プレスリリース 2022年

3次元地図シミュレーションを活用した
ドローンによる被災状況確認の実証実験を実施

~飛行ルートやLTE電波環境の事前シミュレーションに基づき、往復約8kmを安全に自動飛行~

2022年7月27日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、南海トラフ地震などの災害時を想定して、ドローンの飛行ルートやLTEの電波環境を3次元地図上で事前にシミュレーションし、それに基づいて橋梁の被災状況をドローンで確認する実証実験を、2022年7月13日に和歌山県のすさみ町で実施しました。なお、この実証実験は双葉電子工業株式会社(以下「双葉電子」)、株式会社amuse oneself(以下「アミューズワンセルフ」)、OneSky Systems, Inc.およびANSYS, Inc.(日本法人:アンシス・ジャパン株式会社)の協力の下、実施したものです。

この実証実験では、すさみ町の防災拠点の一つである防災センターを離着陸場所として、緊急輸送道路上にあるすさみ大橋までの往復約8kmの距離をドローンが自動飛行し、すさみ大橋を高精細カメラで撮影して破損の有無などの状況を確認しました。ドローンの自動飛行に先立って、ドローンの運航管理システム(UTM:Unmanned Aerial System Traffic Management)などを活用し、アミューズワンセルフのレーザースキャナーによる測量で作成した高精度な3次元地図上で、飛行ルートやLTEの電波環境をシミュレーションしてルートを決定しました。また、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」に対応した双葉電子のドローンを利用することで、設定したルートに沿って安全に自動飛行できることを確認しました。

今回の実証実験では、事前にシミュレーションを行ったことで、発災(想定)から約1時間でドローンを稼働し、その後約30分ですさみ大橋の状況を確認することができました。これにより、現地の目視確認といった危険な作業を、役場の職員などに代わってドローンが行い、速やかに被災状況を確認することが可能になります。

今後もソフトバンクは、有人地帯における補助者なしの目視外飛行(レベル4)の実現を見据えて、3次元地図によるシミュレーションを含めた、ドローンを安心・安全に運用するための運用基盤の構築に取り組むことで、防災やインフラ点検、物流などにおけるドローンの活用を推進していきます。

実証実験の概要

1. 実証実験の流れ

  1. (1)
    ドローンで測量を行い、3次元地図を作成
  2. (2)
    飛行ルートを設計
  3. (3)
    UTM上で飛行ルートをシミュレーションし、安全性を確認
  4. (4)
    飛行ルート上のLTE電波環境を電波伝搬シミュレーションで確認し、飛行ルートを決定
  5. (5)
    飛行ルートに沿って往復約8kmをドローンが自動飛行し、橋梁を撮影(7月13日)
実証実験の流れ

2. ドローンの飛行ルート

ドローンの飛行ルート

3. 実証実験の特長と結果

  1. (1)
    グリーンレーザー技術を活用した測量による高精度3次元地図の作成

    ソフトバンクと技術提携しているアミューズワンセルフが提供する、グリーンレーザー技術を活用したドローン向けのレーザースキャナー「TDOT 3 GREEN(ティードット・スリー・グリーン)」で3次元測量を行い、高精度な3次元地図を作成しました。「TDOT 3 GREEN」は、発射レート60,000Hz/sのレーザーを照射可能なため、広範囲にわたって高密度な点群データを取得できる他、水に吸収されにくい特性を持ったグリーンレーザーにより、これまで近赤外線では測量が困難だった、雨にぬれた地面や水中の地形(水深数メートル程度)でも、正確な点群データを取得して3次元測量を行うことができます。

    「TDOT 3 GREEN」/高精度3次元地図のイメージ
    「TDOT 3 GREEN」/高精度3次元地図のイメージ
  2. (2)
    飛行ルートやLTE電波環境のシミュレーション

    OneSky Systems, Inc.のUTMを利用して、3次元地図上で飛行ルートをシミュレーションして安全性を確認し、最適なルートを決定しました。なお、ルートの決定に当たっては、ANSYS, Inc.の電波伝搬シミュレーションシステムを利用して、3次元地図上で天候情報や上空のLTE電波強度などの環境を確認しています。従来は、現地調査や複数回のテスト飛行などで詳細を確認して飛行ルートを決定する必要がありましたが、今回の実証実験により、3次元地図上のシミュレーションでドローンの最適な飛行ルートを決定し、安全に自動飛行できることが確認できたため、今後のドローンの飛行準備作業の効率化が期待できます。

    飛行ルートのシミュレーションのイメージ

    飛行ルートのシミュレーションのイメージ

    LTE電波環境のシミュレーションのイメージ

    LTE電波環境のシミュレーションのイメージ
  3. (3)
    ドローンの活用により被災状況を安全かつ速やかに確認可能

    すさみ町では、南海トラフ地震で津波が発生した場合のすさみ大橋の被災状況の確認は、津波発生から半日程度経過した後に、役場の職員などが数時間かけて目視で行うことと想定されています。今回の実証実験では、事前にシミュレーションを行ったことで、発災(想定)から約1時間でドローンを稼働できた他、防災センターを離発着場所として、すさみ大橋までの往復約8kmをドローンが自動飛行して撮影することで、ドローンの稼動から約30分ですさみ大橋の状況を確認することができました。これにより、現地の目視確認などの危険を伴う作業をドローンが代わりに行うとともに、速やかに被災状況を確認することができます。

4. 使用したドローン

名称 FMC-02SB(双葉電子製)
サイズ 全長720×全幅720×高さ500mm
機体重量 10.7kg
搭載カメラ ソニー製 DSC-RX02
飛行可能時間 約30分
対応通信方式 LTE(2.1GHz帯、900MHz帯)、920MHz帯の無線通信
その他の機能 「ichimill」(RTK測位)対応
使用したドローン
[注]
  1. 2022年5月25日付のソフトバンクのプレスリリース「長時間かつ広範囲での安心・安全なドローンの運用の実現に向けてアミューズワンセルフと技術提携」をご覧ください。
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