プレスリリース 2026年

3次元空間における隣接セル間の電波干渉を抑圧する
「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」の
屋外実証実験に成功

~「移動通信三次元空間セル構成」の実現に向けて、
上空のドローンと地上のスマホの電波干渉を抑圧~

2026年3月31日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、国立大学法人東京科学大学工学院 電気電子系 藤井輝也研究室(以下「東京科学大学」)と共同で、地上の基地局と同じ周波数帯の電波をドローンなどの上空の通信でも共用する「移動通信三次元空間セル構成」の研究開発を進めています。このたびソフトバンクと東京科学大学は、パナソニック ホールディングス株式会社の協力の下、「移動通信三次元空間セル構成」の実現に向けて、隣接する基地局(セル)で通信を行う地上の端末(スマホなど)間や、地上の端末と上空のドローンなどに搭載した端末との間に発生する電波干渉を大幅に抑圧する「基地局連携MU-MIMO※1干渉キャンセラー」を開発し、2026年3月に屋外での実証実験に成功しました。この実証実験では、総務省から実験試験局の免許を取得し、千葉県長生村においてシステムの有効性を実証しました。

このシステムの一部は、2021年に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G 研究開発促進事業」の委託研究課題として採択された、「移動通信三次元空間セル構成」※2の研究によるものです。

ソフトバンクと東京科学大学は今後、「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」と2025年1月に実証実験に成功した「システム間連携与干渉キャンセラー」※3を組み合わせることで、3次元空間において同一システム間および異なるシステム間の電波干渉の低減を可能とする「移動通信三次元空間セル構成」の実現に向けた研究開発を進めていきます。

[注]
  1. ※1
    MU-MIMO(Multi‑User Multiple Input Multiple Output)とは、基地局が複数のユーザーに対して、同一の周波数帯の電波で同時に通信する技術のこと。
  2. ※2
    詳細はこちらをご覧ください。
  3. ※3

背景

5G(第5世代移動通信システム)では高速・大容量通信を実現し、安定した通信品質の提供が可能です。しかし、同一周波数帯の電波を隣接するセルで利用する場合、隣接セルからの同一周波数干渉(以下「干渉」)により、特にセル境界における通信品質が低下しやすいという課題があります(図1(a))。また、都市部ではビルの中高層階でも通信需要が増加していることに加え、ドローンなど上空を移動する端末の普及も見込まれています。しかし、上空の端末からの電波は遠くの地上基地局まで届きやすく、地上と同一周波数帯の電波を利用する場合、広範囲で干渉が発生し、通信品質が低下する可能性があります(図1(a)、図1(b))。

ソフトバンクと東京科学大学は、こうした課題を解決するため、地上と上空の3次元空間で同一周波数帯の電波の利用を可能にする「移動通信三次元空間セル構成」の研究開発を進めてきました。これまでに、5G基地局と衛星通信地球局の下り回線の電波干渉など、異なるシステム間の干渉を抑圧する「システム間連携与干渉キャンセラー」を開発し、2025年1月に実証実験に成功しています。このたび、「移動通信三次元空間セル構成」の実現に向けた取り組みとして、従来の地上の通信システムである2次元セル構成を、上空を含む3次元空間へ拡張した3次元空間セル構成において、複数の基地局の連携により隣接セル間および上空・地上セル間の干渉を抑圧する「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」を開発しました。

「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」の概要

隣接セル間の電波干渉を抑圧するためには、隣接セルに接続する端末から届く干渉信号の伝搬路応答(電波の振幅や位相に基づく複素振幅)を測定し、それに基づいて各基地局が隣接セル干渉を抑圧する干渉抑圧ウェイト※4を生成する必要があります。「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」では、端末から基地局へ一定間隔で送られるSRS(Sounding Reference Signal、サウンディング参照信号)を利用して伝搬路応答を推測しますが、各基地局は自セル基地局と通信している端末(以下「自セル端末」)のSRSしか認識できないという課題があります。そこで、各基地局で受信した信号(SRSを含む)を連携する隣接セル基地局へ分配・転送します(図2)。各基地局は、自セル基地局および隣接セル基地局から得た受信信号から、自セル端末のSRSを抽出・復調することで、各端末の自セル基地局および隣接セル基地局で受信される伝搬路応答をそれぞれ測定することができます。測定した伝搬路応答を隣接基地局間で共有することで、各基地局は各端末と各基地局間の全ての伝搬路応答を推定します。各基地局はこの推定情報を用いて干渉抑圧ウェイトを生成し、受信信号に干渉抑圧ウェイトを重ねて処理することで隣接セル干渉信号を抑圧します。

一方、各基地局が分散配置されている構成(図2)では、隣接基地局で受信した信号を自セル基地局に転送するために複数の伝送装置が必要となり、システム構成が複雑化する課題があります。そこで「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」では、複数の基地局を1カ所に集約して連携処理を行う「集中基地局構成」(図3)を実現しました。この構成により複数の光ファイバーや伝送装置の追加を必要とせず、連携制御装置により各基地局が測定した伝搬路応答を容易に集約できることから、伝搬路応答の推定処理の効率化を図ることができます。

また、自セル内で地上端末と上空の端末が通信する場合(図1(b))は、図3に示す集中基地局構成において、隣接セル基地局アンテナを自セル基地局と同一の場所に設置し、それぞれ自セル基地局の地上セル基地局と上空セル基地局と構成することで実現しています。

[注]
  1. ※4
    基地局が受信した信号に対して、不要な電波干渉を低減するために適用する補正係数のこと。

屋外実証実験について

2026年3月に千葉県長生村のグラウンドで実施した「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」の実証実験の構成を図4に、実証実験の様子を図5に示します。

隣接セル間干渉抑圧の実証実験では、グラウンドの両端に5G基地局のアンテナをそれぞれ設置し、アンテナ間の距離は60m、セル境界は各アンテナから30mに設定、各基地局には同一周波数帯の電波を利用する端末を1台ずつ接続しました(図4(a))。利用する電波の周波数は4.8GHz帯、帯域幅は20MHzで、この構成における各端末の最大通信容量は上り/下りともに10Mbpsです。また、同一セル内干渉抑圧の実証実験では、同一周波数帯の電波を利用する地上の端末1台と上空の端末1台を接続しました(図4(b))。

まず、各セル内の端末を地上に設置した場合の通信品質を測定・評価しました(図4(a))。各端末が自セルの基地局アンテナの近くにある場合は干渉の影響が小さく、上り/下りともに10Mbpsの通信を確認しました。一方で、各端末をセル境界に移動させると、隣接セル間の干渉により通信容量は3Mbps以下まで大きく低下しました。そこで、「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」を適用した結果、電波干渉を10dB以上抑圧し、セル境界においても上り/下りともに8~10Mbpsの通信が可能なことを確認しました。

次に、自セルに接続している地上端末と、隣接セルに接続している上空の端末(ドローンに搭載)の干渉抑圧効果を評価しました(図4(a))。ドローンを高度30mまで上昇させ、自セルのアンテナは地上の端末に、隣接セルのアンテナは上空の端末にそれぞれビームを向けて通信を行いました。図6に、この構成における通信品質の測定結果例を示します。上空端末をセル境界付近で移動させながら、上り/下りの通信品質を5回測定しました。干渉が非常に厳しい上り回線では上空の端末からの強い干渉により、地上端末の通信容量は1Mbps以下まで低下しましたが、「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」を適用することで、上空と地上のセル境界においても、上り/下りともに8~10Mbpsの通信が可能なことを確認しました。

さらに、自セルに接続している地上端末と、上空セルに接続している上空端末の干渉抑圧効果についても評価しました(図4(b))。ドローンを高度30mまで上昇させ、地上セル基地局アンテナは地上端末に、上空セル基地局アンテナは上空の端末にそれぞれビームを向けて通信を行いました。特に干渉が厳しい上空の端末からの強い干渉により、通信容量は1Mbps以下まで低下しましたが、「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」を適用することで、上り/下りともに8~10Mbpsの通信が可能であることを確認しました。

これらの結果から、「基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラー」の活用により、隣接セル間および同一セルの地上と上空の間の電波干渉を10dB以上抑圧し、セル境界の通信品質を大幅に向上させることが期待できます。

ソフトバンクは今後、さまざまな実環境下で屋外実証実験を行い、「基地局連携MU-MIMOキャンセラー」の有効性の確認とさらなる高度化を進めていきます。

図1:電波干渉のイメージ
図2:基地局連携MU-MIMO干渉キャンセラーの構成
図3:集中基地局構成
図4:屋外実証実験の構成
図5:実証実験の様子
図6:測定結果
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