プレスリリース 2026年

AIが通信経路を自律最適化する
「自律思考型分散コアルーティング」技術を開発

~SRv6 MUPとAIエージェントの連携により、効率性と低遅延を両立~

2026年3月11日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、AI(人工知能)が通信状況(トラフィック特性)をリアルタイムに分析し、それに応じて最適なネットワーク経路を自律的に選択する「自律思考型分散コアルーティング」を行う技術(以下「本技術」)を開発しました。本技術は、「CAMARA Project」※1が定義する業界標準のQoD API(Quality on Demand Application Programming Interface)を活用したAIエージェントにより、UPF(User Plane Function)※2による従来の中央集中管理型コアネットワークと、「SRv6 MUP(Segment Routing v6 Mobile User Plane)※3」を動的に切り替える仕組みです。

本技術により、効率性が重視される通信では従来の集中型モバイルコアを利用し、低遅延が求められるアプリケーションの利用時には自律的に最短経路へ切り替えることで、用途に応じた最適な通信品質を実現します。

[注]
  1. ※1
    CAMARAとは、Linux FoundationとGSMA(GSM Association)が推進する、通信事業者のネットワーク機能を標準化するオープンソースプロジェクト。
  2. ※2
    ユーザーデータを処理するモバイル専用交換機。
  3. ※3
    SRv6 MUPの詳細は、2022年2月28日付のプレスリリース「MECやネットワークスライシングを低コストかつ容易に実現する『SRv6 MUP』の開発に成功」をご覧ください。

1. 開発の背景

次世代の通信環境では、AR(Augmented Reality、拡張現実)やVR(Virtual Reality、仮想現実)、自動運転など、低遅延が不可欠な通信と、大容量データの効率的な転送が求められる通信が、一つのアプリケーション内で複雑に切り替わることが予想されます。しかし、従来のモバイルネットワークでは、一つのアプリケーション内で異なる遅延要件(SLA:Service Level Agreement)が存在する場合に、それぞれの要件に柔軟に対応することが難しく、一律の基準で通信を制御することは困難でした。そこでソフトバンクは、アプリケーションが要求する遅延要件をAIエージェントが自律的に判別し、最適なコアネットワーク経路へリアルタイムで切り替えて制御を行う「自律思考型分散コアルーティング」の技術を新たに開発しました。

2. 「自律思考型分散コアルーティング」の特長

  • 遅延要件の定義と事前測定:利用するアプリケーションの遅延要件を数十ミリ秒(1ms=1,000分の1秒)から10ms以下まで、段階的なクラスとして定義。特定の遅延要件(例:40ms以下など)が求められるクラウドゲーミングなどの起動時に、AIエージェントが現在のネットワーク遅延が要件を満たしているかを計測サーバーを用いてリアルタイムに判定。

  • 事前測定に基づく自律最適化:事前測定の結果を基に、AIエージェントがSRv6 MUPの適用可否を判断。低遅延化によりアプリケーションが求める遅延要件を満たせると判断した場合、自律的に経路を切り替え。

  • 検証(本番利用中の計測):SRv6 MUPにより最適化された通信環境下でアプリケーションを利用し、AIエージェントは計測サーバーを用いて遅延を継続測定。

  • 証明(結果の可視化):セッション終了後、遅延要件の達成状況を判定し、必要に応じて結果をAPI経由で送付。

  • モバイルネットワークのリアルタイム切り替え:モバイルネットワーク側で、特性が異なる二つの経路をリアルタイムに切り替え。信頼性の高い、効率的な通信経路を提供する「UPFによる中央集中管理型コアネットワーク」と、最短経路により遅延を抑制した通信経路を提供する「SRv6 MUP-PE:Provider Edge」の最適な使い分けを実現。

3. 実証実験の成果

2026年2月に開催されたネットワーク運用者向けイベント「JANOG57」において、クラウドゲーミングを用いた実証実験を実施しました。今回の実証実験においてソフトバンクの商用モバイルネットワーク(4G)環境で検証した結果、従来のモバイルコア経由の平均遅延値が41.9msであったのに対し、本技術適用時の平均遅延値は27.4msという結果が得られました。

このように、本技術を用いることでクラウドゲーミングが求める遅延要件(40ms以下)を安定的に満たすことを確認しました。また、AIエージェントによるトラフィック制御の精度は99.7%を記録し、極めて精緻で、かつ安定した自律制御の有効性が確認されました。

4. 今後の展開

今後、AIエージェントにさまざまなアプリケーショントラフィックを学習させることで、より汎用的な制御技術への高度化を進めます。将来的には、アプリケーション事業者が低遅延を必要とするアプリケーションをソフトバンクのMECサーバーに搭載するだけで、自律的に最適なネットワーク制御が適用される仕組みの実現を目指し、本技術を進化・発展させていきます。

ソフトバンクは、AIと通信ネットワークが高度に融合した自律型社会の実現に向けて、本技術の商用展開とさらなる高度化を推進していきます。

  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
ソフトバンクの通信ネットワークに関する取り組み

ソフトバンクは、誰もが安心して暮らせる社会の実現に向け、通信ネットワークの高度化と信頼性向上を三つの領域で推進しています。地上ネットワークの高度化や災害時に備えた増強、非地上系ネットワーク(NTN)との融合により、平常時から災害時まで安定した通信環境の提供を目指します。

  • 平常時における通信品質向上のため、都市部や全国各地で5G/4G基地局を整備するとともに、AI(人工知能)やビッグデータを活用してネットワーク全体を制御することで、お客さまの体感品質を継続的に向上させています。
  • 大規模イベントや自然災害など通信需要が急増する状況では、移動基地局車や可搬型設備、ドローン基地局、無料Wi-Fiなどを組み合わせ、安定した通信環境を確保しています。
  • ユビキタストランスフォーメーション(UTX)のビジョンの下、衛星通信や成層圏通信プラットフォーム(HAPS)などのNTNと、地上のモバイルネットワークの融合により、災害時の早期復旧や、山間部や離島でのサービスエリア拡大など、陸・海・空のあらゆる環境で利用可能な通信基盤の構築を進めています。