GHz帯のSINRの測定結果(緑色に近いほど通信品質が良い)

電波伝搬特性評価

基地局からの見通しが良い大通り沿いと、見通し外となる路地において、それぞれの基地局からの距離に対する端末の受信電力のデータを基に、電波伝搬損失(どの程度受信電力が低下するか)を評価しました。図3に示した通り、見通しの良い場所では、3.9GHz帯と7GHz帯の伝搬損失はほぼ同じ値となっており、統計的に見ても中央値の差分は1dB未満という結果となりました。一般的な電波伝搬モデルによる試算では、それぞれの周波数特性により7GHz帯が3.9GHz帯よりも6dBほど伝搬損失が高いとされますが、今回の評価では試算よりも低い数値となりました。これは、大通りの両側にある建物によって電波が反射し、電波が分散しにくいことが要因の一つだと考えられます。

図3:見通し内における伝搬損失の特性(左:距離に対する伝搬損失、右:累積分布)
図3:見通し内における伝搬損失の特性(左:距離に対する伝搬損失、右:累積分布)

一方で、図4に示すように、見通し外の場所では3.9GHz帯に比べて7GHz帯の伝搬損失は全体的に大きく、統計では中央値の差分は約10dBとなりました。この差分は、一般的な見通し外の電波伝搬モデルによる試算と一致しており、各周波数帯の回折特性や、建物の外壁などによる反射特性の違いによるものと推測されます。

図4:見通し外における伝搬損失の特性(左:距離に対する伝搬損失、右:累積分布)
図4:見通し外における伝搬損失の特性(左:距離に対する伝搬損失、右:累積分布)

ソフトバンクはこれらの結果により、7GHz帯においても、高出力で広域をカバーするマクロ局によって繁華街を広くカバーし、品質の良い通信エリアを構築可能なことを示しました。

今回の実証実験の結果について、東京大学 大学院工学系研究科 教授であり、XGMF(XGモバイル推進フォーラム)共同代表の中尾 彰宏 氏は、次のように述べています。
「ソフトバンクの実証実験における評価は、7GHz帯を用いた6Gの有効性を日本から発信する非常に有用な内容だと捉えています。今回の実証で得られた知見を基に、産学官および海外パートナーとの共創を通して、7GHz帯のグローバルエコシステムの形成と社会実装を推進していきます」

[注]
  1. ※1
    センチメートル波とは、波長が1~10cmの電波(周波数では3~30GHz)のこと。3GPP(Third Generation Partnership Project)ではFR3(Frequency Range 3)と呼ばれる7~24GHzが次の新しい周波数として期待されている。
  2. ※2
    詳細は2025年7月8日付のプレスリリース「国内通信事業者初、6Gの実用化に向けて7GHz帯の屋外実証実験を開始」をご覧ください。
  3. ※3
    RSRP(Reference Signal Received Power)とは、モバイルネットワークにおける受信電力の強さを表す指標。dBm(デシベルミリワット)という単位のマイナスの数値で表され、数字が0に近いほど受信電力が強いことを表す。
  4. ※4
    SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)とは、信号における干渉と雑音の比率のこと。単位はdB(デシベル)で、数値が大きいほど通信品質が良い(安定・高速)ことを表す。
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