プレスリリース 2026年
AI-RANのエコシステム拡大に向けて
「AITRASオーケストレーター」をオープンソース化
~マルチクラスターの状況に応じたリソースの最適化を可能に~
2026年2月18日
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、AI-RANのコンセプトに準拠した、AI(人工知能)とRAN(無線アクセスネットワーク)を同一のプラットフォーム上で動作可能にするプロダクト「AITRAS(アイトラス)」のオーケストレーター※1(以下「AITRASオーケストレーター」)において、中核機能の一つである多様なリソースの動的な制御を可能にするためのDynamic Scoring Framework※2(ダイナミック・スコアリング・フレームワーク)を、オープンソースソフトウエア(OSS)として公開しました。AI-RANの中核機能をオープンソース化することで、パートナーやOSSコミュニティーとの連携を促進し、AI-RANエコシステムの拡大を目指します。
Dynamic Scoring Frameworkは、AI-RANを実現する上で欠かせない、マルチクラスター環境においてリソースの状況を多様な観点から動的に評価する機能です。この機能をオープンソース化することで、通信事業者はオーケストレーターで標準的に必要とされる機能を活用しながら、自社のサービスや運用に応じた独自領域の開発に注力できるようになります。
- [注]
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- ※1複数のサーバーやクラスターにまたがるリソースやワークロードの配置・実行・スケールを、自動的かつ最適に制御する仕組み
- ※2時間や環境などの状況により変化するリソースを収集して評価する仕組み
- ※1
1. 背景
近年、AI-RANの取り組みとして、通信事業者を中心に従来のRANの提供に加えて、AI推論処理などをネットワーク上で実行し、新たな価値創出につなげる動きが広がりつつあります。しかしながら、AI推論処理はGPU(Graphics Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)、各種AIアクセラレーターなどの異なるリソース上で行われ、複数の拠点やクラスターにまたがる構成が一般化しています。このような環境では、どのワークロードをどのクラスターに配置するかを状況に応じて判断する必要があり、複雑な運用が求められます。
AIとRANのそれぞれのワークロードを同一のインフラ上で効率的に制御するためには、オーケストレーターが複数のクラスターや異なるリソースを横断的に管理し、状況に応じて最適な判断を行うことが不可欠です。
2. Dynamic Scoring Frameworkについて
ソフトバンクは、オーケストレーターの中核機能であるDynamic Scoring Frameworkの開発を推進しています。Dynamic Scoring Frameworkは、マルチクラスター環境において、各クラスターのリソースの状況を収集・評価して、その結果を基に最適なクラスターの選択やワークロード配置の判断を行うことを可能にする機能です。
具体的な例として、GPUの状況を消費電力やアプリケーション性能など、複数の評価軸でスコアリングし、要件に応じた最適なリソースの選択や設定の変更を実施します。ソフトバンクでは、これらの評価軸を用いた具体的な最適化例をDynamic Scoring Frameworkを用いて実装し、実運用を想定した検証を行ってきました。
3. オープンソース化の概要
今回、ソフトバンクは、Dynamic Scoring Frameworkを、複数のKubernetes(クバネティス)クラスターを一元管理するOSSであるOpen Cluster Management(OCM:オープン・クラスター・マネジメント)へのOSSコントリビューション※3として公開しました。
- [注]
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- ※3既存のオープンソースソフトウエア(OSS)プロジェクトに対して、新機能の追加やドキュメントの改善などを行う取り組み
- ※3
オーケストレーターにおいて標準的に必要とされる機能をOSSとして公開することで、利用者は共通機能を活用しながら、それぞれのユースケースに応じた独自領域の開発に集中することが可能になります。AI-RANの中核機能をオープンソース化することで、技術開発と実用化を加速させ、AI-RANのエコシステム全体の発展に貢献します。
また、Dynamic Scoring Frameworkは、AI-RANの発展を目指して設立された業界団体「AI-RANアライアンス」のAI and RANワーキンググループが公開した「AI-RAN Platform & Infrastructure Orchestrator」(英語のみ)の考え方を踏まえて設計しています。
さらに、この取り組みはRed Hat, Inc.(以下「レッドハット」)の協力の下で進めており、レッドハットが提供するOpenShift Container Platform(OCP:オープンシフト・コンテナ・プラットフォーム)やAdvanced Cluster Management(ACM:アドバンスト・クラスター・マネジメント)を含むエコシステムとの連携も視野に入れて検討しています。
ソフトバンクは、このようなマルチクラスター全体を俯瞰するマクロ視点でのリソースの最適化に加え、単一クラスター内におけるミクロ視点でのAIワークロードの最適化にも取り組んでいます。具体的な事例としては、vLLM※4を用いたAI推論基盤を効率的に運用するためのツールであるllm-d※5の検証を、レッドハットと協力して進めています。この検証では、オーケストレーターがクラスター内のリソースの状況やモデルの要件に基づき、GPUデバイスごとにvLLMの役割を動的に割り当てることで、従来は管理者が手動で設定していた構成を自動的に最適化し、推論APIの性能が向上することを確認しています。
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- ※4大規模言語モデル(LLM)を高速で、かつ効率的に推論(生成)するためのオープンソースの実行基盤
- ※5vLLMランタイムエンジンを効率的にオーケストレーションするために設計されたオープンソースのフレームワーク
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4. 今後の取り組み
今回の技術に関するデモンストレーションを、「MWC Barcelona 2026」のレッドハットのブースで実施する予定です。
ソフトバンクは、この取り組みを通して、マルチクラスター環境における意思決定の高度化と、AI推論ワークロードの効率的な運用を支える基盤づくりを進めるとともに、レッドハットをはじめとするパートナーやOSSコミュニティーと連携しながら、AI-RANの発展を推進することで、通信インフラの新たな価値創出を加速していきます。
5. 各社からのコメント
ソフトバンクの執行役員 兼 先端技術研究所 所長の湧川隆次は、次のように述べています。
「ソフトバンクが開発してきた『AITRASオーケストレーター』のフレームワークをオープンソース化したことで、多くのRANベンダーやMNO(移動体通信事業者)が『AI-RANオーケストレーター』を容易に実装できるようになります。これにより、AI-RANの実装が加速するとともに、OSSコミュニティーとの連携を通じてフレームワークが継続的に成長していくことを期待しています」
レッドハットのGenAI基盤モデルプラットフォーム部門グローバル製品責任者のトゥシャール・カタルキ氏は、次のように述べています。
「レッドハットは、オープンソースによるイノベーションの力を強く信じています。ソフトバンクがDynamic Scoring Frameworkをオープンソースコミュニティーに提供し、llm-dをはじめとするコミュニティー主導のテクノロジーによって『AITRASオーケストレーター』を強化する取り組みは、レッドハットのオープンソースに対するビジョンと完全に合致するものです。llm-dは、コンポーザブルかつ拡張可能であることを前提にゼロから設計されており、共通のオープンソース推論基盤の上に、パートナー各社が差別化されたオーケストレーションレイヤーを構築することを可能にします。今回のコラボレーションは、多様なデプロイメントシナリオにおけるAI推論最適化のエンタープライズ基盤として、llm-dの有効性を裏付けるものです」
Linux Foundationのネットワーキング/エッジ/IoT分野 シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのアーピット・ジョシプラ氏は、次のように述べています。
「Dynamic Scoring Framework を Linux Foundationに提供したことは、5G/6GネットワークにおけるAI-RANの複雑さを軽減し、業界全体が直面するより広範な課題の解決にもつながる可能性を持っています。こうした技術をアップストリームとして公開することで、ソフトバンクは堅牢でデータドリブンなオーケストレーションツールをグローバルなオープンソースコミュニティーに提供し、AIネットワーキング分野におけるリーダーシップを一層強化しています」
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- ソフトバンク 先端技術研究所について
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ソフトバンク 先端技術研究所は「テクノロジーの社会実装」を使命に、次世代社会インフラを支える技術のAI-RANやBeyond 5G/6Gをはじめ、通信、AI、コンピューティング、量子技術、宇宙・エネルギー分野など、さまざまな先端技術の研究開発と事業創出を推進しています。国内外の大学・研究機関との産学連携や、パートナー企業との国際的な協業を通して、グローバルなビジネスの創出と、持続可能な社会の創造に貢献していきます。詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。