プレスリリース 2020年

障がい児の学習・生活支援のための
ICT活用事例報告書を発行

~「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」協力校の実践研究事例を公開~

2020年3月27日
ソフトバンク株式会社
東京大学先端科学技術研究センター

ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮内 謙、以下「ソフトバンク」)と東京大学先端科学技術研究センター(所在地:東京都目黒区、所長:神崎 亮平)は、2019年4月から1年間実施した、障がい児※1の学習・生活支援を行う実践研究プロジェクト「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」の成果※2をまとめたICT活用事例報告書を発行しました。この報告書を本日、「魔法のプロジェクト」のウェブサイトで公開し、障がい児の学習・生活支援におけるICT(情報通信技術)の具体的な活用方法やその効果を紹介します。

「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」ICT活用事例報告書について

1. 概要

タブレットや人型ロボット「Pepper」※3、スマートスピーカーなど、ICTの活用によって障がい児の学習や生活をどのように支援できるのかについて、「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」協力校が取り組んだ実践研究事例をまとめています。2019年度の特徴としては、読み書きの速度や正確性の課題、認知の偏りなど、特性によって従来の指導では学習が難しい児童・生徒が少なからず存在することが文部科学省の通知などで周知され、特別支援学校だけでなく通常校においても、個に応じてICTの活用を含めた学び方が進みました。書くという従来の手段に加えて、入力によるノートテイクや、テストでのICTの活用事例などが増加した他、スマートスピーカーなどのICT機器の利用もより一層進みました。

2. 入手方法

「魔法のプロジェクト」のウェブサイトからダウンロードできます。

3. 紹介事例

この報告書で紹介する障がいに合わせたICT活用事例の一部は、下記の通りです。その他の事例や詳細については、報告書をダウンロードしてご覧ください。

  • デコーディング※4が難しい場合のICT活用(川崎市総合教育センター)

    読み書き障がいにより英語の学習が難しかった生徒が、タブレットで単語を表示してフォニックスを鳴らし、発音とアルファベットを結び付けて耳から学習することで、英語の学習が成立するようになりました。(テーマ:学習(感覚障がい、発達障がい))

  • プログラミング学習をきっかけとした生活改善(千葉県立東金特別支援学校)

    中学校は通常学級に通ったものの欠席が多く生活のリズムが乱れていた自閉傾向のある生徒が、高等学校から支援学級へ通うようになり、授業で人型ロボット「Pepper」のプログラミングを体験したことをきっかけに学ぶことの面白さに目覚め、自ら進んで登校するようになり、生活のリズムを取り戻しました。(テーマ:生活(知的障がい、自閉スペクトラム症))

  • 動画作成の取り組みによる自信回復と意欲の向上(狛江市立緑野小学校)

    目の動きのぎこちなさや手先の不器用さがあり、相手に分かるように表現する経験が少ない児童が、さまざまな学びやすい道具やテクノロジーの活用を経験し、“学校内のユーチューバー”として、誰かの役に立つテクノロジーに関する動画作成に取り組むようになったことで、どうすれば相手に分かりやすく伝わるかを考えるようになりました。(テーマ:学習(感覚障がい、発達障がい))

「魔法のプロジェクト」は、特別支援学校や特別支援学級、通常学級に所属する児童・生徒と教員などに、タブレットや人型ロボット「Pepper」、スマートスピーカー、電子書籍リーダーなどのICT機器を1年間無償で貸し出し、学校や家庭において活用していただき、その実践事例を研究・公開することで、障がい児の学習・生活支援を促進することを目的としています。2009年度から開始した「魔法のプロジェクト」では、これまでに延べ約600校に実践研究にご協力いただきました。また、「魔法のプロジェクト2020 ~魔法のMedicine~」は、2020年2月に文部科学省の後援事業として許可されました。

ソフトバンクと東京大学先端科学技術研究センターは、今後も最新のICTを活用して、生活や就労に対して困難を抱える児童・生徒や学生などが自身の持てる力を引き出すことを支援するとともに、特別支援教育にICTを活用する能力を有する教員の輩出と実践研究成果を普及させる活動に取り組み、障がい児の社会参加の機会促進を目指していきます。

[注]
  1. ※1
    認知やコミュニケーションに困難のある障がい児、自閉症、読み書き障がい、知的障がい、肢体不自由、聴覚障がいなどを含みます。
  2. ※2
    2019年4月18日付のプレスリリースで「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」の協力校の選考について発表しています。
  3. ※3
    ソフトバンクグループ株式会社が実施する「Pepper 社会貢献プログラム」の一環として、社会課題解決支援のためにこのプロジェクトへ無償貸与される「Pepper」を活用しています。
  4. ※4
    単語や文字を音に変換すること。
  5. <参考>過去の「魔法のプロジェクト」について
    携帯電話を活用した障がい児の学習支援「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」(2009年度実施)、タブレットを活用した障がい児の学習支援「魔法のふでばこプロジェクト」(2011年度実施)、支援を学習の場だけでなく生活の場に広げた「魔法のじゅうたんプロジェクト」(2012年度実施)、これらのプロジェクトの集大成として行った「魔法のランププロジェクト」(2013年度実施)、特別支援学校・特別支援学級の障がい児に加え、初めて通常学級の発達障がい児も対象にした「魔法のプロジェクト2014 ~魔法のワンド~」(2014年度実施)、個々の児童・生徒の特性に合わせた支援を強化した「魔法のプロジェクト2015 ~魔法の宿題~」(2015年度実施)、教員志望の学生や若手教員の育成を強化した「魔法のプロジェクト2016 ~魔法の種~」(2016年度実施)、「Pepper」を新たに貸し出した「魔法のプロジェクト2017 ~魔法の言葉~」(2017年度実施)、児童・生徒の成長や指導記録を活用して継続的な支援を実施した「魔法のプロジェクト2018 ~魔法のダイアリー~」(2018年度実施)、電子マネーなどの進化するテクノロジーを使いこなしてほしいという願いを込めた「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」(2019年度実施)。
  • SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
  • その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。