外部評価・イニシアチブ
当社はESGの取り組みを推進し、国内外の機関からの評価を獲得するとともに、
関連するイニシアチブへの賛同を表明しています。
第三者意見
当社のサステナビリティへの取り組みに対する第三者意見を紹介します。

株式会社ニューラル 代表取締役CEO
信州大学グリーン社会共創機構 特任教授
夫馬 賢治 氏
経営戦略・金融コンサルタント。ESG投資やサステナビリティ経営の専門家。ハーバード大学大学院リベラルアーツ修士課程(サステナビリティ専攻)修了。サンダーバードグローバル経営大学院MBA取得。東京大学教養学部国際関係論卒。
全体総括
ソフトバンク株式会社のESG情報開示は、ホームページでの情報開示に加え、「有価証券報告書」「統合報告書」「サステナビリティレポート」「ESGデータブック」の3冊の報告書にまとめられている。また「コーポレート・ガバナンス報告書」も発行している。
ホームページでは、GRIスタンダード、SASBスタンダード、ISO26000、TCFDの「対照表」も設けられており、国際スタンダードの参照意欲や、閲覧者の情報アクセスを向上させる意欲が高い。情報開示媒体ごとの重要情報取り扱いの体系をさらに整理するなど、閲覧者視点での情報アクセスのさらなる向上に努めてほしい。
ガバナンス
同社は、成長戦略とサステナビリティを統合して推進するためにガバナンス体制を構築している。取締役会では、気候変動や人的資本を含むサステナビリティに関する重要事項を審議・決議し、最高意思決定機関として、サステナビリティ推進状況を監督する体制を整えている。また、監査役会設置会社だが、独立社外取締役の構成比率の高い指名委員会と報酬委員会を任意に設けている。
また、親子上場企業としての少数株主の利益保護のため、独立社外取締役のみで構成する特別委員会と、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOを委員長とするESG推進委員会を取締役会の諮問機関として設置している点は、特徴的と言える。指名委員会での取締役会ダイバーシティの指針については開示が少ない。取締役の報酬に関しては、基本報酬と業績連動報酬等の開示を強化してきている。
一方、業績連動報酬へのサステナビリティ指標の組み入れ状況に関する開示は薄い。政策保有株式の開示は非常に充実しており、保有方針や保有状況、保有理由の開示レベルが非常に高い。
戦略
同社は、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、「DXによる社会・産業の構築」「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」「オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出」「テクノロジーのチカラで地球課題への貢献」「質の高い社会ネットワークの構築」「レジリエントな経済基盤の発展」の6つを重要課題として特定している。
それを基に、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立させるための成長戦略「Beyond Carrier」と長期ビジョン「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラ」を打ち出し、AI分野でのリードと分散型電源となる再生可能エネルギーの活用を重視している。マテリアリティから戦略策定へと至る統合プロセスは高いと言える。
リスクマネジメント
同社は、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO、代表取締役 副社長執行役員 兼 COO、取締役 専務執行役員 兼 CFO等を委員とし、監査役や関係部門長等も出席するリスク管理委員会を半期ごとに開催し、特定したマテリアリティに関連するリスクを管理している。
また執行側の体制として、情報セキュリティ委員会、人権委員会、環境委員会、女性活躍推進委員会も設置している。リスクの評価では、個々のリスクをリスクの発生可能性(発生確率)と潜在的影響の大きさ(影響度)の観点から分類し、事業計画のために受容するリスクアペタイト(リスクの種類と量)を明確にしている。さらに、内部監査室がこれら全体のリスク管理体制・状況を独立した立場から監査している。
指標と目標
同社は、特定した重要課題の6つ全てについて、個別の目標KPIを設定し、毎年進捗状況を公表している。気候変動目標では、スコープ1と2で2030年、スコープ3を含めて2050年のネットゼロとし、SBTiからの承認を申請している。
自然資本分野でも、自然保護区での開発面積以上の植樹と、2020年度から2025年度で情報端末のリサイクルおよび再利用台数を1200万台の2つ目標を掲げている。女性管理職比率目標では2035年度に20%以上としている。
総評
同社は、ESG観点でのガバナンスやリスク管理の体制は非常に充実していると言える。また、明確な戦略を打ち出し、重大テーマでは詳細な目標KPIを設定しており、充実したPDCAを実践していることも伺える。
今後の期待としては、重要課題の2つの柱となっている「事業を通じた社会課題解決」と「企業活動を通じた社会課題解決」を実現できる社内外の人材育成を指摘したい。デジタル化とサステナビリティ・トランジションの双方の観点で「公正な移行」の必要性が世界全体で高まる中、実現の担い手は国内外で不足しており、人材育成やキャパシティビルディングが不可欠となっている。
同社が培ってきた人材育成メカニズムをさらに発展させ、デジタルツールも巧みに活用しつつ、社内人材だけでなく、社会全体の人材育成をリードしていっていただきたい。
2024年3月