プレスリリース 2025年

デジタルツインを活用した
メトロネットワークの運用自動化システムを全国展開

~ゼロタッチ運用を実現し、国内で初めて
TM Forumの「Autonomous Networks」レベル3認定を取得~

2025年11月25日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、デジタルツインを活用したIPネットワークの運用自動化システム(以下「本システム」)を開発し、全国のメトロネットワーク※1で運用を開始しました。本システムを導入したソフトバンクのメトロネットワークの運用が、通信業界を中心とした国際的な業界団体であるTM Forumが定める「Autonomous Networks(自律型ネットワーク)」の「IP Fault Management」シナリオにおいて、2025年10月10日に国内で初めてレベル3(条件付き自律)の認定を取得しました※2※3。この認定は、本システムを導入したソフトバンクの運用が、世界的にも高水準の自律運用を実現していることを示しています※4。本システムでは、ネットワーク機器の微細な変化を把握してサービスへの影響の前兆(予兆)を捉える「予兆検知基盤」と、障害発生時に迂回可否を自動で判断する「迂回可否自動判定システム」を組み合わせることで、ネットワーク運用のゼロタッチ化※5を実現します。これにより、障害対応の迅速化や運用工数の削減が可能になり、業務効率化とサービスの安定性向上に貢献します。

[注]
  1. ※1
    コアネットワークとアクセス回線を接続するIPネットワークのこと。
  2. ※2
    レベル3以上の認定を取得したのはソフトバンクが国内初。TM Forum調べ。
  3. ※3
    TM Forumの「Autonomous Network Level Evaluation Tool(ANLET)」による評価スコアに基づく。
  4. ※4
    「IP Fault Management」シナリオにおいて。(2025年11月25日時点)
  5. ※5
    人の操作を介さず、異常検知から復旧までシステムが自動で実行する運用方式。

本システムの概要

IPネットワークにおける機器の故障から復旧までの一般的なプロセスは、(1)異常検知(2)迂回制御などによるサービスの復旧措置(3)機器の復旧措置(4)ネットワークの正常確認という流れで構成されています。ソフトバンクは、これまでも各プロセスにおける運用自動化を進めてきましたが、今回新たにプロセスをまたいだ自動化の大きな障壁となっていた「迂回可否判断」を自動化するため、「迂回可否自動判定システム」を開発して、運用を開始しました。さらに、これまでは技術面やリソース面の制約により実現が難しかった、ネットワーク機器の微細な変化を把握してサービスへの影響の予兆を捉える「予兆検知基盤」を構築し、高精度な異常検知と迅速な迂回制御を可能にすることで、サービスのさらなる安定化を実現しました。ソフトバンクは、これら2つの仕組みで構成される本システムを全国のメトロネットワークで運用して、通信ネットワークおよびサービス品質の向上を図ります。

本システムの概要

(1)「迂回可否自動判定システム」の詳細

異常検知時の迂回判断では、該当機器のトラフィックの流れやネットワークの冗長構成、迂回経路などの設計情報に加えて、作業や故障によって変化するネットワークの状態などを総合的に把握して判断する必要があります。そのため定型的な自動化が難しく、従来は熟練の技術者が都度状況を確認し、判断していました。今回開発した「迂回可否自動判定システム」では、機器や関連システムから取得した設定情報やステータス情報、作業情報、アラーム情報をほぼリアルタイムに収集し、ネットワークの構成変化に特化したデジタルツイン上で状況を分析します。これにより、実際の状態に基づいた自動判定を実現し、サービス復旧までの時間を大幅に短縮しました。また、監視工数の削減や個人のスキルに依存しない安定的な運用体制の構築にも寄与しています。

「迂回可否自動判定システム」の詳細

(2)「予兆検知基盤」の詳細

従来はSNMP※6や機器に搭載されたモニタリング機能を用いて、機器の性能や状態の把握を行っていましたが、「サービスに影響が出る前に検知することが難しい」「機能の有無が機器に依存する」といった課題がありました。今回新たに構築した「予兆検知基盤」では、Telemetry(テレメトリー)※7を活用することで、機器の機能有無に依存せず多様なネットワーク機器を対象に、機器の状態や通信統計データなどを従来の約5倍の頻度で取得でき、より迅速かつ詳細な把握が可能になりました。取得したデータに対して柔軟な分析やアラート化を行うことで、サービス影響の前兆となる傾向変化を早期に検知し、ネットワークのさらなる高信頼化に貢献します。

[注]
  1. ※6
    Simple Network Management Protocolの略で、ネットワーク機器を遠隔で一括して監視・制御するための標準プロトコルのこと。プル型で、管理者側の要求に応じて情報を取得する。
  2. ※7
    ネットワーク機器からデータを自動的に送信する仕組み。プッシュ型で、リアルタイムに近い頻度で細部の状態を継続的に把握できる。
「予兆検知基盤」の詳細

TM Forumが提唱する「Autonomous Networks」は、AI(人工知能)や自動化技術を活用し、ネットワークが自ら監視・分析・判断・実行する「自律運用」を実現するための国際的な枠組みです。この枠組みでは、実行・検知・分析・決定・意図/体感の5つの観点から成熟度を評価してスコア化し、レベル0(手動)からレベル5(完全自律)までの6段階に分類します。レベル0~2は人手による運用が中心の段階ですが、レベル3は特定の条件下において、システムが人の判断を介さず自律的に制御を行う段階を示します。このたびのレベル3の認定取得は、全国で1万台規模の機器を抱えるソフトバンクのメトロネットワークにおいて、本システムを導入した運用の実績と有効性が評価されたものです。

ソフトバンクは今後、生成AIなどの最新技術も取り入れながら、運用のさらなる高度化を進め、「Autonomous Networks」のレベル4(高度自律運用)相当の運用を目指します。また、コアネットワークなど他のネットワーク領域にも本システムを展開し、迅速で安全な自律運用を実現するとともに、サービスのさらなる安定化と品質向上に継続して取り組んでいきます。

  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
ソフトバンクの通信ネットワークに関する取り組み

ー日常から未来へ、“つながる安心”を全国にー

ソフトバンクは、誰もがいつでもどこでも快適につながる社会の実現に向けて、下記の3つの視点から通信ネットワークの高度化と信頼性向上に取り組んでいます。

  1. 日常がつながる:暮らしの足元を支えるネットワーク
    1. 都市部をはじめ全国各地における5G/4G基地局の整備やAIによる電波干渉の最適制御、ビッグデータを活用した通信トラフィック分析を通して、日常の通信品質の向上を継続的に進めています。通信速度の速さだけでなく、快適さを体感できる通信品質を大切にした“つながる安心”をお客さまに提供し、その価値を体感していただくことを何よりも重視して、日々の暮らしを支える安定した通信ネットワークの構築に取り組んでいます。
  2. 非日常もつながる:イベントや災害でも“つながる安心”を
    1. 大規模イベント開催時や災害発生時など、通信需要が一時的に急増する場面でも、移動基地局車・ドローン基地局・可搬型設備の配備や無料Wi-Fiの提供など、全国で臨時の通信対策を実施しています。
      電波が届きにくい環境においても、お客さまが安心してサービスを利用できるよう、安定した通信環境の確保に取り組んでいきます。
  3. 未来のネットワークへ:空・海・山、あらゆる場所で“つながる”
    1. 人工衛星や成層圏通信プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)を活用した非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)により、災害時の通信の迅速な復旧や、山間部や離島などのこれまで電波が届きにくかったエリアへのカバレッジ拡大に取り組んでいます。ソフトバンクが掲げる「ユビキタストランスフォーメーション(UTX:Ubiquitous Transformation)」というビジョンの下、地上のモバイルネットワークとNTNを融合させることで、あらゆる場所・場面でつながり続ける通信インフラの構築を目指します。
      また、AIと人間が共存する社会の実現に向けて、分散型AIデータセンターを中心とした次世代社会インフラの構築を進めていきます。