人権デューデリジェンスの
取り組み

プロセス

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、当社の事業活動によって影響を受ける全てのステークホルダーの人権を尊重するために、人権デューデリジェンスのプロセスを構築しています。

[注]
  1. 人権デューデリジェンスとは、人権に対し、企業として適切で継続的に行う取り組みのことです。
プロセス

人権リスクのマッピング

当社の事業活動により負の影響が生じるリスクのある人権課題について、マッピングを行いました。以下項目を当社において優先的に対策すべき人権リスクと考え、これらリスクについては人権デューデリジェンスのプロセスに基づき、顕在的に発生している、あるいは潜在的な人権への影響を特定・評価しています。

実際に起こっている人権リスクに対しては、負の影響を取り除くなどの問題解決に取り組むとともに、必要に応じて被害者への適切な救済措置を実施します。また、潜在的なリスクについても低減のための適切な対策を実施します。

なお、マッピング項目については継続的に見直しを行っていく予定です。

[注]
  1. 2022年度より人権リスクの評価基準は当社リスク評価基準に是正困難性(⼈権侵害が発⽣した場合の是正できる可能性)を加えたものへ変更しました。
人権リスクのマッピング

人権への負の影響の
特定および評価

人権デューデリジェンスの一環として、重要なセグメントに対して人権リスクを特定するためのアセスメントを2020年度より実施しています。2022年度のアセスメントにおける重要テーマや対象としたセグメント、アセスメント結果は以下の通りです。

アセスメントにおける重要テーマ
  1. 1.
    人権に対する基本姿勢と主な取り組み
  2. 2.
    コミットメント(約束・声明):人権に関する方針
  3. 3.
    強制的な労働、人身取引および児童労働の禁止(人権侵害の加担の回避)
  4. 4.
    ハラスメントの禁止
  5. 5.
    差別の禁止
  6. 6.
    長時間労働の低減
  7. 7.
    従業員の結社の自由と団結権

人権に関するセルフアセスメント項目(PDF形式:720KB/3ページ)

対象としたセグメント
  1. 1.
    1. (1)
      主要サプライヤー
    2. (2)
      “ソフトバンクショップ”、“ワイモバイルショップ”を運営する販売代理店
  2. 2.
  3. 3.
  4. 4.

アセスメント結果一覧

カテゴリ 国内/海外 対象数 調査数 調査割合 リスク緩和の対象 対象割合 リスク緩和策を実行済 実行割合
バリューチェーン
主要サプライヤー※1 国内/海外 133 133 100% 9 7% 9 100%
ショップ運営販売代理店※2 国内 85 85 100% 15 18% 15 100%
海外の販売代理店 海外 1 1 100% 0
合計 219 219 100% 24 11% 24 100%
自社事業
ソフトバンクおよび子会社※3 国内 146 116 79% 14 12% 14 100%
海外 61 43 70% 3 7% 3 100%
合計 207 159 77% 17 11% 17 100%
ジョイントベンチャー
ソフトバンク関連会社等 国内 16 16 100% 5 31% 5 100%
海外 8 6 75% 0
合計 24 22 92% 5 23% 5 100%
総合計 450 400 89% 46 12% 46 100%
[注]
  1. ※1
    主要サプライヤーは過去3年間の累計数値
  2. ※2
    ショップ事業は日本国内のみの展開
  3. ※3
    子会社は従業員1人以上の事業会社

主なリスク項目に対する
緩和の取り組み

2022年度のアセスメントの結果、リスク緩和の対象となったバリューチェーン、自社事業、ジョイントベンチャーのアセスメント先は49社でした。これらの対象先で特定された主要な潜在的な人権リスク項目およびリスク緩和のために行った取り組みは以下の通りです。

セグメント 対象テーマ リスク内容 緩和措置
  • 主要サプライヤー
  • ショップ運営販売代理店
  • 子会社/関連会社
強制的な労働、人身取引および児童労働の禁止 技能実習生(移民労働者)の人権
サプライチェーンにおける技能実習生の有無や人権が守られているか把握出来ていないケースがある
  • 供給網に対する実態調査の要請(依頼手順書や調査票の提供)
  • 供給網にて人権侵害が発覚した場合の対応手順の提供
  • グループ会社向け説明会開催
子会社/関連会社 人権に関する基本姿勢 従業員向け人権アンケート調査の実施
各社従業員に対する各種差別、ハラスメントおよび強制労働などの有無についてアンケート等による調査を行っておらず実態把握が不十分なケースがある
  • 調査実施の要請(手順書およびアンケートフォーマットの提供)
  • 人権侵害が発覚した場合の対応手順の提供
  • グループ会社向け説明会開催
子会社/関連会社 差別・ハラスメント 従業員向け啓発取り組み
各種差別やハラスメントに関して、各社従業員に対する研修や周知など低減に関する取り組みが不十分なケースがある
  • 各社従業員向けの啓発コンテンツを提供し、研修等実施を要請
  • グループ会社向け説明会開催

バリューチェーンに対する
人権アセスメント

当社は、バリューチェーンに対する取り組みの一環として、2020年度以降、主要サプライヤー並びに主要な当社販路かつお客さまとの窓口であるソフトバンクショップ、ワイモバイルショップを運営する販売代理店等に対して、人権への取り組みおよび人権侵害への加担の有無などに関するセルフアセスメントを継続的に実施しています。本アセスメントにて人権リスクが確認された場合、その問題解決並びに是正に向けた取り組みを行っています。また、今後も定期的に実施し、継続的なモニタリングおよび改善提案を行い、更なるリスク低減に努めていきます。

主要サプライヤー

2020年度より、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)にて2017年に作成されたセルフ・アセスメント質問表(SAQ※1)を採⽤し調査を実施しています。調査結果を分析し、改善の必要性が認められた事項については、サプライヤーとともに取り組みの改善を推進し、状況をモニタリングしています。また、2021年度から採用している紛争鉱物や外国人技能実習制度に関する設問を含む「高リスク管理アンケート※2」を各社サプライヤーへ実施いたしました。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン「CSR調達 セルフ・アセスメント・ツール・セット

バリューチェーンに対する人権アセスメント結果

ショップを運営する販売代理店

全国のソフトバンクショップおよびワイモバイルショップ(家電量販店の店舗内ステージショップを含む)を運営する販売代理店全85社に対し、セルフアセスメントを実施しました。その結果、顕在的に発生している人権への影響は見られませんでした。 一方で、潜在的な人権リスクの見られた15社に対しては、リスクの緩和策として、取り組みが不十分な項目に対する改善やサプライヤーに対する調査の要請を依頼しました。
また、並行して調査を実施した全ての代理店に対し、当社での人権に関する取り組み事例の紹介やその他参考情報を提供するなど、さらなる取り組みの推進を依頼しました。

[注]
  1. ※1
    SAQは、グローバル・コンパクト10原則・ISO26000等の国際ガイドライン、特定業界のCSRアンケートをベースに9つの中核項⽬を抽出し、業界を問わずバイヤーとサプライヤー間で共有できるよう構成されています。
  2. ※2
    各社方針、ガイドライン(行動規範)以外の時勢に沿った人権、環境等、重要項目に関するアンケート

当社グループ会社に対する
人権アセスメント

当社および国内外の子会社159社、関連会社22社に対して、人権に関するセルフアセスメントを実施しました。その結果、顕在的に発生している人権への影響は見られませんでした。一方で、潜在的な人権リスクが見られた22社(うち、関連会社5社)に対しては、単なる改善要請にとどまらず、リスクの緩和手順を記したマニュアルや必要な調査票および各社従業員向けの啓発コンテンツ等の提供など改善取り組みのサポートも行いました。今後も定期的に実施し、継続的なモニタリングおよび改善提案を行い、更なるリスク低減に努めていきます。

出資検討時の投資先への
人権アセスメント

既存の事業活動の人権アセスメントに加え、新規事業を展開する際も人権尊重の観点から人権アセスメントを実施しています。アセスメント項目は強制労働の禁止、差別の禁止、ハラスメントの禁止、団結権の尊重、児童労働の禁止など人権に関する重要事項を網羅した内容になっており、アセスメントの通過が当社出資基準の一つとなっています。

当社従業員に対する
人権アセスメント

人権デューデリジェンスの一環として、従業員との人事面談施策やアンケート調査を行い、問題が見られた場合には直接的もしくは間接的な救済措置を講じています。

従業員との人事面談/座談会の実施

人事部門では、従業員のコンディション把握のため、2015年から2021年にかけて従業員との人事面談を行いました(累計26,100名)。
その中で、人権に関するリスクが見られた場合には速やかに関連部署と連携の上、改善対応に取り組みました。また、2022年には人事本部長と従業員による座談会を全国主要9事業所において行いました(参加者数計117名)。人事部門の責任者が従業員と直接対話することで迅速な改善取り組みにもつなげています。
今後も従業員との対話を大切にし、現場の実態把握と改善に努めます。

従業員への人権アンケート調査実施

当社では毎年、差別・ハラスメントを中心とした人権に関する従業員向けの研修や啓発コンテンツの配信を実施しています。また、全従業員に対して人権侵害が起きた場合の相談窓口を案内し、人権侵害の未然防止に努めるとともに、人権侵害事案が発生した際は規定に基づき厳正に対処しています。
さらに毎年、人権侵害有無の確認を目的とした全従業員向けのアンケート調査を実施しており、2022年度は従業員25,500名に対して調査を行いました。その結果、職場での人権侵害への救済を求めるような回答はありませんでした。
ただし、アンケート結果から人権リスクになり得る9つの課題(うち重点課題4つ)を特定したため、主管部署と協同しリスク低減のための施策を検討・実施しています。
なお、本調査の結果およびリスク低減策は従業員に公開されています。今後も継続的なアンケートの実施およびモニタリングを通じて、従業員の人権尊重を図っていきます。

対象テーマ 潜在的なリスク項目(重点課題) リスク緩和策
差別・ハラスメント パワーハラスメント 従業員向け研修の継続的な実施およびコンテンツの更なる拡充
妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント
  • マタハラ、パタハラに関する研修コンテンツの追加
  • 男性も育休が取りやすくなるようさらなる環境作りの推進
性別を理由とする差別 従業員向け研修の継続的な実施(アンコンシャスバイアス)
年齢に関する差別・ハラスメント
  • 従業員向け研修の継続的な実施
  • 年齢に関する制度の検証/在り方の継続検討

事業上の人権リスクが
想定される固有テーマに
関する個別調査

2020年度以降、当社では人権デューデリジェンスの一環として、当社の事業において人権リスクが特に高いと想定される固有のテーマにフォーカスし、人権リスクを低減するための取り組みを確認しています。
調査は対象テーマを担当する管理者に人権担当者がヒアリングを行う形式で行い、定量的なアンケートでは把握が難しい現場の業務プロセスや運用実態も含めて確認を行ったものです。
2022年は「AIの利用に関する人権の管理」を新たにテーマとして追加しました。

  1. パーソナルデータの管理
  2. 高齢者・児童やジュニア世代・障がい者の方たちに対する配慮
  3. 基地局などの建設工事に携わる工事業者に対する安全管理
  4. AIの利用に関する人権管理

パーソナルデータの管理

当社は通信事業者として、お客さま自身の情報やお客さまの利用に関する情報などのパーソナルデータを保有しています。こうしたパーソナルデータの管理を事業特有の人権課題として認識しています。

調査の結果、当社では下記の対応によりパーソナルデータの管理を適切に行っていることを確認しました。

責任者と組織体制

当社が保有するパーソナルデータの管理にあたっては、責任者としてCDO(Chief Data Officer)を設置し、法令・世論・お客さまの心情など多様な視点でパーソナルデータを取り扱うために、全社横断の専門組織を構築しています。

プライバシー行動指針

プライバシーポリシーと
相談窓口

当社は、プライバシーポリシーを定め、当社が保有するお客さまのパーソナルデータの利用目的と利用範囲を定め、開示しています。また、保有データの開示やパーソナルデータの取り扱いに関する苦情を受け付けるお客さま相談窓口を設置しています。

プライバシーポリシー
パーソナルデータお客さま相談窓口

プライバシー影響評価による
人権侵害の防止

当社ではプライバシー情報の活用にあたって、「お客さまの便益につながるか」「公益につながるか」といった観点に加え、「プライバシー侵害に当たらないか」「お客さまの不利益はないか」などのリスクを評価することによって人権侵害を防止する運用に努めています。

プライバシーの保護とお客さまへの配慮

パーソナルデータの保護

お客さまのデータを守るためにセキュリティ、データ利活用、情報システムの3つの観点で責任者を配置し、体制の強化を図っています。また、情報セキュリティポリシーやデータ利活用のルールを定め、社員への教育・研修を定期的に実施し、データ保護に関する考え方や注意点の浸透・意識づけに取り組んでいます。

パーソナルデータの保護

高齢者・児童やジュニア世代・
障がい者の方たちに対する配慮

当社は公共的なサービスを提供する通信事業者として、全ての利用者が安心してご利用いただけるサービスを提供する責務があると考えています。特に、高齢者、児童やジュニア世代、障がいをお持ちの方々などの人権を尊重するためには、通信事業者による支援や保護が有効です。

調査の結果、当社では下記の対応によりこうした人々に対する配慮を適切に行っていることを確認しました。

高齢者への支援策 かんたんスマホ2+

当社が仕様を定め、端末機メーカーに製造を委託している「かんたんスマホ2+」は、既存の携帯電話からスマートフォンへの移行をためらっている利用者への支援と犯罪行為から高齢者を保護することを目的に開発されています。

シニア世代への取り組み

児童・ジュニア世代の保護 キッズフォン3、ジュニアスマホ

児童やジュニア世代など成長途上にある利用者の人権を尊重するため、ネット上での人権侵害行為から利用者の安全を守りながらそれぞれの世代に必要となる保護内容に適合させた端末やサービスとして、小学生向け端末「キッズフォン3」やジュニア世代向けサービス「ジュニアスマホ」を開発し、提供しています。

安心安全への配慮

障がい者の保護 アシストガイド

「日常生活で困りごとを抱える子ども」の人権が尊重され、円滑な日常生活が送れるよう、スマートフォンを活用したアプリ「アシストガイド」を提供しています。

障がいへの理解

基地局などの建設工事に携わる
工事業者に対する安全管理

当社は通話品質のさらなる向上のため積極的に無線基地局の整備を進めています。

携帯電話の無線基地局は鉄塔やビルなどに設置されることから、工事にあたっては作業員の安全を守る仕組みづくりと現場での確実な運用が重要なテーマとなります。そこで基地局建設に伴う作業員の安全確保を事業特有の人権リスクとして位置付け、下記の取り組みにより適切な対応を行っていることを確認しました。

AI利用に関する人権管理

当社では事業のさまざまな分野でAIの利用が進んでおり、今後も活用方法の多様化や技術の高度化が予想されることから人権への影響について調査を実施しました。
調査の結果、AIに関する倫理ポリシーの制定とポリシーに基づくガバナンス体制の構築を進め、AI導入によるお客さまの利便性の向上を図りながら、人権リスクを管理する体制を整えていることを確認しました。

ソフトバンクAI倫理ポリシーの制定

2022年7月に「ソフトバンクAI倫理ポリシー」を制定し、公表しています。このポリシーでは
「人間中心の原則」「プライバシーの保護とセキュリティの確保」など6つの項目について指針を定め、指針にそった事業運営やサービス開発を行っていくというものです。

ソフトバンクAI倫理ポリシー

グループ会社でのポリシー適用

ポリシーをグループ会社でも適用できる体制を整えており、2022年7月の時点で56社が「ソフトバンクAI倫理ポリシー」の適用を決定しています。

ガバナンス体制の構築

ポリシーを運営につなげるためのガバナンス体制を構築し、サービス開発の段階でポリシーに沿った開発が行われていることを確認するための運用プロセスを設けるなど、各種規程や管理体制を整えています。

人権啓発活動の実施

人権啓発研修

ソフトバンク行動規範」に人権の尊重と差別およびハラスメントの禁止について定めるとともに、全従業員に対して「ソフトバンク人権ポリシー」の内容を含む人権啓発研修を行うことで、社内の人権尊重意識の醸成を図っています。

新入社員研修や新任管理職研修といった階層別研修に加え、管理職以上の従業員に対しては、いじめやハラスメントなどの報告や相談を受けた場合の対処について、定期的な研修および登用時の研修を行っています。

PRIDE指標

なお、2022年にはLGBTQに関する取り組み評価指標「PRIDE指標」の最高位「ゴールド」を6年連続で受賞しています。

[注]
  1. 任意団体「work with Pride」が策定した指標

実施研修一覧(2022年度)

コンテンツ名 対象者 形式
ソフトバンク行動規範への誓約 全従業員 その他
入社者向けコンプライアンス研修 新入社員/中途採用者 eラーニング研修
新任管理職研修 新任管理職 eラーニング研修
コンプライアンステスト 全従業員 eラーニング研修
コンプライアンスマガジン 全従業員 メール配信
ハラスメント防止講座
(パワハラ・セクハラ・SOGIハラ)
全従業員 eラーニング研修
新規:ハラスメント防止講座(エイジハラスメント) 全従業員 eラーニング研修
新規:ハラスメント防止講座(ジェンダーハラスメント) 全従業員 eラーニング研修
人権に関する啓発コンテンツ(全4回) 全従業員 メール配信
アンコンシャス・バイアス研修 全従業員 eラーニング研修
ダイバーシティ&インクルージョン研修 管理職 オンライン研修
ダイバーシティマネジメント研修 管理職 オンライン研修

グループ会社への啓発

子会社および関連会社に対する人権リスクを緩和する取り組みとして、当社で活用している人権に関するセルフアセスメントツールの提供と、その結果を踏まえた個社別での改善要請を行い、人権リスクの緩和と各社の取り組みの拡充を進めています。

具体的には、当社の人権デューデリジェンス活動に関する情報や人権担当者に対する関連情報の定期的な提供とともに、2022年は当社での取り組みを中心としたナレッジの公開や、四半期毎に従業員向けの人権に関する基礎学習コンテンツを提供しました。

今後もグループ各社の人権に関する取り組み状況を確認しながら、双方向の情報提供やノウハウの共有などを通じて、グループ全体の人権推進活動の底上げを継続して図っていく予定です。